【前編】日本からの留学生増大を目指す文科省の官民共同プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」とは

ソーシャル

関連キーワード
トビタテ!留学JAPAN

写真右は「トビタテ!留学JAPAN」プロジェクトディレクターの船橋力氏

日本政府は、2020年までに大学生12万人、高校生6万人の留学を目標に掲げています。2013年には文部科学省が初の官民協働留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」をスタートさせました。
レオパレス21もその支援企業として名を連ねています。このキャンペーンの背景にある日本の置かれた状況や、従来の海外留学支援制度との違いについて、「トビタテ!留学JAPAN」社会機運醸成PRチームリーダーである西川朋子氏(写真左)に伺いました。

2020年までに1万人の高校生、大学生を海外に送り込み、グローバル人材を創出

Q:「トビタテ!留学JAPAN」は、どのようなきっかけで始まったのですか。

A:2012年の世界経済フォーラム、いわゆるダボス会議において、当時の下村博文文部科学大臣と30〜40代のヤングリーダーに選ばれたメンバーが意見交換をした際、世界の同世代のリーダーたちのディスカッション力や教養、発信力に圧倒された経験から、日本でも若いうちから世界に向けた人材育成を図るべきではないかという話が出ました。
ちょうど2011年の「3.11」を経験した後で、日本の未来を真剣に考える機運が高まっており、産業界からの賛同も得て、「トビタテ!留学JAPAN」が構想されたのです。日本政府では海外留学生を2020年までに倍増させるという目標もあり、速やかに閣議決定を経て、2013年10月にプロジェクトが立ち上がりました。

Q:プログラムの概略を教えてください。

A:グローバル化に対応、牽引できる若者を輩出していく仕組みをつくろうという官民協働のキャンペーンで、その取り組みの核は2020年までに1万人の高校生、大学生を海外に送り込む「日本代表プログラム」という海外留学支援制度にあります。すでに大学生は第6期、高校生は第3期生までを送り出し、渡航実績も大学生2440人、高校1315人(2017年6月現在)となりました。そのほかに2015年度からは地域で形成された産官学コンソーシアムを母体として、現在20地域からも留学生を送り出しています。このように毎年1500人ずつ新たに送り出し、コースも新設して、1万人達成に向けて動いています。

「熱意」「独自性」「好奇心」による選考で、実践活動にトライ

トビタテ!留学JAPAN
Q:従来の海外留学支援制度との違いは何ですか。

A:まず、日本の産業界のニーズや要望を踏まえて始まったものであり、文部科学省のプロジェクトでありながら100%民間の寄附を財源としていることです。税金で運営される場合には成績や経済的支援が重視されるなど、制約が大きいのですが、民間の財源をベースにすることで、選考基準や留学の中身に幅を持たせることができ、例えば留学する本人が自分で見つけてきたインターン先に行くといったような、国費の奨学金では外れてしまうようなやり方も可能なんですね。公平性の観点は満たしながらも、価値基準は民間の支援企業の意向を汲んだところで運営できることがいちばんの特徴であり価値でしょう。

留学生の成長プロセスとして、各自で留学目的を具体的に設定でき、座学だけでなく実践活動を現地で行うことにより、修羅場とも言える切羽詰った状況をひとりで乗り越えるなど、日本にいてはできないような体験も可能です。帰国後にはそうした体験を留学生同士が報告会に持ち寄り、また支援企業様との接点を持つことで、日本社会へのフィードバックの機会が得られます。そして、こうした循環の定着、強化によって、派遣留学生である「トビタテ生」を中心としたコミュニティーの創出を目指しています。

Q:参加学生はどのように選考しているのですか。

A自ら作成した留学計画をエントリーシートで提出してもらい、まず書類選考を行います。その後の面接は「熱意」「独自性」「好奇心」を選考基準としています。いわゆる奨学金制度では学校の成績や語学力のスコアでまず判断されますが、それよりも、例えば自分で学生団体を立ち上げたなど、自主性、自立性のほうが重要です。「留学したい」というだけでは応募理由にはなりません。何がしたいか、何を得たいか、どういう人間になりたいかをプレゼンテーションしてもらっています。

