フィリピンへの進出は若い労働力と消費意欲が魅力〜ASEANへの海外進出〜

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日本企業は安価な労働力を求めて、中国やタイなどに海外進出していました。しかし、人件費の高騰やカントリーリスクなどの理由から、チャイナプラスワン、タイプラスワンとして、他のASEAN諸国への海外進出も進んでいます。そんな国のひとつとして、日本企業の進出が盛んな国にフィリピンがあります。

日本企業の海外進出先としてのフィリピンの魅力

フィリピンは、GDP成長率が実質6.1%(2014年)と高水準で、今後も経済成長が見込める国です。その一方で、人件費は、中国やタイとの比較ではまだ低水準です。また、フィリピンの人口は、2015年の国勢調査によると約1億98万人で、人口が1億人を突破しました。年に約2%ずつ人口が増加しており、国民の平均年齢は約23歳です。製造業では数千人単位の人材を必要とすることから、若い労働力が豊富なことも魅力となり、日本企業のフィリピンへの進出が進んでいます。

立地の面から見ると、日本からフィリピンへの移動は、成田空港から約4時間、関西空港からは約3時間半と、ASEAN諸国の中でも短時間での移動が可能です。時差が1時間という点も、日本企業にとってビジネスのしやすさにつながっています。さらに、これまで日本政府や企業が行ってきた経済支援の影響もあり、親日国家であることもビジネスパートナーになりやすい要因です。

開発途上国への進出では、インフラ面が課題となりやすいのですが、フィリピンは比較的インフラが整っており、特に交通網の整備が着実に進められています。

一般的にフィリピン人の気質として、消費意欲が旺盛で、電化製品への関心が高いことも日本企業の進出のメリットとして挙げられます。首都マニラではスマートフォンを手にした若者が目立つといわれています。フィリピンへの海外進出では、製造拠点を置くという目的だけでなく、現地消費による新たなマーケットを獲得できることが魅力です。

また、フィリピンではフィリピノ語とともに英語が公用語のため、国民の約9割が英語を話すとされています。そのため、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)といわれる自社の業務外部委託にあたる領域では、コールセンターの拠点としても注目されています。

フィリピンに対する日本企業の海外進出は製造業が中心

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フィリピン日本人商工会議所の会員数は2015年9月現在で605となり、4年間で60以上の会員が増え、今も増加傾向にあります。また、帝国データバンクが発表した「ASEAN 進出企業実態調査」(2016年5月発表)によると、フィリピンに進出している日本企業は1344社でした。業種別の内訳は、製造業が542社と40.6%を占め、卸売業が308社で23.1%、サービス業が242社で18.1%と続いています。

業種をさらに細かく分類したデータでは、受託開発ソフトウェア業が52社と最も多く、電気機械器具卸売業と工業用プラスチック製品製造業がいずれも33社、自動車部品・付属品製造業が24社です。

2012年にユニクロが進出するなど、小売・サービス業の分野でもフィリピンへの関心が高まっていますが、日本企業によるフィリピンでの展開はまだまだ製造業が中心です。

商社の工業団地への出資で目立つプリンター関連企業の進出

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電気機器の中でも日本の大手企業の進出が目立つのは、プリンター関連の分野です。2011年以降、電気機器分野での直接投資が相次いで行われました。

セイコーエプソンは、2016年度までに子会社のEpson Precision (Philippines) Inc.に約123億円を投資しています。インクジェットプリンターとプロジェクターの生産拡大のための新工場を建設するためのもので、2017年春に稼働開始の予定です。新工場の屋根には約3000kWhの発電能力を有するメガソーラーを設置し、同社で使用する電力の半分を賄う計画となっています。セイコーエプソンでは、インクジェットプリンターとプロジェクターの生産拠点を既に中国とインドネシア、フィリピンに置いており、増産態勢を整えるための動きという位置づけです。従業員数は現状の約1万2500人から、2万人規模まで増やす予定で、現地での雇用の創出にも役立ちます。

ブラザー工業は、2012年に子会社として、BROTHER INDUSTRIES (PHILIPPINES) INC.を設立し、マニラ近郊のバタンガス州の工業団地にプリンターカートリッジの生産拠点を設けていました。2014年にはインクジェットプリンター生産のための第2工場を増設するなど、フィリピンでの生産を拡大しています。キヤノンも Canon Business Machines(Philippines) Inc.を設立し、2013年からバタンガス州の工業団地でレーザープリンターの生産を行っています。

プリンター関連以外の電気機器分野では、村田製作所や古河電工、五島電子といった企業がフィリピンに進出しています。

こうした電気機器関連をはじめ日本メーカーが進出しているのは、日系の大手商社が出資している工業団地です。住友商事が出資するファーストフィリピン工業団地には、キャノンやブラザー工業、村田製作所など、丸紅が出資するリマテクノロジーセンターには、エプソンやヤマハなどが入っています。パナソニックや富士通テン、テルモなどが入るラグナテクノパークは、三菱商事が出資しています。日系の商社が工業団地の運営に関わることで、日本のメーカーがよりスムーズに製造拠点を設置できる環境が整えられているのです。

日本企業によるフィリピンへの海外進出は製造拠点としての意味合いが大きいという現状がありますが、フィリピンは若年層中心の人口構成で生産人口が多く、消費意欲も高いため、新たな市場として期待されています。フィリピンは人口減少によるマーケットの縮小が課題となる日本にとって、海外進出先として大いに魅力ある国といえるでしょう。

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