【前編】住宅の断熱性能を高める最新技術『住宅からビルまで日本の「窓」を高性能化〜YKK AP株式会社〜』

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千田正勝
吉田兼好の『徒然草』には、「家のつくりようは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる」という有名な一説があります。長らく日本の家は、窓が大きく開放感を重視した夏涼しく、冬は寒さに耐えるという造りが伝統的でした。しかし最近、省エネルギーの観点から建物の断熱性が注目されています。今回はYKK APの千田正勝氏に高断熱な窓の最新技術について伺いました。

窓の断熱が特に必要とされる理由と日本の現状

Q:地球温暖化による平均気温の上昇がもたらす住宅への影響について教えてください。

A:1997年12月に京都で開催された地球温暖化について話し合う国際会議。そこで採択された「京都議定書」は、2005年2月16日に発効しました。これは先進国に対して、温室効果ガス排出量の平均値を基準年(1990年)と比べて削減することを義務付けたものです。その後アメリカや中国が参加しなくなって、国際的に数値目標達成がより厳しい状況になっています。特に日本では自国でのエネルギー供給量が少ないため、国を上げて省エネが急務となっており、そのために住宅をはじめとした建築物全体の省エネも重要な問題です。住宅からビルまで、断熱性を高める必要が急務となっているのです。

Q:日本で特に窓の断熱が必要とされている理由は何ですか。

A:欧米は石造り、アジア圏はレンガ造りといった海外の建物に比べて、日本の建物は木造が中心となっています。そのため、壁自体に断熱材が入っていない場合が多いです。また窓もアルミサッシが中心で、樹脂製が多い海外に比べて、断熱性が劣っていました。もともと高度成長期に建設された団地や建売住宅などは、大量生産がしやすいスチールやアルミ製のサッシが多く、サッシ(枠またはフレーム)部分の断熱性能が悪いため、窓から逃げる熱が多いという事実がありました。

窓の断熱を上げる手法とその効果はどこにあるのか

千田正勝
Q:窓の層を増やすことで室内温度が変化する仕組みを教えてください。

A:複層ガラスの窓も技術が進み、様々なものが用意されています。2枚あるいは3枚のガラスの間に空気を閉じ込め、窓から逃げる暖房熱の量を減らします。その性能は単板ガラスよりも暖房効率をアップさせて節電にも貢献します。中空層には、「乾燥空気」のほかに、「アルゴンガス」を使用することも可能です。「アルゴンガス」は“気体の断熱材”ともいわれ、空気よりも熱伝導率が低いため熱を伝えにくく、また、空気よりも比重が重く、複層ガラスの中空層で対流を抑えて断熱効果を高めます。そしてその上で様々なフレームとガラスを組み合わせ、何度もシミュレーションをして、その効果を解析しています。

Q:高断熱窓「APW」とはどういったものですか。

A:2006年から商品化した当社の「APWシリーズ」は、生活者視点に立った窓産業の実現を目指すYKK APの窓事業ブランドです。熱の伝わりが小さい樹脂窓は、結露を防ぐという特長を持っています。また、これまで業界で一般的だったガラスとサッシを別々に提供し、現場で施工するやり方は、施工技術や方法により、断熱効果を一定に保つことが大変難しいという現実がありました。そこで当社が、ガラスとフレームを1つの「窓」という完成した商品で提供、性能と品質を保証するシステムを採用しました。さらに、皆様にとって分かりやすい窓の性能表示や価格、また業界初の10年保証やQRコードによる管理、アフターサービスなど、新しいビジネスモデルを提案しました。窓には1枚1枚にQRコードがつけられていますので、サイズなどのデータが簡単に把握でき、アフターサービスにも迅速に対処ができます。

窓の断熱効果を実際に体験してもらう様々なシステム

千田正勝
Q:窓の断熱効果を可視化することができますか。

A:一般に家を新築したりリフォームしたりするとき、キッチンや浴室の設備に関心を寄せますが、あまり窓に関しては興味がない場合が多いですね。しかし窓の断熱効果は四季を通じて住み心地に大きな影響があります。そのため窓の違いは、体験してもらうのが一番だと考え、当社では品川に体感ショールームを設け、5つの部屋で体感していただけるようにしています。また断熱性能を可視化することも重要で、サーモカメラを使用して、一目で効果が分かるようにしています。国が真剣に進めている建築物の省エネ化は、窓の性能が大きく鍵を握ると考えております。

(プロフィール)
YKK AP株式会社
商品企画部
窓・住宅商品企画グループ
樹脂窓商品企画室 主任
千田正勝
2006年入社。2015年より現職で窓の商品開発におけるエキスパート。

YKK AP株式会社
住宅用とビルの窓やサッシ、ドアなどの設計、製造、施工、販売を行っている。近年はアメリカやアジアにも進出し、幅広く事業を展開している。
http://www.ykkap.co.jp/

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