【前編】日本における外国人留学生への生活支援とは『留学生の状況と最近見られる傾向〜独立行政法人日本学生支援機構〜』

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このところ、日本を訪れる外国人の観光客が激増しています。テレビでも、日本が大好きといった風の外国人の姿が毎日のように取り上げられ、外国人旅行者の数はここ数年で倍増したというデータもあります。また、こうした数日あるいは数週間の滞在ではなく、1年やそれ以上の期間を日本で学び、生活を送る留学生の数は20万人を超えて、さらに増え続けています。そんな留学生たちは、どのような状況にあるのでしょうか。外国人留学生への支援の実情に詳しい、日本学生支援機構 理事の米川英樹氏に最新の事情や背景を伺いました。

日本の情報提供から学資支援、安心・充実した留学生活のための宿舎支援まで

Q:日本学生支援機構とは、どのような団体なのですか。

A:「JASSO(ジャッソ)」と呼ばれており、諸外国でもその名称で通っています。2004年に5つの団体がひとつにまとめられたもので、もともとは日本育英会・日本国際教育協会・内外学生センター・国際学友会・関西国際学友会として各々が行っていた諸事業を取りまとめ、現在のミッションとしては奨学金貸与・留学生支援・学生生活支援の3事業を行っています。

Q:留学生支援事業について、教えていただけますか。

A:留学前から終了後に至るまで、様々なサポートを行っています。外国人に対しての日本留学情報をホームページやfacebook、ガイドブックなどの媒体を通じて提供することに始まり、日本の大学入学に際しての判断基準とされる日本語力と基礎学力を測る日本留学試験(EJU)の実施、本格的な教育に入る前の日本語教育や進学予備教育の実施、それに学資の支給および援助、宿舎にかかる支援、留学中の交流推進、留学を終えた後のフォローアップまで幅広く網羅し、留学に関するデパートのようなものといえます。
日本で活動するだけでなく、海外にも事務所があります。バンコク、ソウル、ジャカルタ、クアラルンプールと今年度中にはハノイにもできますが、そうした海外拠点からも日本への留学に関する情報発信を行っているのです。
日本留学試験は、日本国内16都道府県で実施するほか、海外14ヵ国17都市でも実施しており、毎年約5万人が受験しております。
私たちの事務所がある東京都江東区青海の「東京国際交流館」は、各国からの約1000人が暮らす、日本最大級の留学生宿舎でもあります。大きな会議施設を備えており、シンポジウムやフェスティバルなど交流事業も同時に行っています。同様の施設は兵庫県にもあり、そちらの居住者は約200人の規模です。宿舎支援については、民間アパートを大学が借り上げて留学生のための宿舎とする場合に、ひとり当たり年間8万円までを援助する支援金交付を行っています。

20万人を超える留学生の、4人に3人は民間アパートに暮らしている

Q:宿舎については、こちらのような公の施設が多いのでしょうか。

A:いえ、実は大学や私たちのような公益法人などによる宿舎・学生寮に住む割合は25%程度で、4人に3人、つまり75%は民間アパートなどに暮らしているのです。この1対3という割合は、ここ10年の間ほとんど変わっていません。留学生の実数は増えていますから、公も民間も宿舎は同様に増えていると言えます。
ニーズが増している以上、民間の宿舎が増えるのは自然なことでしょうが、公的資金での運営の割合が減っていないのは、税金の投入や大学が資金を投じているということです。例えば、早稲田大学は約4600人と最も留学生受け入れの多い大学ですが、1000人規模の宿舎を建設しています。日本人も留学生も混住のものですが、留学生を受け入れることで日本人学生にとっても国際色豊かな環境を提供しようという目的もあります。グローバル人材を育てる手段のひとつとして、留学生の多い国際性を特色として打ち出す大学も多いですね。また、大学がUR賃貸などを借り受けて、学生寮の代わりにシェアハウスのようにして用いる例もあります。

