超高齢化社会における資産継承でやっておきたいこと

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どの国も体験したことのない超高齢化社会に突入した日本。その時、大きな問題のひとつとして浮かび上がったのが資産継承についてです。認知症になった後では難しくなる財産管理の問題点と、それを回避するための対処法について紹介します。

他人事ではない!? 自覚しにくい認知症ならではのリスクに備えるには

2012年時点で認知症と診断された日本の高齢者は約462万人、高齢者の約7人に1人でした。2025年にはそれが約5人に1人の約700万人にも達するといわれています。しかも認知症の「予備軍」も含めるとすでに高齢者の約4人に1人が該当するというのです。この予備軍とはMCI(Mild Cognitive Impairment)という軽度認知障害の人のことで、正常と認知症の中間のグレーゾーンに当たります。MCIと診断された全ての人が認知症になる訳ではありませんが、周囲からの見守りが不可欠な存在といえるでしょう。

最近、「認知症ドライバー」による事故が社会問題になるなど、本人に自覚がないことによる悲劇が取りざたされています。判断力の低下が本人だけでなく、周囲にもなかなか気付かれにくいという点で、ほかの高齢者がかかる病気とは違ったケアの仕方が認知症には必要です。

そして、財産管理においても、認知症になるリスクを考えておく必要があります。というのも、認知症は発症してからが長い病気です。代表的なアルツハイマー型認知症では、発症してから2〜3年は数分から数日前の記憶障害を主とする軽度なものです。症状の進行とともに時間、場所、人に対する見当識障害が加わるなどして生活が不自由になっていく中等度の状態が4〜5年続き、排泄や起立・歩行障害、飲み込みの障害が起きる重度から末期の状態が3年ほどと、約10年をかけて徐々に生活の質が損なわれていくといわれています。

柔軟な資産運用や相続税対策を行いづらい、成年後見制度

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認知症を発症した後の生活や介護に備えるための財産管理には、どのような方法があるのでしょうか。まず思いつくのは「遺言」ですが、発症前に作成したとしても、遺言の執行は死亡により相続が発生してからになるので、認知症を発症している期間については基本的に遺言の内容は適用されず、また内容の変更も不可能です。十分に注意したいのは、認知症になって明らかな判断能力の低下が見られるようになると、遺言の作成・変更はもちろん、契約などの法律行為が一切できなくなることです。そこで考えられるのは、「成年後見制度」を利用することです。

これは、判断能力が不十分な人を法律面や生活面で保護・支援する制度で、今は元気だが将来判断能力が不十分になった場合に備えておく「任意後見制度」と、すでに判断能力が不十分とされる人に代わって法律行為をしたり不利益を被った契約を取り消したりする「法定後見制度」の2種類があります。将来的な認知症リスクに対する備えとなるのが前者で、任意後見契約を締結することとなります。判断能力が不十分になったら任意後見人による支援を開始させるという契約で、裁判所が選任した監督人が支援の様子をチェックするため安心であるともいわれています。

ただし、この制度の趣旨は本人の権利・利益の保護であることから、資産運用は元本が保証されたものなど、安全確実な方法に限られます。つまり、財産の売却やそれを担保として貸付を受けるといった柔軟な運用は難しく、生前贈与やアパートマンション経営、生命保険契約などの相続税対策も事実上不可能なのです。

不動産を担保とする借り入れも実現可能な「家族信託」

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認知症を発症してしまってからだと、この成年後見制度を用いるくらいしか対応策がありません。そこで、発症したとしても事前の意志に沿って不動産の有効活用や贈与などを行うための方法として考えられるのが、「家族信託」を利用することです。これは、資産を所有する人が、ご自分の老後の生活や介護に必要な資金の管理といった目的で、不動産や預貯金などの資産を信頼できる家族に託してその管理・処分を任せるという仕組みです。

例えば、Aさんが元気なうちに長男との間に、所有する不動産を信託財産とする信託契約を締結したとします。この契約に、当該不動産を担保に借り入れをすることも規定しておけば、将来、Aさんが認知症を発症して判断能力が低下してしまったとしても、不動産の有効活用や相続税対策を継続することができるのです。信託の受託者として長男が借り入れをしてアパートを建てれば、そのアパートも信託財産に含まれ、借り入れは受益者であるAさんに帰属することとなります。成年後見制度では困難なAさん名義での借り入れが、家族信託のもとでは可能になるのです。そして、アパート経営という不動産の有効活用によって得られた家賃などの利益は、受益者であるAさんが受領しますので、Aさんの生活資金・介護資金に充てることができます。Aさんが亡くなられたら信託が終了し、その時点で残った財産は長男に帰属させるような内容に信託しておけば、亡くなる直前まで長男は自身の判断で相続税対策を実行できるということになるのです。

家族の状況に応じて、信託契約の内容を吟味することで、幅広い備えが可能となります。幸いにも認知症の発症に至らなければ、そのまま計画通りにアパート経営を進めれば良いだけです。こうしたリスクへの対策を講じながら進めることが、これからの財産管理には大切になるでしょう。

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