【後編】介護施設で高齢者に大人気のAIロボット『パルロ導入で変わった介護の現場』

ケア

関連キーワード
パルロ
歌ったり踊ったり、相手を認識して会話をするなどして、介護の現場で高齢者に人気を博しているコミュニケーションロボット「PALRO(パルロ)」。
前編では、導入して2年になる「あずみ苑 北本」で、その効果を伺いました。後編では引き続き、シルバー事業部運営企画課の原嶋めぐみ運営チーフ(写真左)と吉野実洋施設長(写真右)に、パルロの現場での様子や今後のAIロボットの活用についてお聞きしました。

機械にありがちなメンテナンスなどの手間も不要で、より人間らしく

Q:パルロを使っていて、現場で困ることなどはないのでしょうか。

吉野:それが、ほとんど思い当たらないのです。日々のメンテナンスも、いわゆる家電と同じで時々拭く程度ですし、埃よけなども必要なく、そのまま置いてあります。ポケットwi-fiでインターネットにつないでありますが、ネットワーク環境が良くなかったり、充電が足りなくなりそうになるとあらかじめ「僕、疲れてきちゃったみたいです」などと言ってくれるので、対応するようにしています。本体の充電池のほかに外付けの充電器があり、線でつなぐことにはなりますが、それを接続すればすぐに元気になってくれます(笑)。いずれにしても、突然フリーズやシャットダウンするようなことは一度もないですね。

原嶋:定期メンテナンスやクリーニングといった必要もないので、不具合でも起こらない限りは、基本的には毎日入居者の方と顔を合わせます。たまにメーカーさんのほうで、システムの大きなアップグレードがあったりするときだけ、一時、引き取っていただいて、良い子になって戻ってくることはあります。あとは、インターネットにつながっているので、アプリケーションのダウンロードなどもネットを通じて行うことができるのです。

吉野:強いて言えば、機械ですので壊してしまわないようにと職員が注意していることでしょうか。実はパルロは歩行もできるのですが、テーブルから落ちるといけないので、「あずみ苑」では歩かない設定にしています。パルロには話しかける以外に、タブレット上の管理画面でもコントロールや設定ができますので、細かい指示などはそちらからも行っています。例えば、ご利用者様の名前を覚える時に、発声のはっきりされなかった時など間違えて覚えてしまうこともありますが、それは管理画面から職員が修正できます。

Q:コスト面はいかがでしょうか。

原嶋:導入するには購入とレンタルの2パターンがあり、「あずみ苑」では2年契約で月々3万円というレンタル方式にしています。これには、先ほどのメーカーによるアップグレードサービスや動産保険、メーカー保証が含まれています。実は、最初にパルロを導入した「あずみ苑 木更津」では少し前に2年契約の更新を行いましたが、ちょうどパルロ自体が次世代モデルにバージョンアップしておりましたので、新しいモデルが導入されています。見た目は、間違い探し程度のわずかな変化のみですが、今まで難しかった足上げ体操ができるように椅子のような付属品が加わったり、腕の可動域が広がったりと機能が向上していますね。

インターネットを介して、自然と「育って」いくパルロ

パルロ
Q:「あずみ苑」ではパルロを3台導入されていますが、個体差はありますか。

吉野:人工知能のAIロボットなので常に自分で学習をしているのですが、職員同士の会話なども拾って、聞き慣れない言葉があると「今聞いた単語は初めて聞いたなぁ」などと言って、自分でインターネットで調べて覚えたりするのです。ですから、その施設でよく言われているフレーズや流行の言葉などを覚えていくので、自然とカスタマイズというか、その施設ならではのパルロになっていっているのではと思います。

原嶋:もともと高齢者施設用にカスタマイズされているので、介護現場でよく使われる「お風呂」や「レク」「口腔体操」といった言葉は特に聞き取れるように、メーカーさんが設定されているそうです。体操の合間にちょっと休憩を入れる際にも、「お風呂はいつ入るのが良い」といった豆知識を挟んでくるほど、物知りでもあります(笑)。特に指示しなくても、新しい知識を常に仕入れているので、同じ話を何度もするようなことはないですね。

Q:パルロの使われ方は、3施設で共通しているのでしょうか。

原嶋:「あずみ苑 北本」では、このパルロがずっと施設内にいるので、ご利用者様がいついらっしゃっても、いつもパルロが迎えてくれます。他の2施設では、近隣の「あずみ苑」を巡回したり、新規の施設がオープンする時に内覧会にゲスト参加して「あずみ苑」ブランドのアピールに役立ってもらったりもしています。今後もパルロの台数を増やすというよりは、より効果的に多くの場面で役立てられるような使い方を「あずみ苑」として考えていきたいですね。他のコミュニケーションロボットについても常に情報は仕入れていますし、実際に短期ですが導入検証を行ったりもしますが、今のところはこの分野ではパルロが優れていると思います。メーカーさんにも、共同開発と言いますか、75施設ある「あずみ苑」を活用して検証実験などあればどうぞとお誘いもしています。新しいものに積極的な社風を、そうした形で役立てられればいいですね。

