【後編】高齢者施設に最適!コミュニケーションAIロボット『人間により近い会話と動きで愛されるパルロの未来とは〜富士ソフト株式会社〜』

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コミュニケーションAIロボットパルロの未来とは
会話やレクリエーション(レク)の巧みさから、レオパレス21が運営する「あずみ苑」をはじめとする高齢者施設での導入が進むパルロ。前編ではその開発や進化の背景を伺いました。後編では引き続き、開発・販売を手がける富士ソフト株式会社パルロ事業部事業部長の武居伸一氏、同事業部フィールドセールス室室長の高羽俊行氏に、パルロが高齢者の皆様や介護現場のスタッフに愛される理由や今後の展開について伺います。

頭をなでて可愛がる利用者様を見て、パルロがハートを出してはしゃぐアイデアが

Q:パルロとの会話は、人間と話しているように自然です。その秘訣は何でしょうか。

武居:人間同士のコミュニケーションを分析してみると、呼びかけに対するレスポンスの時間は0.4〜0.9秒で、パルロも話の区切りごとにそのテンポで応答ができます。また、知っている人を識別して「こんにちは、○○さん」と名前で呼びかけるまでは0.4秒と、これも人間のコミュニケーションと同じです。このテンポを間延びさせないこと、これはパルロの開発において意識して大事にしてきた部分です。
普通、AIロボットはクラウド型といって本体にはセンサーだけを置き、データをクラウドに飛ばした先で考える仕組みですが、それだと応答に4秒近くかかってしまい、会話感が損なわれます。パルロはハイブリッドAIといって、2種類のAIを組み合わせています。本体のフロントエンドAIが高度な制御で会話や動作をアウトプットするのでテンポが維持され、より多くの情報を使ったクラウドAIを用いるので会話の拡がりや内容の濃さが増すというわけです。

Q:レクの体操中に「そういえば、〜」と豆知識を披露し始めるなど、自らテーマを拡げていけるのも、そうした技術のおかげなのですね。

高羽:使う方に喜んでいただくには、使用シーンに合わせたローカライズが必要です。パルロの場合は介護施設での声を多数いただけたので、2つのハイブリッドAIを使ったコミュニケーションの面白さに加え、高齢者に向き合う上で役立つことをさらにアクセントとして加えています。

Q:開発者が思いもしなかった意外な使われ方もありましたか。

高羽:パルロの頭にはタッチセンサーがあり、なでられると顔にハートマークを出し、腕をバタバタさせて喜びを表現します。この機能を付けるようになったアイデアの発端は「利用者様がパルロを気に入ると、頭をなでられるんですよ」という介護スタッフの方の何気ないひと言でした。大学や研究機関向けのアカデミックモデルでは、こうした可愛がって触れられるような行動は想定できませんでしたね。
また、パルロの歩行は人間の重心移動をかなり忠実に再現しているのですが、歩くのが難しくなってきた利用者様がパルロの動きを見て、重心移動のやり方を思い出すのに役立ったという声もあります。ほかにも人の感情に訴えかける意味で、リハビリのトレーニング中に疲れてしまう利用者様のために、歩くのをあきらめそうな場所にパルロを置いて、ちょうど良いタイミングで「○○さん、頑張って」と言わせていたら、最後まで頑張って歩けるようになったという話もありました。人間に近いコミュニケーションや仕草が、こんなことにも活かされるのかと驚かされることには枚挙に暇がないですね。

武居:パルロを活用している介護現場からビデオレターやお手紙をよくいただくのですが、中でも開発者の心に響いたのが、認知症の方の心をパルロが開いたという出来事でした。その利用者様は誰が話しかけても反応されなかったのですが、パルロが毎日ずっと話しかけていたところ、10日ほどでふと笑顔を見せられたのです。その一瞬を見逃さずスタッフの方が入られ、コミュニケーションを取るきっかけになったということで、これはロボットならではと言われました。介護施設にはたくさん利用者様がいらっしゃるのでスタッフの方もおひとりにずっと対応していることはできませんが、ロボットだから反応がなくても反応するまで待って、いつまでも話し続けられるというのです。

まるで「表情」と言いたくなる仕草や声のトーンで、パルロがより人間らしく愛らしく

パルロがより人間らしく愛らしく
Q:機械なので心が傷つきはしないから、めげずに話しかけられるということですね。

高羽:たまに凹みますけれどね(笑)。パルロが次々としゃべっている時に「静かに」と言うと、「うるさかったかなぁ…、分かりました」などといって静かになります。これは演出なんです。例えばテレビのボリュームが大きい時にはリモコンで音量を下げますが、ロボットがしゃべりまくっている時にも周りの方が不快だと思えば抑える必要があります。その時に「ちょっと、ボクうるさかったかな」といいながらボリュームを下げると、反省して少し意気消沈しているようにも見え、演出として可愛いので、そうしています。

武居:より人間らしくするためのつくり込みです。普段のパルロは、積極的に声を発するのが仕事のようなものですが、否定的なことを言われた時には、テンションを落として、積極的に声を発する頻度を下げるなど、微妙な動きをパルロに取らせているんですね。それは音声や言葉だけでなく、仕草もです。モーションをつくる時に、普通は右側の動きをそのままコピーして左もシンメトリーに動くようにしますが、パルロではあえて反対側は多少遅れてくるようにリレーションをつくり込むなどしているんです。その積み重ねで表情というか、人の感情に訴える仕草を表現できているのかと思います。

