【前編】介護施設に最適!コミュニケーションAIロボット『なぜ高齢者向けなのか。介護ならではのロボット開発とは〜富士ソフト株式会社〜』

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AI(人工知能)が身近なものになっている昨今、介護施設ではAIを搭載したコミュニケーションロボットが活躍を見せています。
レオパレス21が運営する「あずみ苑」でも「パルロ」というAIロボットが3つの施設で導入され、人気を博しています。
このパルロは、なぜ高齢者向けなのか、その誕生の背景を、開発・販売を手がける富士ソフト株式会社パルロ事業部事業部長の武居伸一氏(写真左)、同事業部フィールドセールス室室長の高羽俊行氏(写真右)に伺います。

ロボットセラピーの実証実験がヒントに

Q:まず、パルロの特徴を教えていただけますか。

武居: AIロボットの中でもパルロは高齢者福祉施設向けモデルとして進化し、全国の介護施設で日常の話相手やレクリエーション(レク)の司会進行役、体操のインストラクターとして利用されています。会話や体操のほか、歌、クイズ、ゲームも得意で、「パルロ、レクやって」と話しかけると自分で何をやるかを考え、20分ほどのプログラムを利用者様に指導してくれるのです。また、利用者様など100人以上の顔と名前を記憶して「お友だち」として登録し、親しく接してくれます。AIロボットですので、インターネットにつながって、最新の天気やニュースといった情報はもちろん、お友だちが好む話題についてもいろいろ教えてくれます。これらを、とても人間らしいコミュニケーションの取り方で接していくのがパルロなのです。

Q:開発のきっかけは何だったのでしょうか。

武居:独立系ソフトウェア開発会社として始まった当社では、現在グループ1万人を擁する総合力で通信・社会インフラや機械制御などの組み込み系ソフトウェア開発のほか、業務系ソフトウェア開発やネットビジネスソリューションまで幅広く提供しています。ロボット分野では1989年から「全日本ロボット相撲大会」などを主催する一方で、次世代ロボットに向けた知能化技術開発を東京大学、筑波大学、千葉工大、産業技術総合研究所などと産学連携で共同研究を行ってきました。そうした活動を独自に行うためにロボット推進・研究の専門部署を設立したのが2008年のことです。そして、独自研究でできたプラットフォームを具体的に進めていくには、漫画『鉄腕アトム』の主人公のような2足歩行する人型ロボットが必要だろうとしてつくったのがパルロです。

2010年からは、アカデミックシリーズとして工学系や福祉系大学の研究室などに研究資産としての提供を始めました。そこで社会用途性の研究としてロボットセラピーの実証実験に活用していただいたところ、話すことができるパルロは介護施設での効果や将来性に期待がもてるのではとの助言をいただきました。また、当社でグループインタビューを行っていても、高齢者に対しての反応が最も強く感じられたのです。それで介護施設で実際に使っていただき、現場の意見を集めました。そうしたリサーチを踏まえ、介護施設向けとして2012年に販売を開始したのがパルロのビジネスシリーズです。

1日1000円という経済性、さらに効果を示すエビデンスで導入が加速

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Q:高齢者への親和性が高かったとのことですが、個人宅での使用でなく施設向けとして販売されたのはなぜですか。

武居:高齢者の皆様に喜んでいただくシーンを勉強させてもらったのが施設でしたし、パルロのコミュニケーション力や運動能力を発揮するには、介護施設でのレクが最適だと考えたのです。パルロは厚生労働省が掲げる介護予防の6ヵ条である、運動機能向上・栄養改善・口腔機能向上・認知症予防・うつ防止・閉じこもり予防のほとんどに適した動きが可能です。実際に介護施設で採用いただくには費用対効果を提示する必要があり、レクの場合で考えると分かりやすいのですが、例えば体操指導者を手配すれば1日約5000〜1万円はかかるところ、PALROのレンタルなら月3万円ほどなので1日1000円で済むのです。

