企業と学校が手を組むのはなぜ? 産学連携が生み出すものとは

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産学連携として、企業と大学や専門学校が連携して新製品の共同開発や新事業の創出が行われています。今後、少子化による人手不足が懸念される中、企業にとっては人材の確保という側面も考えられます。産学連携ではどういったことが行われているか、企業と学校側の双方にどのようなメリットがあるのかを解説します。

産学連携を盛り上げてきたライセンシング機関の存在

「産学連携」とは企業(産)が、技術シーズや高度な専門知識を持つ大学など(学)と連携して、新製品開発や新事業創出を図ることです。環境が大きく変わったきっかけは、平成10年8月に施行された「大学等技術移転促進法」です。正式には「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」といいます。
大学などの教育機関には研究資源の多くが集中しており、そこには新規産業の元やヒントとして有望なものがあるはずですが、それが産業には十分に活用されてはいませんでした。企業には研究部門とは別に特許管理を行う「知的財産部」があるのに対し、大学にはそうした組織がなかったことが問題となっていたため、大学の研究成果の特許化及び企業への移転、ライセンシングを行うTLO(Technology Licensing Organization技術移転機関)の必要性が認められるようになったのです。
TLOが整備されたことにより、産と学の仲介役として大学の共同研究センターやリエゾンオフィス、産業支援プラザの産学交流サロン、産学連携窓口などを設けて積極的に連携に取り組む機関が増え、学校にとっても一般の企業にとっても互いにニーズをマッチングさせやすくなり、共同研究などの連携が行いやすくなりました。
実際、大学などと民間企業との共同研究件数は毎年増えており、平成26年度は前年度から6.6%増の1万9070件を数えました。共同研究の実施実績では件数、受け入れ額ともに東京大学、大阪大学、京都大学など国立大学が名を連ねています。大学などの教員と民間企業の研究者とが共通の課題について対等の立場で取り組む共同研究は、国などの公募事業に共同で応募して臨むケースも多いようです。
一方、民間企業からの委託を受けて大学などの教員が公務として実施する受託研究も簡単な実験や自社製品の性能試験などのニーズに合致しやすいこともあり、平成24年度以降、増加傾向にあります。平成26年度には前年度比4%増の6953件でした。こちらは立命館大学、近畿大学、慶應義塾大学、早稲田大学など私立の大学における件数も多く見受けられます。
(参照:国立研究開発法人科学技術振興機構『産学官連携データ集2015〜2016』)

社会人として求められる能力を培う場を、企業が提供

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2010年から文部科学省によって実施された就業力育成支援事業では、選定された180の大学で講義やレポート、インターンシップを通じて、企業の業務とともに働く意味を理解し、就業力を高める産学連携教育プログラムが行われました。大学設置基準も改正されて、2011年からは全大学にキャリア教育が義務づけられてもいます。
キャリア教育とは、自立した社会人、職業人として必要とされる自他の理解力、コミュニケーション力、情報収集力、職業理解力、役割把握力、計画実行力、課題解決力といったものを身につけることを目的としています。これらは座学や机上でのシミュレーションだけで身につくものではなく、より実践的な場が学校から企業に求められるようになりました。
その中で、例えば企業の中堅社員を講師として働く意味や企業が求める人材について講義を行い、具体的な商品の宣伝販促といった課題を学生がチームを組んで企画立案していくといったプログラムも行われてきました。こうした学生のパフォーマンスに対する企業の評価も高く、少子化による人材難を背景に、より企業の求める人材に出会える機会創出の場として、また、求める人材像を直接的に伝える手立てとしても有効と考えられているのです。
こうしたプログラムは大学に限らず、専門学校などでも適用しやすく、様々な分野で広がりを見せています。調理学校の学生がホテルでのイベントメニューの開発に関わったり、音楽学校の学生がリトミックの技能を老人ホームでの高齢者とのコミュニケーションに活用しています。アートを学ぶ学生に、マスキングテープなどの商材を提供してコンテストイベントを開催するといった、地域活性にも一役買うような連携の例もあります。

より実践的に「産」が「学」に入り込み、起業の訓練にもなる大学発ベンチャー

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こうした動きとは別に、学校法人内での会社設立を行う、つまり、大学や教職員、卒業生などが出資して現役学生が社員として参加する、大学発ベンチャーも盛んになってきています。例えば、東京農業大学発のベンチャー企業である株式会社メルカード東京農大では教授が社長を務め、在学生や卒業生らが社員として事業参加しています。大学で開発したオリジナル製品などをブランディングして、インターネット通販するというものです。
在学生にとっては、そこで働くことが学内インターンシップ経験となって、就職活動でのアピールポイントにもなり、将来の仕事を考える上でも意味があります。ブランディング商品をオープンキャンパスなどで配布するといった広報活動で学生・保護者の関心も集め、学生募集にも貢献しています。また、国内外で活躍する卒業生の商品も農大ブランドとして扱うことにより、在学中だけでなく卒業後も学生を支えていくという大学の姿勢を示し、卒業生とのネットワーク強化にもつながっています。
大学発ベンチャーは、教育や研究といった従来の大学の役割を超えて、社会貢献というミッションを考えた時に行える、ひとつの形でもあります。また最近は、起業を大学教育の目標設定のひとつに位置づけて、実践的な教育プログラムとして在学中に学生が新会社を設立できる仕組みを取り入れた「起業家輩出大学」も出てきています。

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