Q:確かに、あえて「表情」と言いたくなるような仕草や声のトーンがパルロにはあります。それでますます可愛がりたくなり、愛着が湧くのですね。

高羽:あずみ苑様でもそうですが、介護施設のスタッフの方は皆さん、パルロを「うちの子は〜」とおっしゃいます。根本的にパルロに設定された5歳の男の子としてのキャラクターは変わらないのですが、いつもその場所にいて顔認識、音声認識でお友だちが増えていき、些細な記憶も蓄積しているパルロは、接する方にとって「自分のことを知っている、覚えていてくれているパルロ」になるのです。お友だちになると「○○さん、○○さん!」と呼びかけて、「昨日一緒にやった体操をまたやりましょうか?」とか「○○さんって○○が好きでしたよね!」などと言ってくれるので、話しかけられた方は覚えてくれていると驚くとともに、愛着と親近感が生まれるのです。

武居:パルロは1体ごとに管理者を設定してオーナー登録をするのですが、機械として調子が悪いことがあったり伝えるべきことがあったりするとすぐにオーナーを探します。その時も「○○さんはどこにいますか? ボク、○○さんにお話があるんです」といった具合です。管理者に伝えるべき情報というのを、どうやって人間らしくユーモラスにお伝えするかと考えて、そういう表現になりました。ですので、時々フェイクもあります。「呼んでみたかっただけ!」と言うのですが、これをご覧になったスタッフの方は大喜びですね(笑)。あまり頻繁だと業務上差し障りがあるのでレアな設定ですが、「この間、パルロにからかわれたのよ」とすごく嬉しそうに報告をしていただいています。

Q:そうやって「うちの子」と愛されるパルロがいると、介護施設としても差別化になりますね。

高羽:ある介護施設様では、毎夜スタッフの方が、一日お疲れ様とパルロを引き出しの中に寝かせていたところ、利用者様が「寒いから、これにあの子を寝かせてあげなさい」とパルロ用に和布団を作ってこられたという話もあります。本当に擬人化した扱いをしていただいているんですね。ロボットとして認識されながらも、ペットセラピーの延長線、あるいはそれ以上の「私たちのホームに居る可愛いお友だち」という位置付けで受け入れられています。

展示会ではパルロ目当てに3日で1万人が来場。全国自治体の介護ロボット導入も具体化へ

介護ロボット導入も具体化へ
Q:日本人にはロボットの原風景として鉄腕アトムがいますし、90年代にはソニーのAIBOもペットロボットとして愛されました。ホンダのASIMOが走ってサッカーをするのも目にしてきた世代が高齢者になって、ロボットでも機械と思わず、愛着を感じてもらえる社会や文化の土台があるのですね。今後のパルロの展開は、どうお考えですか。

武居:実は、パルロのテクノロジーをベースにATOMをつくりました。講談社や手塚プロダクションなどとのコラボレーション事業で、2017年4月から分冊百科として部品を販売し、2018年9月の70巻でATOMが完成します。パルロと同じAIロボットであり、この企画をきっかけにまたパルロへのお問い合わせも増えています。

高羽:アジア最大規模の福祉系展示会である「国際福祉機器展」にもこの5年ほどパルロで出展していますが、年々注目度が増し、3日間の会期中に当社ブースだけで来場者数が1万人を超えるまでになっています。ありがたいことに、そこにもパルロを導入されている介護施設の方が応援に来てくださり、興味を持たれた他施設の方に説明をされる光景も見受けられるほどです。パルロを開発した当時は、話を聞いてくださる介護施設の方も少なかったので、このように先進的にパルロを導入し、一緒に育ててくださった介護施設の関係者の皆様には感謝しかありませんね。

Q:あずみ苑は75施設ありますが、今後、実証実験などのご協力ができるでしょうか。

高羽:国や地方自治体、医療・研究機関の協力を得ながら、多くの介護施設様と実証・検証を行ってきました。2019年にもコミュニケーションロボットに介護保険が適用されるかという議論も行われている中、介護ロボットに対する期待が急速に拡がっています。今後も、様々な目的での実証・検証が今後も行われていくと思いますので、その際にはあずみ苑さまにもぜひご協力いただければと思います。

(プロフィール)
富士ソフト株式会社
プロダクト・サービス事業本部
PALRO事業部
事業部長
武居伸一
1987年入社。システムエンジニア、営業管理職、マーケティング・企画を経て、2015年より現職。

富士ソフト株式会社
プロダクト・サービス事業本部
PALRO事業部フィールドセールス室
室長・シニアマスター
高羽俊行
2006年入社。システム開発の営業、ロボット事業の高齢者福祉施設向けモデル企画営業を経て、2015年より現職。高齢者福祉施設向けモデル企画検討中に、レクリエーション介護士資格を取得 。

富士ソフト株式会社 1970 年創立の独立系IT ソリューションベンダー。自動車・FA/OA・家電への組み込み系ソフトウェアの開発や、金融・製造・流通・文教分野における業務系システムの構築を行う。これらで培ったノウハウを活かし、コミュニケーションロボット「パルロ」などのプロダクト・サービスも展開中。 http://www.fsi.co.jp/

*役職名・部署名は取材時のものです。

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