【前編】集合住宅に求められる設計とデザイン〜鈴木エドワード建築設計事務所株式会社〜

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鈴木エドワード
さいたま新都心駅や赤湯駅といった公共施設から数々の個人住宅まで、精力的に作品を生み出し続け、国内外で数々の賞を受賞し、日本を代表する建築家である鈴木エドワード氏に、住宅の中でも特に集合住宅を建てる際の様々な思いについて伺いました。

「内と外」、「人と自然」をつなぐインターフェースが20年来のテーマ

Q1:建築家が集合住宅を造るときに心がけることは、どんなことですか。

A:いろいろな人々が集まって住む場所ですから、プライベートのスペースはもちろん共用スペースにも配慮が必要だと思っています。皆さんが気持ちよく暮らすために、環境づくりをして、そこで暮らす人が仲良く幸せになるように配慮をします。たとえ都市部でコンクリートに囲まれた環境の中でも、緑や水、空が見えるだけでも快適な空間になります。

Q2:テーマ性は必要ですか。またどう決めていきますか。

A:建物を建てる際にテーマは大切です。しっかりとしたコンセプトを作れば、それがエンジンになって全体を動かしていくことができます。

住まいに限らずですが、20年来ずっとテーマにしているのがインターフェースという考え方です。それは内と外、人と自然といった、一見相対するもの同士をつなぐ中間領域と考えています。日本の伝統建築である「縁側」などが代表ですね。縁側は内であり外、外であり内のようなものです。日本の「暮らしの知恵」が生きていて、新たなデザインや設計、そして素材などを時代に合わせて演出したい空間だと思っています。

6年間、探し続けて見つけた我が家も、広いルーフバルコニーが魅力で、快適なアウトドア空間に変えました。以前の住まいより居室空間は狭くなりましたが、満足しています。心地のいい季節はアウトドアを楽しみ、冬や雨の日は室内から眺めるだけでも豊かな気持ちになります。

非日常を感じさせる施設とは異なり、「住宅」は日常を大切にした空間に

鈴木エドワード
Q3:「施設」と「住宅」の違いについて教えてください。

A:商業施設や公共施設などは、人にとって非日常であり、見た目がドラマチックで、他にはない空間にする必要があります。そのためにサプライズのある、あえて「遊び」を作り上げることが大切です。それとは逆に住宅は個人のプライベートのものであり、日常的なものです。日常と非日常という点が一番異なる点ですね。そこに住む人にとっての「世界で最も心地いい場所」が住宅だと思います。

私も若いときは外観などの「見た目」が大事だと思っていましたが、今では「見えるもの」だけではなく「見えないもの」が大切だと感じています。それは空間の心地良さ、空気、光、風など、見えないけれど、触ったり感じたりといった五感で受け止める居心地の良さにつながっていると思います。

また住宅の場合は、建築後のメンテナンスにあまり手間と時間、費用が掛からないように心配りをしています。

Q4:「個人住宅」と「集合住宅」の違いとは何ですか。

A:個人の住宅は、その人のライフスタイルに合わせて造りますが、集合住宅はどのような人が住むかが決まる前に建物を造っていきます。そのために個々のプライベートスペースはもちろんですが、共用スペースのデザインも大切です。

街の中で存在感を持つ外観、足を踏み入れるとアプローチ(※1)となるエントランスからラウンジへ、そして個々のプライベートスペースへと、1つのストーリーが完結するようなグランドデザインが必要です。そのためにも集合住宅では、建築家の役割が必要なのではないでしょうか。

そこに住むみんなが大事にしたくなる共有スペース、愛情を持てるような空間でありたいと思っています。自邸へのアプローチに、自然や四季を感じながら、通り抜けができるようなデザインを心がけています。

※1 アプローチ:道路や門から玄関に至る数メートルの通路をアプローチという。1階の入口付近のスペースを総称して言う場合もある。

その土地の持つ個性を生かし、独自の問題を解決することが大切

鈴木エドワード
Q5:「エリア」や「立地」への配慮を教えてください。

A:建築物を造るときには、エリアや立地の条件は欠かせません。まず、その場所だけが持つ独自の個性を生かして建物を考えます。また個々の問題を解決することで、より良い建物になると思います。

日本の都市部では周りに建物が立て込んでいて、環境としてはよくありません。その場合は外に開くのではなく、中に開いた住宅にする必要があります。中庭だったり、インナーバルコニーだったり、室内に緑や自然、風を取り込む設計の工夫をします。

自然環境や眺望に恵まれた場所では、逆に外に開いたプランにします。その土地の持つポテンシャルを思い切り生かしたプランができます。

(プロフィール)
鈴木エドワード
建築家、鈴木エドワード建築設計事務所代表
1947年埼玉県生まれ。
ノートルダム大学、ハーバード大学大学院アーバンデザイン建築学部卒業後、1974年バックミンスター・フラー・アンド・サダオ、イサム・ノグチスタジオ、丹下健三・都市建築設計事務所を経て、1977年鈴木エドワード建築設計事務所設立。
さいたま新都心駅や渋谷警察署宇田川派出所、下鴨の家など、公共施設から個人邸、集合住宅まで幅広く手がけ、グッドデザイン賞、エコビルド賞など数々の賞を受賞している。

鈴木エドワード建築設計事務所株式会社
http://edward.net/

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