学生には3つの役割を期待していて、まずは留学を通じて目いっぱい成長し、将来の「グローバルリーダー」を目指すこと。留学中には自らが「日本のアンバサダー」、つまり大使として日本の良さを現地で広めること。そして、留学生の後輩が増えていくように帰国後も「留学のエヴァンジェリスト」として伝道活動していくことです。事務局としては海外に行かせるだけではなくて、一人ひとりが設定した目的に向けてより意欲的に動けるよう支援し帰国後も留学生同士や支援企業様とのコミュニティーを醸成させています。より確実に日本の未来へつなげていけるよう、このムーヴメントを盛り上げ続けることが大切だと考えています。

地域活性やIT人材といった、よりテーマを先鋭にしたコースも登場

トビタテ!留学JAPAN
Q:コースも多様に設定されていますね。

A:参加者が最も多いのが「理系、複合・融合系人材コース」で、全体の4割強を占めます。医療から基礎研究、建築、統計学まで幅広いのですが、もともとあまり海外志向が強くない理系学生の視野を広げたいという産業界からのニーズによるものです。日本は理系科目の教育レベルが高く、また理系学生は就職環境でも特に売り手市場であることも影響してかあまり留学しないのですが、イノベーション人材の育成には海外と情報交換して世界の中で揉まれる経験が必要との考えから、力を入れてきた分野です。

ほかにも産業界のニーズから「新興国コース」「世界トップレベル大学等コース」が設けられ、そしてもうひとつ、スポーツや芸術、国際協力などジャンルにとらわれない「多様性人材コース」というラインアップで初年度の2014年はスタートしました。

翌年は新たに「地域人材コース」「高校生コース」を加えました。前者は、都道府県ないし政令指定都市相当規模以上の地方自治体に産官学コンソーシアムを結成していただき、グローバルな視点を持ちつつ地方で活躍できるグローカル人材を育てようというものです。地域ごとに運営され、私たち事務局は支援する形としています。例えば、沖縄県であれば、ITと物流と観光という地域のテーマに沿った留学プランを県が用意し、それに参加したい学生を募るわけです。沖縄観光を振興するヒントを得るために海外の旅行代理店でインターンを経験して、帰国後は県内の旅行会社で働くなど、学びや活動の目的が地域活性となります。このコースは、地域創生の解決策のひとつとして閣議決定された施策に基づくものです。「高校生コース」は、早くからの短期留学でまず視野を広げた後、大学生になってからより自分らしい留学をしてもらうための布石として考えています。

Q:コースも常に成長しているのですね。

A:2017年度には、もう少しテーマを絞ったコースも検討していて、特に支援企業様からのニーズが高いAIやプログラミング、サイバーセキュリティをはじめとする最先端エンジニア系の枠として8期募集、9期募集あわせて100名ほど募集しています。また、特定の国と日本の架け橋となる人材育成目的で大使館・企業・大学などのコンソーシアム結成を想定しています。

学生の関心も年々高まっており、ネット調査の結果では大学生の4割とされる留学に興味がある層においては約75%、興味がない層を含めても約35%の認知率です。「熱意」「独自性」「好奇心」という選考基準のハードルで質の高さはキープしつつ毎年仲間を増し続け、濃密なコミュニティーとして機能させていくことが大切だと考えています。

(プロフィール)
トビタテ!留学JAPAN
社会機運醸成PRチームリーダー
リーダー
西川朋子
大学卒業後、留学情報メディア運営会社の経営に携わった後、PR・マーケティング代理店トレンダーズ株式会社でプランナーとして新規事業立ち上げ等の経験を積む。ITベンチャー企業株式会社ココナラの広報を経て、2014年から「トビタテ!留学JAPAN」プロジェクトチームに参加。

トビタテ!留学JAPAN
http://www.tobitate.mext.go.jp/

その他のおすすめ記事

その他のソーシャルの記事

キーワード一覧

 ページトップ