【後編】首都圏では集合住宅も課題に!空き家問題の対策を詳しく学ぶ『空き家対策の5つの処方箋と解決に向けた提言〜オラガ総研株式会社〜』

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2017年7月17日に開催の「あなたの実家を『空き家』にしない対策セミナー」で行われた、オラガ総研株式会社代表取締役社長 牧野知弘氏によるセミナー「空き家のリスクと解決への処方箋」のレポート後編をお届けします。
前編では全国の空き家事情や空き家対策特措法について触れました。後編では、空き家問題の解決策を中心にレポートしていきます。

空き家対策の5つの処方箋

牧野氏が空き家対策の処方箋として示したものは5つあり、住まいの状況によって適した処方箋は異なります。まず、空き家を残す場合の「空き家管理」「有効利用」「賃貸・売却」、そして、空き家を解体する場合の「利活用」「売却」です。

「空き家管理」は様々な業者が参入しており、月1〜2回の巡回管理を依頼するだけであれば、料金は月額500円〜3000円程度です。しかし、郵便物の転送や草刈り、立木剪定などの外構部の管理、通気や通水、室内の点検、近隣状況報告などの建物内部管理を含めると、月額1万〜2万円掛かります。牧野氏は「所有者の管理責任を問われない程度の最低限の管理は必要」としつつも、維持管理にはお金が掛かることから、「いつまで管理を続けるか、出口までのロードマップが必要」と指摘しました。「空き家管理」をしている状態の場合、空き家が売れる状態や貸せる状態のまま、なるべく早期に「有効利用」や「賃貸」、「売却」といった対策の意思決定を行うことが大切です。

空き家の「有効活用」の例として挙げられたのは、地域コミュニティーの場や貧困層のための子ども食堂の場としての提供、また、シェアハウスや民泊による活用です。特に有効と目されるのは民泊で、利用が期待される訪日外国人の数は右肩上がりで増えています。民泊はこれまで、国家戦略特区での活用から始まり、政令の改正によって旅館業法上の簡易宿泊所が幅広く認められるようになり、民泊新法も成立しました。民泊新法が施行される2018年からは、自治体の裁量にもよりますが、年間の営業日数について最大180日という制限はあるものの、住宅専用地域でも民泊が解禁されます。ただし、マンションでの民泊運営は管理規約を確認する必要があります。牧野氏は「ホテルや旅館の少ない地方では、空き家の民泊は宿泊施設不足を補う切り札になる」と述べ、一戸建ての空き家にとって、民泊は有効な活用手段であるとしました。

また、空き家の「賃貸・売却」では、「空き家バンク」を設けて空き家の登録を促す自治体が増えていると言われています。しかし、牧野氏は「食材として調理できないレベルの空き家がほとんど」と問題点を指摘しました。空き家を「食材化」=「商品化」するためには、権利関係の整理や隣戸との境界の確定、リフォームの実施が必要なケースが多いとしています。

空き家を解体して、「子育て世代向けの民間賃貸住宅」などに利活用

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一方、空き家を解体する場合の「利活用」として挙げられたものは2つあります。
1つ目は子育て世代向けの民間賃貸住宅です。若年層では住宅を購入しない層が増加していますが、家族で暮らすための物件が見つかりにくいという声も多く、郊外型の家族向け民間アパートの需要は今後大きくなると見込まれます。ファミリー向け物件は中長期の居住による安定的な利回りを実現しやすいことがメリットであり、賃貸併用住宅にすることも考えられます。
2つ目は、高齢者向け「合築住宅」で、隣戸と連携して3軒分の住宅をまとめて合築して暮らすといったもので、医療機関もグループのほうがケアしやすいことから注目されているとしています。

牧野氏は「相続が発生する前に専門家に相談し、家の状況や市場価値を把握し、Xデーに備えて準備をしておくことが必要」と説きました。相続が起こった時に備えて、断捨離をしておく、境界線の確定や権利関係の整理をしておくことで、有効活用や売却といった手段をとることができます。

セミナーでは、牧野氏から空き家に対するソリューションを包括的に進める全国組織として、「空き家再生機構」設立の準備を進めていることにも触れられました。

所有権のソフトウェア化で空き家問題を解決

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かつて家族で住んでいた家は高齢者のひとり暮らしになり、さらには人口減少による「売れない」、「貸せない」、「住む予定がない」三重苦の「負動産」になる時代がやってきます。そこで、牧野氏は最後に、「所有権を溶かして高齢者施設の利用権に転換する仕組み」を提言しました。

空き家の所有権を高齢者施設の利用権に転換し、自治体は所有権を買い増ししていくことで、新たな高齢者施設をつくっていくものです。相続による高齢者施設の所有権が不要な若い人も、空き家となった家が「貸せない、売れない」という状態では大問題のため、利用権を流通マーケットで売却できるようにします。

牧野氏はこうした手法で「不動産の所有権をソフトウェア化していくことで空き家問題を地区ごとに解決することが可能」とし、新たな都市計画の作成も考えられるとしました。そして、実現のために必要なこととして、「日本人に根深くある所有権という概念の根本的な転換」を挙げています。

住まいの資産価値を維持するためには、空き家問題に対する備えを早めに進めておくことが大切です。5つの処方箋の内、どの方法をとるのが適切なのか判断するのは難しいので、早期に不動産の専門家に相談するようにしましょう。

<プロフィール>
オラガ総研株式会社
代表取締役社長
牧野知弘

1983年、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。
1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。
1989年、三井不動産株式会社入社。
レッツ事業企画部で資産有効活用の企画立案、不動産証券化業務などに従事した後、ビルディング営業部でアセットマネジメント業務などを担う。その後、ビルディング事業企画部で、数多くの不動産買収や開発、証券化業務を手掛ける。三井不動産グループのガーデンホテルズ社への出向では、ホテルリノベーションや経営企画、新規開発業務などに従事し、収益の改善に貢献する。

2005年、パシフィックマネジメント入社。
パシフィック・コマーシャル・インベストメント代表取締役に就任。
REIT史上2番目となる1917億円の資産規模で、史上最大規模の約1200億円の資金調達により、東京証券取引所REIT市場に上場。
2006年、日本コマーシャル投資法人執行役員に就任。
2009年、株式会社オフィス・牧野設立、代表取締役就任。オラガHSC株式会社設立、代表取締役就任。
2015年、オラガ総研株式会社設立、代表取締役就任。

http://www.oraga-hsc.com/

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