【前編】100年先を見据え、全国の森林とともに歩む道『持続可能な林業のサイクルと森林の公益的機能〜三井物産フォレスト株式会社〜』

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三井物産フォレスト
三井物産フォレストは、三井物産が所有する全国74ヵ所、約4万4千ヘクタールの「三井物産の森」を管理する会社です。環境問題が叫ばれる中、これだけの広さの森は日本にとって貴重な存在です。三井物産の関係会社である三井物産フォレストでは、これらの森を適切に管理することで林業のサイクルを回し、木材の供給のみならず、環境保全にも貢献しています。今回は執行役員業務本部長である高橋意弥氏と執行役員企画業務部長の吉田正樹氏、企画業務部の三浦史織氏と鈴木彩氏に事業内容や森が私たちの生活にもたらすことについてお話を聞きました。(写真は左から高橋意弥氏、鈴木彩氏、三浦史織氏、吉田正樹氏)

木を伐採して、木を使い、また木を植えて、木を育てる林業のサイクルを回す

Q:御社の事業内容を簡単に教えてください。

高橋:「三井物産の森」は全国に74ヵ所あり、面積比率では北海道が8割、本州が2割となります。その全てで事業を行っているわけではなく、天然林として手をそれほど入れなくても良い森もあります。人の手が必要な人工林については、定期的に保育や管理を行っています。国有林や公有林を除き民間が持っている森林の中で、森の面積では全国で第4番目の広さです。

吉田:三井物産が所有している森林は約4万4千ヘクタールですが、その使い方は様々です。木を丸太として販売している森や様々な公益的機能を発揮する森があり、それらを紹介します。
まず、私たちが管理している森林の区分について説明します。まず「循環林」があります。これは木を伐採して搬出、そこにまた木を植える本来の林業のサイクルを行う森林で、木材を生産する私たちの会社のいちばん大切な部分です。次は「天然生誘導林」です。これは、最終的に人の手が入らなくても自然の力で育つ天然林に誘導していきます。間伐を行うなど、途中までは人が手を加えなければならない森林で、間伐した木は積極的に利用を図っています。
この他には、土砂災害防止や土壌保全、水源かん養、大気の循環を支えるなど、木材生産以外の様々な公益的機能を発揮することを目的とし、保全する森林があります。それらを「生物多様性保護林」としています。
例えば、福島県にある田代山林では、その一部を「特別保護林」に区分しています。ここは尾瀬国立公園の特別保護地区に指定されている場所です。山頂部分がプリン形の平らな高層湿原になっていて、世界的に稀な地形であり、貴重な動植物が生息しているため木道を敷いたりして厳重に保護しています。
また、北海道にある宗谷山林の一部を「環境的保護林」に区分しています。北海道の代表的な針葉樹であるクロエゾマツの森が広がり、山林内の猿骨(さるこつ)川には日本最大の淡水魚で希少種とされるイトウが生息しています。
ほかにも、山地の崩壊を防止するために水土を保護している森林を「水土保護林」として区分するなど、様々な公益的機能を発揮できる森を守っています。

伊勢志摩サミットのテーブルに使用された「尾鷲ひのき」の良さ

三井物産フォレスト
出展:G7伊勢志摩サミット公式ホームページ(http://www.g7ise-shimasummit.go.jp/

Q:これらの森林保護のきっかけをお聞かせください。

吉田:三井物産は以前から、北海道の炭坑で使う坑木を生産するなどの林業経営を行っていました。その後、様々な要因が重なって日本国内での林業経営が難しくなっていく中、10年ほど前に三井物産が社有林を保有する意義について改めて検討がされました。その結果、CSRの観点から森林を三井物産の重要な資産として位置付け、その管理により環境保全を次世代へ継承、企業として社会に対して責任を果たしていくという基本方針が策定されたのです。

Q:循環林というのは、森林を保持しながら循環させていくという考え方ですが、扱っている木材はどのようなものですか。

吉田:カラマツ、トドマツ、スギ、ひのきなどあらゆる木材を扱っています。私どもが管理している森林は北海道が大部分となりますので、カラマツの生産量が圧倒的に多いです。カラマツはひのきやスギに比べると建築用材に使われることは多くありませんが、合板材などに使われています。ひのきは主に三重県で生産され、「尾鷲(おわせ)ひのき」と呼ばれています。実はこのひのき、今年開催された伊勢志摩サミットのテーブルの材料として使われました。
ひのきはスギと比べると生長が遅いので、年輪の幅が小さくなります。その分、中身が詰まって材質が硬くて丈夫になります。例えば、年輪と年輪の間を爪で押すと、スギだと跡が付きますが、目の詰まったひのきは硬いので付きにくいです。法隆寺などの歴史的に重要な建造物に使われてきました。ひのきは香りも良いので、「檜風呂」などで今でも重宝されています。
スギは生長が早い分、逆に軽く、材質がそれほど硬くないので加工しやすいという特徴があり、建築用材として様々な部位に使われます。接着させた木材(集成材)として、柱にすることもあります。

全国的に始まっている、生産した木材を全て使い切る「カスケード利用」

三井物産フォレスト
Q:色々な技術が向上したことで、これまでにできなかったことができるようになってきたのですね。

吉田:1本の木というのは、種類だけでなく、部分ごとに用途が変わります。根に近い下から上に細くなっていくにつれ、住宅用、合板用、パルプ用というように、A材、B材、C材、D材とランク分けされます。C材、D材の内、これまでパルプ用としては使われずに捨てられていた木材が今ではバイオマス発電向けに販売され使われています。捨てられていたものを販売することで収益に繋がるだけでなく、森林資源の有効活用と林内環境整備という面から、林業のみならず環境的にもとても良いことです。これは生産した木材は全部残さず利用していくというやり方で、部材の「カスケード利用」と呼びます。この取り組みはすでに全国的に始まっています。

(プロフィール)
三井物産フォレスト株式会社
執行役員 業務本部長
高橋意弥
2015年に入社。同年より現職。

三井物産フォレスト株式会社
執行役員 業務本部 企画業務部長
吉田正樹
2006年に入社。2016年より現職。

三井物産フォレスト株式会社
業務本部 企画業務部
三浦史織
2008年に入社。2015年より現職。

三井物産フォレスト株式会社
業務本部 企画業務部
鈴木彩
2010年に入社。2010年より現職。

三井物産フォレスト株式会社
三井物産が国内に所有する北海道から九州まで分布している山林の管理業務を行う。全ての山林を合わせた面積は国土面積の0.1%に相当する。木材生産を行う林業以外に森林体験や出前授業などの環境教育「森のきょうしつ」を実施、地方自治体やNPOなどと協力して社会貢献活動を行っている。持続可能な木材生産によって地域社会に貢献し、環境的・社会的側面を重視した運営を進めている。
http://www.mitsui-forest.co.jp/

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