デンマークに学ぼう。超高齢化と住まいの未来を考える。

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高齢化社会へと突入した日本では、今後の準備が重要になってきます。そこで、今回は充実した福祉の取り組みを行っているデンマークの政策についてご紹介します。

世界に類を見ないスピードで進む日本の高齢化

内閣府が公表した「平成28年度版高齢社会白書」によると、2015年10月1日の時点で、日本の総人口は1億2711万人、65 歳以上の高齢者人口は3392万人となり、高齢者の占める割合は26.7%となりました。4人に1人が高齢者ということになります。今後も高齢化率は上昇を続け、2035年には33.4%で3人に1人となります。2042年以降は高齢者人口が減少に転じても、65 歳になる人口が出生数を上回ることから2060年には39.9%に達して、国民の約4割が65歳以上の高齢者となる社会が到来すると推測されています。

年金や医療、福祉のための社会保障の財源が不足している状況を考えると、若者が高齢者を支えるという今までの社会モデルが、すでに限界を迎えているのは周知の事実です。今後このような超高齢化時代を迎え、課題は山積みだといえるでしょう。

例えば高齢者の住宅ですが、高齢者施設が大幅に不足しています。また老々介護の問題や孤独死といった問題が取り沙汰されています。さらに介護者の離職率の高さが問題となる中、介護施設では高齢者への虐待といった事件も起こっています。世界の中でも急速に進む高齢化の問題に、日本はどうやって取り組んでいくかが試されています。また、高齢者を含めた地域社会が、人々がより豊かに、より快適に生きるためには、どのような理念や制度、社会システムが必要になるか真剣に取り組む時が来たといえるでしょう。

ひとりの個人として尊重されるデンマークの高齢者

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世界的にも福祉国家として有名な北欧の国「デンマーク」。消費税率25%、所得税率50%とかなりの高納税国ですが、医療費や出産費、教育費などが全て無料、加えて充実した高齢者サービスがあり、社会福祉がとても充実しています。デンマーク政府は、より良い福祉社会の実現に向けて、強いイニシアティブで政策を進めてきました。その最たるものが「地方分権」です。 年金を除く、医療・介護・福祉などの社会保障の実施主体は地方自治体であり、その財源は住民税として徴収しています。

つまり国民にとっては「受益と負担の関係」が分かりやすく、高い税金にも納得しやすいシステムが確立されているといえます。実際にデンマークの人たちは、世界でもトップレベルである福祉サービスを受けられることに誇りを持っているため、税の高負担に反対する声はほとんど上がらないといわれています。

デンマークにおける高齢者福祉の現場では、高齢者は「介護の対象」ではなく「ひとりの個人」として捉えられています。その背景には「高齢者三原則」という高齢者自身の声から生まれた社会福祉の基本理念があるのが特徴です。「継続性の維持」、「自己決定の尊重」、「残存能力の活用」、の3つの原則から成り立っています。つまり「高齢者自らが決定した暮らし方を尊重し、高齢者の残っている残存能力を活用して、高齢者の生活をできるだけ変化させずに支援する」という考え方です。

デンマークでも以前は福祉コストの増大と福祉サービスの品質低下という社会的課題解決があり、1979年、国会に高齢者政策委員会が設立され、福祉を改革するための議論が行われました。同時にデンマークの全市町村に100のワーキンググループができ、高齢者自身が自分たちの老後のあり方について議論する場が設けられたのです。そこで高齢者たち自らが求めたものが「高齢者三原則」のもととなっています。これによりデンマークの高齢者福祉は「介護」の時代から「自立支援」の時代へと大きく舵を切ることになりました。

まず「継続性の維持」があり、高齢者ができうる限り、今までの自宅でそれまでと変わらない暮らしができるよう配慮すること。次が「自己決定の尊重」であり、高齢者自身が生き方や暮らし方を決定し、周囲はその選択を尊重すること。最後に「残存能力の活用」があり、本人ができることはなるべく尊重して、能力の低下につながるような手助けは控えるようにすること。つまり、支援があれば在宅で生活ができる人まで、一堂に施設に集め、受動的な立場に立たせた上で、過剰で画一的なサービスを提供するようなことは、すべきでないという内容です。

日本の特別擁護老人ホームでは、起床時間や就寝時間、食事場所やメニューなどが、施設によって決められていることが多いです。デンマークでは入居者自身が、それぞれ決めることができる上に、自宅で使っていた家具を持ち込み、ペットを飼うことまで可能です。あくまでも「施設」ではなく「住まい」としての機能を優先しているといえるでしょう。

デンマークから学ぶユーザー参加型社会

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日本と北欧諸国を比較する場合、民主主義の成熟度や国の規模、官僚機構などに大きな差があり、参考にはならないという意見があります。しかし、日本はすでに到来した超高齢化社会において、医療や福祉の分野で今までの常識にとらわれない抜本的な改革や転換が求められています。その際、参考になるのがデンマークの取り組みです。デンマークの成功要因は、高齢者福祉の分野で高齢者自身のニーズを尊重したことではないでしょうか。

デンマークでは医療と福祉介護が一体となっていて、最期まで自宅に住み続けながら、必要な時にはケアを受けられるという地域包括ケアのシステムが確立されています。現在の日本の特別養護老人ホームの多くは、医療行為ができないため、入居者が胃ろうなどで手術が必要になった場合には、必然的に病院に移らなければなりません。医療と福祉介護が分離しているために、住み慣れた住居を離れなければならないのが実情でした。

日本でも2012年4月の介護保険法の改定によって、「地域包括ケアシステム」という考え方が打ち出されました。高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるように、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスを切れ目なく提供し、「地域包括ケアシステム」の中で暮らしていけることを目指しています。それは、デンマークが長年にわたる試行錯誤の末にたどり着いた結論と同じ方向性となっており、日本も、地域居住に向けた大きな一歩を踏み出したといえます。これからの日本は、若者が高齢者を支えていく社会から高齢者も含めた全ての人々が地域社会での役割を持って社会へ参加するシステムへの変革が求められています。

日本は住宅の数がすでに飽和状態であり、空き家の増加が大きな社会問題となっていますが、高齢者のニーズには合わない物件が多い状況です。また、高齢者に賃貸しないという例も多く見られます。いたずらに施設を造って、画一的な介護をするのではなく、今ある住まいを適切に改良して、なるべく在宅で暮らす方向を探ってみる必要もあるのではないでしょうか。

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