【前編】高齢化社会における財産管理と資産継承『高齢化社会の財産管理リスクに備える〜司法書士法人・行政書士法人 山口事務所〜』

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日本では高齢化社会を迎え、認知症などによる判断能力の低下に伴う財産管理上のリスクが増えてきています。平成24年度時点で、65歳以上の高齢者では7人に1人が認知症とも言われており、亡くなるまでの間の自身や家族の生活のため、また相続対策のためにも適切な財産管理が必要です。その方法や注意点について、司法書士法人 山口事務所代表・司法書士の山口達夫氏(写真左)、同グループ副代表・行政書士の坂本拓也氏(写真右)に伺いました。

アパートの建て替えも、認知症が疑われると困難に

Q:高齢化社会の中で、財産管理にどのような問題が出てきているのでしょうか。

山口:健常時に遺言が作成してあれば、亡くなった後に遺言を執行できます。しかし、亡くなるまでの判断能力がないと見なされる間は財産の転換を行うことが全くできません。判断能力というのは、多くの場合、認知症の問題ですね。財産管理の中でも、普通に預金通帳を預かるとか、所有アパートの家賃を預かるといった単純な管理であれば可能ですが、定期預金の解約や不動産などの処分といった形態の転換は、本人の意思確認が必要になります。つまり、遊休資産の活用や自宅を建て替えてアパートへの転用を考えたくても、名義人であるオーナーに判断能力がないと契約ができないのです。

坂本:東京では今多くの建物が築30年〜40年となり、建て替え時期を迎えています。アパート、マンションでも、震災などに備えるには耐震のための改築や補強も考えたいですし、そもそも老朽化した建物では入居者を集めにくいものです。しかし、オーナーチェンジをしていなくて、現在のオーナーがご高齢で判断能力が疑わしい時には、建て替えそのものを進めることができないのです。不動産の契約に関わることは、どうしても名義人の判断能力が問題になってきます。

山口:本人確認が重要視されるようになったのは、実は2001年の9.11米国同時多発テロ以降なんです。テロ資金を根絶する目的から、財産の移転業務に関わる全ての業種において、実質的な本人確認が厳しく行われるようになりました。つまり、契約に際して、本人の意思表示が重要だということです。
2008年には犯罪収益移転防止法が施行され、さらなる本人確認の厳格化が求められるようになりました。私たち司法書士も、業界全体の自主的な取り組みとして、本人確認をきっちりと励行しています。

資産運用や投資、相続税対策には不向きな成年後見人制度

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Q:土地・建物のオーナーが認知症になってしまった場合、財産管理対策としては、何ができるでしょうか。

山口:認知症を発症するなどして判断能力を喪失してしまっている場合には、「成年後見人制度」を用います。これは、判断能力が不十分な方を法律面や生活面で保護・支援する制度で、2000年の介護保険制度と同じ頃に導入されました。後見・保佐・補助を行う法定後見人の選任申し立てを家庭裁判所に申請し、許可されれば成年後見人として、ご本人に代わってもろもろの判断を行っていくものです。成年後見人は、お身内のほか、弁護士や司法書士でもなれます。実際、当事務所は現在40件ほどの成年後見を務めています。また、成年後見業務を行う司法書士で「リーガルサポート」という公益社団法人をつくり、家庭裁判所とも頻繁に協議をしていますので、状況に即して的確に事案を進めることができます。

坂本:しかし、成年後見人制度の趣旨は本人の権利や利益の保護であるため、本人の資産の柔軟な運用は難しいのです。家庭裁判所の監督下にあるわけですから、財産をそのまま保持したり利用したりすることは問題ありませんが、財産の運用、転用については相当きっちりとした提案でないと許可が出ないのが実情です。さらに、生前贈与やアパート経営、生命保険契約といった相続税対策は、事実上不可能といえます。つまり、資産保有している名義人が認知症になってしまうと成年後見制度を使わざるを得ないけれど、そうすると積極的な財産活用も相続税対策もできない、ということになるのです。

意思確認できるうちに将来に備えられる、信託スキーム

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Q:何か良いやり方はないのでしょうか。

山口:いろいろとご相談を受ける中、私たちが考えたのが、「信託スキーム」を活用することです。そもそも信託とは、本人が委託者として信託契約によって信頼できる受託者に、自身の財産を名義ごと転換し、委託者の設定した目的に従って財産管理や処分を託すことです。従来は免許を受けた信託銀行などが行っていたこの信託が、2006年の信託法の大きな改正によって、家族でも行いやすくなったのです。

坂本:このやり方の良い点は、アパート経営の場合、仮に3年後に建てる案件だとして、今はまだ認知症ではないけれど、そろそろ父親の判断能力が怪しくなるかもしれないといった段階で信託契約を組むと、例えば長男に名義を移すことができるわけです。その時に、成年後見人では行えないような内容を信託行為として盛り込んでおけば、その契約内容が継続可能なのです。つまり、信託に組み入れた不動産について、この土地を担保にした借り入れでアパートを建てても良いといったことを示しておくとしましょう。そうすると、信託契約時には元気だった父が、不幸にも1〜2年して完全に認知症で判断能力がなくなったとしても、信託契約があるので、予定通り3年後にアパートを建てるといったことが理論上可能になります。

山口:信託による財産移転は、贈与とは異なります。普通は名義を移転する時点で、相続や贈与が発生しますが、信託で移転する場合には、実態的な所有者はまだ父親だけれど、形式的には所有権を長男に移す、といったことになるので、税金は発生しません。ですから、信託を活用すれば、いろいろな財産管理のやり方が可能になるのです。

坂本:大事なのは、信託契約の内容のつくり込み方ですね。父親の亡くなった後のことも規定できますので、亡くなった時点で信託を終了するということもできますし、亡くなった後もこのように継続してくれといったことを盛り込めば継続可能ですので、相続対策ができるというわけです。
父親の視点で言えば、元気なうちに自分が認知症になってしまい、判断力がなくなってしまった後のことについても財産の管理・処分に関する指針を定めておけるということになります。

(プロフィール)
司法法人・行政書士法人・土地家屋調査士法人 山口事務所
司法書士・行政書士・代表役員
山口達夫
東京大学工学部産業機械工学科卒業、同大学大学院修士課程修了後、メーカー勤務を経て、法律家を志して転身。1975年、東京日野市で司法書士事務所を開設。不動産・商業登記をメインとする従来型の司法書士業務に携わってきたが、司法制度改革に伴い、司法書士のあり方を考え直し、青春時代を過ごした立川の地に2008年、現事務所を新規開設。2016年には麹町オフィス立ち上げを果たす。現在、立川オフィスは25人、麹町オフィスは6人の陣容により、ワンストップで数多くの困難な事案に取り組んでいる。

司法法人・行政書士法人・土地家屋調査士法人 山口事務所
グループ副代表・専務役員・行政書士
坂本拓也
早稲田大学理工学部建築学科卒業。同大学大学院修士課程中退後、東京・銀座にある弁護士事務所に長く勤めた後、2008年、山口事務所に入職。たまたま同じ都立立川高等学校の出身であった山口代表と意気投合し、立ち上げから奮闘し、事務所の発展に大きく貢献している。

司法法人・行政書士法人・土地家屋調査士法人 山口事務所
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