【前編】高齢者の財産を守る城南信用金庫の新たな取り組み「認知症高齢者向け口座開設」

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ますます高齢化に向かう日本社会。金融機関においても高齢者のためのサービスが次々と生まれていますが、城南信用金庫では新たに認知症の高齢者に向けた口座の仕組みがつくられました。
そこに至る背景やこれまでに行ってきた成年後見制度に対する取り組みなどを、現場で陣頭指揮を執ってきた、城南信用金庫の吉原毅顧問に伺います。

利用者の求めに応じて適宜行われてきたサービスが、制度化されて明確に

Q: 城南信用金庫では、高齢者向けのサービスが数多く行われているそうですね。

A: 「高齢者向け総合サポートサービス」という名称で、日々の生活費や財産管理、遺言・相続や資産継承などの心配事にお応えする、13のサービスを提供しています。パッケージということではなく、それぞれのサービスを必要に応じてご利用いただく形です。高齢化がたいへん急速に進んでいる中で、旧来はある意味、「あうんの呼吸」のように対応していたようなことについても、契約に基づくサービスとして提供することで、より安心してご利用いただけるようになっています。

店舗において、高齢でひとり暮らしの利用者様と会話をしていると、自分がもしもの際には資産についてどうすれば良いのだろうかといったご相談もよくいただくようになり、どなたに対しても説明しやすいように、明確にサービスとして打ち出すべきだと考えました。

Q:どのようなサービスがあるのですか。

A:当初は、「現金お届けサービス」「指定振込サービス」「代理人支払サービス」「見守り定期積金サービス」「リバースモーゲージサービス」「『任意後見制度』紹介サービス」の6つからスタートしました。
例えば「現金お届けサービス」であれば、外出が難しくなった利用者様のお宅に毎月1回、決められた日に一定額の現金をお届けするなどです。昔から年金が支給されると電話が掛かってきて営業の者に届けてほしいといったご要望を受けていたのですが、現金ですから、「まだ受け取っていない」などとトラブルになる可能性もあります。また、認知症などで理解が不明瞭な場合もあります。ですから、今はお届けしたら受領書をいただくような仕組みにしているのです。

そのほか、「代理人支払サービス」は口座名義の方のご家族などをあらかじめご登録いただければ、本人様が体調不良などでご来店が難しくても、登録された代理人の方と確認ができれば支払いなどの手続きを受け付けるといったサービスになっています。

実務に長け、顔の見える関係を築ける信用金庫OB・OGが成年後見人に

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Q:任意後見制度の紹介も、信用金庫で行っているのですね。

A:そうですね。店舗での手続きの際などに、認知症の気配を察知するような機会があります。
例えば、何度も通帳を失くしてしまう、印鑑を忘れるなどを繰り返すような場合には、ご家族やご親族に確認させていただいたりもします。しかし、ひとり暮らしや高齢のご夫婦だけの世帯の場合は対応していただくことも難しく、そのような場合に本人様の症状が悪化して理解力、判断力がないとなりますと、成年後見制度のご利用をおすすめするということになります。この取り組みをしっかり行っていくために、「しんきん成年後見サポート」という一般社団法人を、2015年1月に「さわやか」「芝」「湘南」「目黒」と当金庫の5つの信用金庫が母体となって設立しました。

Q:「しんきん成年後見サポート」は、どのように運営されているのですか。

A:成年後見業務においては、被後見人の通帳や印鑑、キャッシュカードの保管や預金の払い戻し、現金のお届けを後見人が行うのですが、従来はご親族や弁護士、司法書士などの個人により行われており、他者の目が入りにくいために、持ち逃げや使い込みなどの事件になることも残念ながらありました。それに、個人では自分の知識や経験を超える想定外の出来事への対応も難しく、また、365日24時間業務を行えるわけでもありません。

そこで私どもの法人では、法務省で長年活躍されてきた成年後見業務の専門家や自治体で社会福祉行政に携わってきた方などの助力を得ながら、各信用金庫のOB・OGに後見スタッフとして活動していただいているのです。65歳で定年を迎えても、長年にわたり地域に貢献してきた経験を有し、金融実務にも通じ、渉外・営業活動を通して親身の対応が自ずとできる方々です。民法・商法の知識は十分ですので、品川区社会福祉協議会の協力による養成講座を受講していただいた上で、後見スタッフとなってもらっています。

80歳でも生き生きと! 定年後も今までの知見や信頼をもとに、誰かのお役に立つ

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Q:後見スタッフの活動は、実際にはどのようなものなのでしょうか。

A:事故防止のためにもチームでの対応を前提としていますので、被後見人となる方のお宅にまず、男女2人の後見スタッフが面談に伺い、親しくなることから始めています。後は原則として月に1度訪問して必要な現金をお渡ししますが、その際には近況を聞いて困ったことがないかも伺い、担当のケアマネジャーやヘルパーなど介護職の方とも情報交換をしております。中には病院の精密検査に付き添ったり入院手続きをしたケースもありますし、菩提寺への永代供養の申込に同行したり、介護施設に転居するお手伝いまで行ったこともあるなど、家族のような親身なお世話を心掛けています。

このような対応ができるのはやはり、信用金庫という社会貢献性の高い金融機関である私どものDNAがなせる業なのかもしれません。最高齢の後見スタッフはなんと、御年80歳の女性です。その方が、ひと回り年齢が下の認知症の男性の世話を、生き生きとなさっており、「この年になっても人のお役に立てるのが嬉しい」と言っていらっしゃいます。助け合うことで人は喜びを感じられるものなのだと、改めて実感させられます。

(プロフィール)
城南信用金庫
顧問
吉原毅
1955年東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、1977年に城南信用金庫へ入職。
企画部時代には、同庫第3代理事長である小原鐵五郎の薫陶を受け、懸賞金付定期預金や乱数表付テレホンバンクなどの新商品を開発。
2010年、信用金庫の原点回帰を掲げて理事長就任後は、年収を支店長以下の1200万円に抑え、四権分立や現場による経営計画など異色の改革を断行。東北大震災以降は、被災地に対する支援活動にも尽力。「原発に頼らない安心できる社会へ」を宣言し、講演活動を行うとともに、金融を通じて自然エネルギーや省エネルギーを推進する。
2015年に、自ら制定した任期に則り、理事長を退任。現在、顧問として現場の指揮に当たっている。
2015年より、一般社団法人しんきん成年後見サポート理事長を務める。

城南信用金庫
http://www.jsbank.co.jp/
一般社団法人しんきん成年後見サポート
http://www.shinkin-support.jp/

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