我輩はアンドロイド。人工知能により夏目漱石の授業が復活

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近代日本の文豪、夏目漱石の没後100年を記念し、二松学舎大学と大阪大学の石黒浩研究室が共同製作した漱石アンドロイド=人型ロボットが完成し、2016年12月に披露されました。この漱石アンドロイドは2017年10月10日に催される二松学舎大学の創立140周年記念式典で講演を行う予定もあります。
ますます進化する人工知能とロボティクスは、人と住まいの未来にどう関わっていくのでしょうか。

漱石が教鞭をとる姿が、アンドロイドでリアルに再現される

夏目漱石の小説『夢十夜』に「百年待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」というくだりがあります。今回の漱石アンドロイドの実現で、この台詞が現実になった訳ですが、人の姿で動き、語りかけてくれるだけでなく、この人工知能を備えた漱石先生は今後、大学・高校・中学での講義・授業用プログラムを搭載し、出張登壇も行う予定です。また、漱石作品の朗読や解説などをプログラミングすることで、読書への興味や国語力の向上という、教育的な活用も期待されているのです。

実は漱石が亡くなった時に、弟子たちによってデスマスクが採られており、それを基に今回のアンドロイドでは顔の骨格や肉づきを微細に再現することができました。体格も、実際に着用していた洋服や45歳当時に撮影された写真から割り出したそうです。ちなみに身長159センチ、体重は52〜53キロと今の時代からすると男性としては華奢だったため、アンドロイドのベースは女性用マネキンを用いたとのこと。こうした形態的な再現に加え、声や話し方についても、漱石の孫である漫画家・エッセイストの夏目房之介氏の協力で再現が試みられました。表情は、数多く書き記されている弟子たちの記録に基く想像からつくられたものです。明治時代ということで、音声や動画が残っていなかったための対応ですが、このプロセス自体も今後のロボティクス技術に活かされることでしょう。

人工知能による個別の対応が、コミュニケーションの満足を引き出す

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ロボティクス技術の製作面で中心となったのは、アンドロイド研究の権威である大阪大学の石黒浩特別教授です。
自身をコピーしたジェミノイドや落語家の桂米朝師匠、タレントのマツコ・デラックス氏を再現したアンドロイド製作で知られていますが、今回はすでに亡くなっていながらもイメージが国民的に定着している人物のアンドロイドということで、文学史的な研究や教育的な観点から意義深さがあります。石黒氏自身も「授業などを行っていく中で、子どもたちにどういった影響を与えていくのかが楽しみ」とコメントしています。

見た目、さらには漂う雰囲気も、圧倒的にリアルな存在感を持つ石黒氏製作の人工知能アンドロイドですが、一方で同氏は2016年12月に認知症高齢者のコミュニケーション力を引き出すことが期待される「テレノイド」を介護現場に送り出しています。こちらは赤ちゃんと同じサイズですが、最大の特徴は真っ白で無表情な顔です。タブレットの遠隔操作で動き、またオペレーターが話すとそれが子どもの声色になってテレノイドから発せられる仕組みです。開発目的は忙しい介護現場の労働力サポートではなく、あくまで目指すのは認知症の改善のためだとのこと。無表情という、性別も年齢も不詳のニュートラルな見かけのために、むしろ向かい合う高齢者の想像力を刺激して、海外での実証実験によると認知症行動の改善例も見られるようです。

オーダーメイドで細部までこだわり、親しい人や懐かしい人があたかもその場にいるかのように接してくれることで喜びをもたらすアンドロイドもいれば、テレノイドのように普及・汎用型でありながら、あえて不確定な記憶部分を補わせるといった効果をもたらすロボットもいます。いずれも鍵になるのは、人工知能によってリアルな対応が可能だということです。

学習機能や音声認識でますます身近な欠かせない存在に

現代の私たちの生活にはAI家電やスマートファクトリーなど、すでに様々な分野で人工知能が入り込んでいます。サービス業ではロボットによる接客場面も実際に街でも目にするようになってきました。チェックインなどフロント業務や客室への案内を全てロボットが行うホテルも登場してきています。技術による精度の差はあるものの、パターン化された行動のリピートに留まらず、学習機能によってパターンを外れたケースやバリエーションの習熟にも長けているのが、人工知能を搭載したロボットの特長なのです。

人間らしさを核にした人工知能がアンドロイドではありますが、それ以外に人型ではないロボットでも人工知能による音声認識や音声入力といった方法で、人間同士が接するように指示を出し、あるいは相手側からアドバイスや提案を受けられるようなテクノロジーも、世界では実用化されつつあります。人工知能やロボットが生活に便利やゆとりといったプラスアルファを与えるだけでなく、なくてはならない必需品、そして家族のような存在になる時代もそう遠くはないのかも知れません。

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