ミャンマーへの進出が増加する日系企業の海外戦略とは〜ASEANへの海外進出〜

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中国の人件費の高騰などにより、海外戦略の一環として、ミャンマーに進出する日系企業が増えてきました。ミャンマーはここ数年で民主化が進み、外資系企業の進出を促す経済政策をとっています。そうした環境のもと、日系企業がミャンマーへ進出する背景やその実情、今後の展開などについて解説していきます。

ミャンマーに進出する要因は民主化とタイプラスワン

日系企業のミャンマー進出が増えている背景として、急速に進んだ民主化が挙げられます。2010年に新憲法に基づく総選挙が実施され、民主化運動の指導者アウン・サン・スー・チー氏が自宅軟禁から解放されました。2011年にはテイン・セイン大統領が就任し、軍事政権を担っていた国家平和開発評議会(SPDC)が解散して新政府に権限を委譲したことで民政移管が果たされました。さらに2015年11月、アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)がミャンマー総選挙で圧勝し、2016年3月には側近のティン・チョー氏が大統領に就任しています。

ミャンマー政府の経済政策では、2012 年に新しい外国為替管理法が成立し、外貨保有制限が解除されました。また、外国投資法も改正されたことで、投資認可基準の方向性が明確になっています。さらに2014 年には、経済特区法の改正によって、経済特区に進出する企業への優遇措置が導入されました。

一方で中国やタイでの人件費が高騰していることから、工場を分散させてリスクヘッジを図る動きが起きています。インフラ施設が懸念材料ではあるものの、整備が進んできたことで、アセアン諸国の中でも人件費が安いミャンマーは、「タイプラスワン」の拠点として注目されているのです。

加速する日系企業のミャンマーへの進出

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ヤンゴン日本人商工会議所に参加する日系企業の数は、2011年までは50社程度で推移していました。しかし、2012年には85社と増加し、2014年には221社、2016年4月には301社とここ数年で急増しています。

ミャンマーに進出する外国企業が増加するとともに、進出企業の業種も多様化してきています。かつては、ミャンマーへ進出する日系企業は、主力産業の繊維業やインフラ整備関連が中心でした。しかし、近年は輸送や通信、金融、飲食関係などが増え、ミャンマーも他国と同様に一般的な投資先としても注目されるようになってきたのです。

日系企業の中では、繊維業のほか、自動車産業の製造拠点のひとつとして、ミャンマーが注目されています。ミャンマーでの自動車の販売台数は、2015年度で5万台程度とされていますが、日本製の中古車が9割を占めることから、日本車の需要が見込まれています。

スズキでは、1999年から行っていた国営企業との合弁による自動車生産を、2010年に軍事政権の影響で清算していましたが、2013年に工場を再開して小型トラック「キャリイ」の生産を始めました。さらに、ティラワ工業団地に2カ所目となる工場を設け、2017年から操業を開始し、ミャンマーで急増する自動車への需要に応える予定です。日産自動車でも、マレーシア・タンチョングループへの委託によって、サニーの生産を2016年に開始しています。

今後ミャンマーへの進出は激化の様相

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ミャンマーの企業の中には、旧軍事政権との関係が深く、米国の経済制裁リストに掲載されている企業があり、そうした企業との取引は、日系企業に対しても制裁が行われてきました。実際に2013年6月には、三菱東京UFJ銀行がニューヨーク州当局に和解金を支払うことで合意しています。制裁リストへ掲載されている企業との取引は、「人権侵害に加担している企業」というイメージを持たれるリスクもあることから、日系企業は慎重な姿勢をとっていました。その結果、ミャンマーの多くの大企業とは取引が難しく、取引先はリストに掲載のない数少ない大企業と中小企業に限定され、取引を行う前に米国の経済制裁リストを確認する必要がありました。

これまでにも段階的に制裁が緩和されてきましたが、2016年9月に米国のオバマ大統領が大幅な解除を打ち出したことで、日本企業にとっても、今後は取引先の拡大が期待されています。一方で、米国企業の進出によって、ミャンマーへの進出を巡る競争が激化し、優秀な人材の獲得競争やオフィス賃料の高騰などが懸念されています。

ミャンマーには、中国や韓国、タイ、シンガポールといった国々も進出し、中国や韓国の企業が即決で意思決定を図るのに対して、日本の企業は意思決定が遅いとされています。米国の参戦によって、ミャンマーへの進出が激化する中、ミャンマー現地とともに本社側にもスピーディでタフなやり取りができる人材が、日本の企業でも求められていくでしょう。

ミャンマーへ多くの企業が進出することで、長期的には人件費が高騰することも想定されますが、自動車産業のように、ミャンマー国内の内需を取り込む形であれば、縮小する日本の国内市場に代わるマーケットとしても大いに期待できることでしょう。

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