【後編】システムキッチンで暮らしが変わる『キッチンも可動の時代に〜株式会社日建ハウジングシステム〜』

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日本のこれまでのキッチンのあり方や可動キッチンを開発した経緯についてお聞きした前編。三井不動産レジデンシャル、タカラスタンダード、富士工業の三社との共同開発によって、日建ハウジングシステムは、キャスターで可動するキッチン「Imagie kitchen」を誕生させました。後編では可動するキッチンは、マンションのプランなどにどのような影響を与えるのか、ということについて、引き続き、日建ハウジングシステム設計監理部部長の吉田和弘氏(写真左)とlid研究所副所長の渋谷篤氏(写真右)に伺いました。

可動式キッチンの開発へ

Q:キッチンを動かすことの目的は、住宅のプランの自由度のためということですが、「キッチンを動かす」ことはどのような意味を持つのでしょうか。

渋谷:「キッチンを動かせたら、どのくらい間取りは変わるのか」を検証するために、トイレと洗面台と風呂を1ヵ所に固め、いったん、排水や排気の問題は除外して、模型をつくって試していきました。そうすると、「玄関を入った瞬間にLDKがあって、奥のほうに1部屋ある、究極のリビングインプラン」、「キッチンなしプラン」など面白いプランがどんどん出てくるのです。つまり、「キッチンを動かそうとした」というよりも、住まいのバリエーションを増やすためには、「キッチンを動かさざるを得なかった」というところから始まりました。

これまでキッチンを動かそうと考えてこなかったのは、大きな壁がふたつあることによります。ひとつは排水で、排水は重力に逆らえないので勾配を確保してパイプシャフトに流さなければなりません。もうひとつは排気で、どの住戸でもキッチンにレンジフードがついています。このふたつをどう動かすかということを考えないと、先に進めないという結論に至りました。

Q:可動式キッチン「Imagie kitchen」はどういった仕組みですか。

渋谷:レンジフードの検討だけで2年くらいを費やしています。富士工業というメーカーが循環式レンジフード自体は商品として持っていたのですが、デザインも含めてオリジナルのものを「Imagie kitchen」用に開発しました。

また、地震でキャスターが外れ、キッチンが動いて、壁との間で人が挟まる事故が起きないように、阪神大震災や東日本大震災クラスの地震にも耐えられるよう実験を重ねています。キッチンを固定する時はキャスターを浮かせて、プロセブンというメーカーのテレビなどの下に敷く耐震マットを活用して固定しています。
キッチンの排水や電源は床に数ヵ所設置されたキッチン接続ポートにつないでいます。実際にキッチンを動かすには専門の業者が来て半日程度の作業で終わります。

吉田:リフォームをする場合と比較して、半日で済むことがポイントです。費用面のほか、仮住まいをしなくて済むというメリットがあります。一般的なマンションは全面リフォームする時にも水回りの位置が限定されていますが、「Imagie kitchen」では、キッチン接続ポートの位置と数に応じて動かせます。

キッチンを動かすことで可能となったプランの自由度

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Q:「Imagie kitchen」は「パークホームズ赤羽西」で、間取りフリープラン「Imagie」として採用されていますが、どのようなものなのでしょうか。

渋谷:可動家具と扉がセットになった「Kanau Shelf」と「Imagie kitchen」を壁際に寄せると、ちょうど一列に納まるように、ユニットの寸法を考えています。3LDKに収める家具の数を13個と設定して、3LDKから巨大なワンルームまで数十タイプくらいをつくることができます。

リビングはバルコニー側が一般的ですが、外廊下のマンションで玄関回りを掃き出し窓にしたため、入ってすぐリビングというプランにもすることが可能です。昔の路地空間みたいな空間をマンションで実現しています。

間仕切りの位置の変更に対応できるように、照明器具は全てダウンライトにして、可動家具が照明のある場所に移動するときは、照明が点灯しないように、自分で調整できるようにしてあります。コンセントをどうするかという問題に対しては、フロアコンセントも考えましたが、床に水が流れると漏電する危険があるので、両側の壁にコンセントを数多く設置することで対応しました。