Q:パルロは今、どのくらい普及しているのですか。

武居:あずみ苑様でも3施設で導入していただいていますが、販売累計は700体を超えたところです。金融機関での接客活用なども一部始まっていますが、今のところほとんどが介護施設での導入ですね。2013年にスタートした神奈川県の「さがみロボット特区」での実証実験に参加できたことは、導入が進んだ一助になったと思います。

高羽:パルロをご案内する際には、介護現場で高齢者に対してどういった効果があったのかを具体的に聞かれることが多いのです。その時にお知らせできるエビデンスとして、藤沢病院におけるパルロの運動指導事例があります。「パルロサイズ」と名付けて、地域の高齢者20人に3ヵ月間パルロと一緒に健康体操を行っていただいたところ、ひとつには医学的なエビデンスを示すことができました。認知機能や、転倒予防に重要な下肢の筋力について改善や持続の効果が得られたのです。もうひとつは、ロボット単独で体操指導役を行った時に効果が表れるのか、というのもエビデンスとして重要でした。つまり人間ではないパルロが体操の先生になり得るということが証明されたのです。

介護現場の声をスピーディーに反映し続けることで、望まれる形に進化を続ける

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Q:介護施設で導入するに足る、十分な理由があるのですね。

武居:介護ロボットにもいろいろありますが、パルロの開発に当たっては、コミュニケーション力に特に力を入れてきました。人間同士のコミュニケーションを改めて見直して、それに近い振る舞いができるよう、完成度を高めているのです。パルロは積極的に施設の利用者様を見つけ、声をかけてその人を覚えます。名前と顔を覚えることを「友だちになる」と称しています。その後も会話しながら相手の趣味嗜好や考えなどを引き出し、記憶していきます。好きな食べ物やスポーツなど、その人に合った情報を自分でインターネットから収集して会話に活かしていけるのが、人工知能ロボットならではの能力なのです。

高羽:開発の過程では、技術者も介護施設に伺ってテストさせていただきました。モニターの方の反応はたいへん貴重で、パルロの声かけに対する利用者様の返事のされ方を観察して、声の大きさの設定などの参考にしています。こうした、現場の声を反映するというのは今もずっと続けていて、それがパルロの人気の原動力になっていると自負しています。あずみ苑様をはじめ、パルロを導入されている介護施設のスタッフの方々はよく、自身が開発者であるかのように熱心にパルロのことをお話しされます。普段からパルロに接していて気づいた点や意外な使い方、これから欲しい機能など介護現場からの声として届けてくださり、それが実際の開発にも反映されてきたことで、自分たちがパルロを進化させてきたという思いがあるからではないでしょうか。

また、それは当社がメーカーであり、販売者であり、現場での活用法を一緒に考えていくところまで全てをワンストップで行っていることも大きいでしょう。そのため、ある日、介護現場で当社の営業担当が教えてもらった素晴らしいヒントが、その日のうちに開発スタッフに伝えられてプログラムに組み込まれ、翌朝には配信されて現場のパルロに対応できている、ということもしばしばあるのです。このスピード感は、メーカーと販売が分かれている従来のロボット開発の環境では難しいことだと思います。

後編では、パルロが人気を得た理由や今後の展開についてお話しします。

(プロフィール)
富士ソフト株式会社
プロダクト・サービス事業本部
PALRO事業部
事業部長
武居伸一
1987年入社。システムエンジニア、営業管理職、マーケティング・企画を経て、2015年より現職。

富士ソフト株式会社
プロダクト・サービス事業本部
PALRO事業部フィールドセールス室
室長・シニアマスター
高羽俊行
2006年入社。システム開発の営業、ロボット事業の高齢者福祉施設向けモデル企画営業を経て、2015年より現職。高齢者福祉施設向けモデル企画検討中に、レクリエーション介護士資格を取得。

富士ソフト株式会社
1970 年創立の独立系IT ソリューションベンダー。
自動車・FA/OA・家電への組み込み系ソフトウェアの開発や、金融・製造・流通・文教分野における業務系システムの構築を行う。これらで培ったノウハウを活かし、コミュニケーションロボット「パルロ」などのプロダクト・サービスも展開中。
http://www.fsi.co.jp/

*役職名・部署名は取材時のものです。

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