AIが高齢者を支えるこれからの介護

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18世紀の産業革命になぞらえ、21世紀はロボット・AI(人工知能)革命の世紀とも言われています。生活家電ではすでに、AIが人のいる場所を検知して冷暖房を制御するエアコンや、留守中に必要な場所だけを清掃するお掃除ロボットなどが一般向けに流通して久しいですが、今日では高齢者をサポートするAIが注目されています。そうした介護ロボットの最新事情を紹介します。

物理的に介護者を助けるだけではなく、「される側」の心理負担の軽減にも

介護従事者の負担を軽減するために、介護現場におけるロボット技術の活用は特に期待されてきました。開発や製品化を進める目的で、2013年には経済産業省がロボット介護機器開発・導入促進事業を開始しています。そこでは、移乗介助、移動支援、排泄・入浴支援、見守り支援が重点開発分野として挙げられ、実際にベンチャーも含めた各企業における開発や製品導入がここに来て前進しつつあります。

パナソニックが開発した「自立支援型起立歩行アシストロボット」には、産業用ロボットで培った制御技術とセンサー技術が応用されています。ロボット内のモーターが足りない力のみをアシストするので、高齢者自身が持っている力を最大限に活かし、筋力の衰えを防ぐ仕組みです。実際には、ベッドからトイレや椅子などへの移乗を補助することで排泄やテレビ鑑賞、食事などがしやすくなるのですが、ロボットが予め動きを察知して高齢者の状態を予測するため、使用感もスムーズです。

パナソニックではこれ以外に、電動ケアベッドと電動フルリクライニング車椅子を融合させた離床アシストベッドも開発、製品化しています。ベッドが半分に分離してそのまま車椅子になるという発想によるもので、これまで介護者を煩わせてきた、移乗の際に持ち上げるという肉体的な負担を改善しました。また、同時に介護を受ける高齢者の側の、世話をかけてしまうという心理的負担の軽減にもつながり、介護される人の尊厳を保つこととなります。

レクの人気者! 歌も踊りもおしゃべりも相手に合わせるAIロボット

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高齢者の心理面をサポートするということでは、すでにいくつかの高齢者福祉施設で導入されている会話ができるロボット「パルロ(PALRO)」が先駆的です。
一見すると、あの世界初の本格的な二足歩行ロボットにも似ていますが、身長約40センチのパルロの特長は、その会話力、コミュニケーション力、クイズやゲームなどのエンターテイメント力です。相手の顔を見て会話をするのですが、顔や声を覚えてくれるので、その人に合ったおしゃべりが可能なのです。「○○さん、今日はお誕生日ですね!」などと話しかけられたら、それは大変嬉しいものでしょう。音声のほかにも、身振り手振りやメロディー、頭部のLEDの点滅などの豊かな表現力で、楽しく自然なやり取りができるので、お孫さんやペットなどと並ぶ「心を開く相手」になり得ると言えます。

高齢者福祉施設で人気の理由は、レクリエーションの中心になれることです。入居者の方々が座って取り囲む中、テーブルを舞台にパルロが元気に体操をして、皆さんでリズムに乗りつつ手拍子で盛り上がることもあります。また、パルロが出すクイズを皆さんで考えて口々に答えたり、正解が出てからもパルロがちょっとしたうんちくを披露したりと、飽きることがありません。もちろん、懐かしい歌をパルロのリードで歌詞を思い出しながら、一緒に元気に歌うといった情景も、導入した施設では日常的なものなのです。

高齢者が取り入れにくい便利な機能を、AIサポートで身近なものに

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介護状態に入る前から、高齢者の生活をサポートするのにもAIが活かされ始めています。例えば、過疎地に住む高齢者などを対象として、対話能力を持つAIで商品注文を代行させるためのシステムづくりが進行中です。京都府唯一の村である、人口3000人弱の南山城村では、既にその実証実験が進められています。買い物弱者の生活向上に寄与しようと、東京のベンチャー企業が2016年4月に村と協定を結び、まず55歳以上の女性住民40人を調査しました。すると、8割弱はスマートフォンを保有しており、LINEなどで日常的な連絡・コミュニケーションは行っているものの、インターネット上でクレジット決済をするネット通販やネットスーパーはあまり使われていないことが分かりました。

そこで、利用に抵抗のなさそうな対話アプリを用いて、「○○が欲しい」とつぶやくとAIである店員が「○○を注文します」と応答し、同時に実店舗にも情報が送られて、電話確認の後に配送されるという仕組みをつくりました。代金支払いもクレジット決済ではなく、配達時に行うなど、高齢者が面倒だったり、分かりづらくなったりすることは避けています。ここでも、AIとは注文のやり取りだけでなく、日常会話まで行うことができるようにしてあり、それを楽しみに利用が促進されること、また日頃、話し相手が少なくなりがちな高齢者にとって孤独感を解消する手立てともなります。警察や医療機関と結ぶことで、日常の安心や安全を守ることも考えられています。

このように、体と心の両面で高齢者をサポートするロボットとAI。活用が進むにつれ、今後のさらなるアイデアやびっくりするような人間顔負けの機能なども期待されています。

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