Q:日本への留学生というのは、増えているのですか。

A:毎年5月1日現在でデータを取っていますが、最新発表の2015年統計では海外からの留学生が初めて20万人を超えました。20万8379人という人数になります。92.7%がアジアからで、国別ではいちばん多いのが中国で45.2%と半数近くに上ります。それに続くのがベトナムで18.7%、ネパールが7.8%、韓国7.3%、台湾3.5%となっています。
実は、基本的に右肩上がりで留学生の数は増えてきたのですが、2011年の東日本大震災を受けて、翌年の2012年は中国からの留学生を中心に少し減少を見せたのです。これは一時的なもので、全体としては2014年、2015年とそれぞれ2万人近く増えていますので、これまでにも増して大きな流行になっていると見ています。また、韓国からの留学生は政治的背景などから2012年頃より減少傾向にありましたが、留学フェアに参加する学生数が2015年からまた戻ってきているので、来年あたりには増加しそうです。
そして、こうした停滞期の中で大きく数を伸ばしたのが、ベトナムとネパールでした。従来は中国・韓国・台湾という国が留学生の中心でしたが、そのほかの国からの留学がここ数年で大変増えているのです。

日本の社会や文化、言語に惹かれての留学が増加中

Q:ベトナム、ネパールからの留学生が増えているのは、なぜでしょうか。

A:それぞれに事情は異なると見ています。まずベトナムについては、日本の大学へのなど留学が2012年は4373人だったのが2015年には2万131人と5倍近くに、同じく日本語学校へは1735人から1万8751人と10倍以上にも増えているのです。これは日本企業のベトナム進出の影響が大きいのではと思われます。自国にいながら、日本の会社名を多く目にするようになり、自ずと目指すようになったということでしょう。
ネパールについても、日本の大学などへの留学が2012年には2451人だったのが2015年には8691人と3倍以上に、同じく日本語学校へは1150人から7559人と7倍近くに増えています。こちらは国の状況としてスタグネーション、つまり経済的な停滞が続いていて、首都のカトマンズでも若者が仕事もなくたむろしているような様子が見られます。これといった産業がないために、留学といった形で国外に目を向けざるを得ないのかもしれません。その時に、もともと親日国であり、近年はODAを通じて日本からの支援も行われていることから、留学先として日本を選択するのだと思います。ちなみに、日本にあるインド料理店は実はネパール人によるものであることも少なくありません。インドと隣接して文化も似ているネパールは、日本人にとっても親近感を持ちやすい国と言えます。

Q:留学先としての日本の魅力とは、何でしょうか?

A:日本学生支援機構が隔年で調査している「私費外国人留学生実態調査」の2015年版によれば、日本を留学先として選んだ理由の第1位は「日本社会に興味があり、日本で生活したかったため」で、複数回答ですが59.5%がそう答えています。第2位は「日本語・日本文化を勉強したかったため」の47.3%で、第3位の「日本の大学等の教育、研究が魅力的と思ったため」の35.8%を上回っています。つまり、日本の高等教育の魅力よりも、日本の社会や文化の魅力のほうが先行しており、おそらくアニメやJ-POPなど、日本のものが大好きな「日本オタク」的な人が増えて、実際に日本での生活を望んでいるのでしょう。
興味深いのは、ここ数年、理容・美容師や調理師などの専門学校人気が高まっていることです。珍しいところでは、自転車メカニックの専門学校がありますが、留学生に人気です。日本の魅力をそうした分野に感じてくれて、それを勉強してそのまま日本で仕事をしたり、自国に持ち帰ったりしてくれるのでしょう。そうした層は、今後も増えていくでしょうね。

Q:日本の文化や独自の技術に愛着を持ってもらえるのは、嬉しいですね。

A:その通りです。それに、日本の社会そのものも安全で、皆真面目で一生懸命働いて、という日本人の国民性が魅力なのでしょう。東日本大震災の際の報道などを通じて、私たちの真面目さや危機に直面した時の強さといったイメージが、国際的にも伝わっていると思います。このように、日本人の資質自体がアトラクティブであるというのは、誇らしいですね。

(プロフィール)
独立行政法人日本学生支援機構
理事
米川英樹

大阪教育大学名誉教授。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程中退。大阪教育大学では留学生センター長、附属学校部長などの要職を歴任。専門は教育社会学。研究分野は若者文化、教員養成の比較、学校運営、子どもの学力向上比較、教育研究法など。長年にわたり各国の留学生を含む数多くの学生を指導し、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどの研究者との共同研究を通じ、大学の国際交流の発展に大きく貢献。2012年より独立行政法人日本学生支援機構の理事として、留学生支援事業、日本語教育センターおよび調査部門を担当。

独立行政法人 日本学生支援機構
http://www.jasso.go.jp/

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