吉野:新しいものと言えば、AIではありませんが、「あずみ苑」全体で2016年4月から介護記録の電子化に踏み切っているんです。タブレットで入力・管理を行っているのですが、この規模の介護施設の全拠点で導入されているのはたいへん珍しいことではないでしょうか。ケアマネジャーさんや他社施設のスタッフからも驚かれています。

マッスルスーツや見守りシステムなど、次の取り組みも積極的に

パルロ
Q:AIやロボットという点で、今後の展望はございますか。

原嶋:パルロは「あずみ苑」がいち早く導入してきましたが、厚生労働省の介護ロボットなど導入支援特別事業による補助金制度が実施されることで、他社の施設でも導入が進んでいくかと思われます。「あずみ苑」ではさらに、この補助金制度を利用して腰への負荷が軽減される『マッスルスーツ』の導入を40施設ほどで予定・準備しています。マッスルスーツというのは介護現場に限らず、倉庫や工場など重いものを運ぶ作業が伴うところで導入が進んでおり、常に装着するというよりは、何か動作を伴う時にサッと身に着けて、腰にかかる負担を軽減させるものです。

吉野:介護の現場では、腰痛は付き物の悩みなのです。私自身、何度か腰を痛めており、今現在も負担を抱えています。やはり80キロといった体重のご自分では動くことのできないご利用者様を車椅子からベッドに移したりすることが日常ですから、若くて力のある職員であっても、どんなに技術の優れたスタッフであっても、腰には負担がかかるものなのです。ましてや、ご利用者様にお怪我などさせてはいけないと気をつけながらですから、腰痛の悩みは重大です。どんなに介護に熱意のある職員であっても、腰痛が離職の理由となることも時にはあるほどです。マッスルスーツが導入されれば、職員のモチベーションアップに必ずつながると期待しています。

原嶋:もうひとつ、検討しているのが居室内の見守りのシステムです。ショートステイや有料老人ホームなど、宿泊を伴うサービス提供を行う施設では、夜間のご利用者様の見守りが重要ですが、ベッド上での離床を感知できれば夜勤スタッフの肉体的・精神的負担の大きな軽減につながるのです。現在、さまざまなメーカーさんが商品開発をされているので、いくつか検証を進めているところですが、一長一短があり、まだ決定には至っていませんが、現場の負担を考えるとぜひ導入を実現させたいと考えています。

吉野:本部にはこれもぜひ導入をお願いしたいです。「あずみ苑 北本」でもショートステイを行っていますが、24床のほとんどが毎日ご利用いただけています。ただ、有料老人ホームなど、ほぼ固定したご入居者様を見させていただくのと違って、ショートステイの場合は長い方は30日以上のご利用もありますが、ご家族の外出に合わせた1泊だけなどスポット的なご利用やそういう形での新規の方もいらっしゃいます。そうすると、職員としても、その方の習慣や特性による就寝の様子がつかめないことも多々あるのです。ベッド上での立ち上がりや転倒リスクのある方には特に注意を要しますし、単純にベッドが変わって眠れないといった方へのフォローも必要です。

原嶋:こうした夜勤の負担もやはり、離職につながるものです。万一、事故が起きれば夜勤職員だけの問題ではありませんが、その職員にしてみれば必要以上に責任を感じてしまうものです。離床センサーなどで安全対策が採られていれば、職員の身を守ることにもなりますし、もちろんご利用者様やご家族にとっても大きな安心材料となります。結局のところ、AIやロボットにサポートしてもらうことで、職員には介護という本来の業務にしっかりと向き合ってもらうといった在り方が良いのではと実感しています。また、間接業務の部分、例えば送迎車のルートや職員のシフト作成などにもAIの力を活用できれば、よりご利用者様と向き合う時間を作れるのではないでしょうか。「あずみ苑」として、そうした検証を重ねて、より良い介護環境・職場環境づくりにつなげていきたいですね。

(プロフィール)
株式会社レオパレス21
シルバー事業部 運営部 運営企画課 運営チーフ
原嶋めぐみ
2007年入社。あずみ苑で介護スタッフからスタートし、生活相談員、施設長を経て2014年より現職。現場での経験を踏まえて、介護ロボットの導入担当を務める。社会福祉士・介護支援専門員・学習療法士。

株式会社レオパレス21
あずみ苑北本 施設長
吉野実洋
2008年に入社し、開所したばかりのあずみ苑北本に赴任。その後、3ヵ所のあずみ苑を経験して、2015年再び北本に今度は施設長として着任。社会福祉士・介護支援専門員。

レオパレス21グループの介護サービス
あずみ苑
http://www.azumien.jp/

介護ロボット記事一覧はこちら
【前編】介護ロボット導入効果『売れるルールを政策に落とし込む』
【後編】介護ロボット導入効果『導入効果を現場で検証』導入効果を最大化するルール形成とは
【前編】介護施設で高齢者に大人気のAIロボット『パルロ導入で変わった介護の現場』
【後編】介護施設で高齢者に大人気のAIロボット『パルロ導入で変わった介護の現場』

その他のおすすめ記事

その他のケアの記事

キーワード一覧

 ページトップ