Q:可動式キッチンを採用することで、分譲マンションの住まい方にはどのような影響を及ぼしますか。

渋谷:新築マンションを購入した後で家族の人数が変わった時、衣替えくらいの気軽な気持ちでプランを変えられないかという考えからスタートしています。第1弾として、キッチンとサニタリーゾーンを固定の「KANAU PLAN」として、「パークホームズ駒沢 ザ レジデンス」で実現しました。間取りフリープラン「Imagie」は、第2弾としてキッチンを可動式にして、サニタリーゾーンを固定にしたものです。

吉田:マンションは一般的に、何度も買い替えられるものではないので、ライフスタイルとステージに合わせて住み続けられることは住まい手にとって大きなメリットですし、この点が重要な提案でもあります。

Q:可動式のキッチンは賃貸住宅にも向いていると思われますか。

渋谷:賃貸住宅にも向いていると思います。分譲マンションは1回買ったら、一般的に数年から数十年は同じ人が住みますが、賃貸住宅は1年で変わることもあります。1週間程度待ってもらえれば、キッチンの位置や間取りが変えられるというのは、アピールポイントになると思います。

賃貸住宅の物件選びでは住みたい場所が優先で、間取りは1LDKという具合に、プランは二の次になっていると思います。キッチンをど真ん中に置くといったように選べるとしたら、それだけでも魅力があると思います。

吉田:様々なニーズに対応できる点では、キッチンの位置などを変えれば、違うユーザーも呼び込めることが期待できますね。

今後もキッチンは表舞台で人が集まる場所に

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Q:今後、キッチンの位置づけはどのように変わっていくと考えられますか。

渋谷:キッチンも他の家電と同様にIOTが進むと、究極は人がキッチンで料理をしなくなる可能性もでてきます。キッチンに求められる機能が変わっても、「人が集まる中心の場所」であることは変わらないと思っています。

吉田:キッチンは「DK」「LDK」として家族団らんの象徴のような役割を担ってきました。家族の形は、1人暮らしやDINKSや子どもがいたりするなど様々ですが、人を呼んでパーティーをする時に、人が集まる場所というのは、お風呂やトイレでもないし、やはりキッチンが中心にあると思います。

キッチンは時代の変化に合わせて変遷を遂げてきました。トイレはウォッシュレットがついたりして便利になっても、人の住まい方にまで影響していません。お風呂だけを見ても住まいの変遷は分かりませんが、キッチンの変遷を見るとその時代の背景が見えてきます。

渋谷:キッチンは「住まい方の鏡」みたいなものです!

(プロフィール)
株式会社日建ハウジングシステム
設計監理部 部長
吉田和弘
入社以来、ハイグレード・大規模・超高層を中心とした集合住宅、再開発プロジェクト、シニアレジデンスに至るまで幅広い分野の設計を担当。グッドデザイン賞受賞(2008年、2014年)。現在は、大規模再開発プロジェクトを中心とした業務に従事している。また広報室室長も兼務、SUUMO記事監修など含め幅広く活動中。一級建築士、日本建築家協会会員。

株式会社日建ハウジングシステム
設計監理部 副部長兼lid研究所 副所長兼I3デザイン室 室長
渋谷篤
入社以来、民間分譲・賃貸集合住宅や再開発事業の設計監理業務に従事。国土交通省の各種モデル事業採択、グッドデザイン賞(2010年、2011年)、パッシブデザインコンペ2014特別賞等受賞。現在は、2016年より新設されたlid研究所(life innovative design laboratory )にも在籍し、従来の設計監理業務に加え、集住施設の知識をベースにした「設計」の枠を超えた新規ビジネスへの挑戦や、クライアントの研修、大学講師、各種マニュアル作成等幅広い活動を行っている。一級建築士、CASBEE評価員、日本建築学会会員。

株式会社日建ハウジングシステム
1970年に日建設計より分社・独立。日建グループの一員として、集住施設の計画や設計、監理および集住に関する調査研究を行う設計事務所。新たに「住まいの価値創造企業」として、次の時代に向けた新規事業にも取り組んでいる。
https://www.nikken-hs.co.jp/ja

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