【前編】集合住宅のさらなる可能性! 設計事務所が勧める賃貸併用住宅の魅力〜株式会社STUDIO COVO〜

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賃貸併用住宅
土地という資産を効率良く活かす方法として、賃貸併用住宅があります。しかし、賃貸併用住宅には家賃収入を得られるといったメリットがある一方で、空室リスクなどのデメリットもあるとされています。
そこで、前編では賃貸併用住宅を多く手掛けている設計事務所「株式会社STUDIO COVO」の代表取締役である山口健太郎氏に、リスク回避も念頭に置いた賃貸併用住宅づくりのための注意点などを伺います。

ブームに乗って安易に考えるのではなく、「収支」ありきで緻密なプラン二ングを

Q:賃貸併用住宅はいつ頃から手掛けているのですか。

A:個人設計事務所を開業したのが2008年ですが、その頃から、土地を有効に活用できないかという相談が相次いで持ち込まれて手掛けるようになりました。賃貸併用住宅といった言い方もまだ定着していない頃で、大手ハウスメーカーでもごく一部が提唱していた程度でした。
当方への相談内容は、「自宅を建てるために土地を購入するが、広めにして賃貸部分を設けたい。その賃料がローン返済の助けになれば・・・」といったもので、それをうまく形にすることができましたので、設計事務所のホームページのほかに、賃貸併用住宅のための専用ホームページも作成しました。独立して3年くらいでしょうか。今では、当事務所で手掛ける案件の多くが賃貸併用住宅です。

Q:賃貸併用住宅のメリットは何でしょうか。

A:住宅を建てるのは一種の負債ですが、賃貸部分を併せ持てば、賃料が収益を上げてくれるので負債が軽減されますし、土地が広くて賃貸部分を多く持てればその分利益も多く見込めるというのが単純な図式です。最近は投資ブームもあって、ますます関心が高まっていますが、デメリットを先に説明するようにしています。
世の中に賃貸物件が数多く出回っている中で、入居率を安定して確保するのは至難の業です。また、住み始めてからもオーナー様自身が気を配って環境を整備したり、物件にこまめに手を入れたりと手が掛かるものです。建てれば毎月賃料が入ってくる、といった簡単なものでは決してありません。

Q:賃貸併用住宅を建てたいと希望するのは、どのような方ですか。

A:賃貸併用住宅といってもその目的は例えば、老後の生活資金を得るため、相続税の対策としてなど様々です。中でも多いのは住宅建設という負債を家賃収入により少しでも軽くしたいという方です。住宅を新築して月の返済が12万円かかるとして、賃貸併用住宅だと土地と建物が少し大きめになり負債が大きくなるけれど家賃収入を含めると返済は8万円程度で済むといったものです。自社で収支計算をしますので、その方の目的に合わせて様々なパターンでキャッシュフローを比較検討していただくことが可能です。
木造か鉄骨かRCかといった構造で耐用年数や減価償却期間も変わってくるので、35年間くらいの収支計画に落とし込んで、提案を重ねていきます。

Q:収支、ですか。

A:賃貸事業主になるわけですから、全ての価値観を収支に集約させることが大切です。
内装のフローリング選びでもキッチンのガスレンジのグレードでも、照明器具ひとつとっても、それを変えることで収支にどう影響するのかという基準に一元化しないと、プランがぶれてしまいます。デザイナーズ物件というと、真っ赤な扉といった視覚的なイメージが浮かぶかもしれませんが、赤くすることで賃料や収支がどう変わるのかを考えなければなりません。収入につながるのであれば多少設備費が上がったとしても提案しますし、収入につながらなければそれは無駄であり、やるべきではないという考えです。

マーケティングに沿って、入居者をイメージすることが大事

賃貸併用住宅
Q:賃貸併用住宅づくりが一般の住宅に比べて難しいのはどのような点ですか。

A:住宅部分と賃貸部分は相容れないところがあります。例えば、賃貸部分をつくることで防犯面は難しくなります。避難通路も用意しなければなりません。音の問題でもいろいろ干渉しあいます。自宅だけなら考えなくて済むこともクリアしていきながら、住宅部分と賃貸部分の両方で満足してもらえるような調整が必要ですから、物件規模の割にはものすごく手が掛かるのです。
入居者様をリアルに考えることが大事なのです。税金がいくらで入居率が何%でと机上で数字をこねくり回すだけではダメで、どういう人たちに入居してもらって、どういう暮らしをここで提案したいのかということをきちんと考えないと、良いものにはなっていきません。

Q:具体的にどのように進めていけば良いのでしょうか。

A:不動産のマーケティングが大事です。
例えば、賃貸用の部屋の平米数と近隣の賃貸物件の家賃をそれぞれ縦軸、横軸にとって落とし込んでみます。空室と入居部屋を色分けすれば、その地域における傾向が見てとれ、家賃設定の参考になります。
ほかにも、築年数と組み合わせてみたりします。古い物件でも入居が多いエリアであれば需要があるので埋まりやすいだろうとか、40〜50平米のファミリー向けだと新築よりむしろ若干古く家賃が手頃なほうが人気だとか、その地域の特性をつかんだ上で、どういった入居者様に向けた部屋をつくるのかを決めていくのです。学校や病院といった周辺施設も重要です。
そうやって、ワンルーム・1K・1DK・2LDK・3LDKというカテゴリーごとにそれぞれ単身者・学生・DINKS・若年ファミリーに対して◎・○・△・×の評価とその根拠を資料にまとめるなどして、オーナー様と詰めていくのです。

レンタブル比(収益部分の比率)を考えたら、スキップフロアのアイデアに

賃貸併用住宅
Q:最近の実例について紹介してください。

A:東京・千駄木で築50年の家を、お子さんふたりの独立を機に建て替えることになりました。オーナー様ご夫婦が1階にお住まいになる賃貸併用住宅にというお話です。所在地である文京区から台東区にかけての谷中・根津・千駄木の辺りは近頃「谷根千」と言って、下町風情の街におしゃれなカフェなどができ、特に女性に人気のエリアです。それで、賃貸部分に27平米の単身者向けと45平米の若年ファミリー向けを計5戸設けるプランにしました。ただ単身者向けは競合も多いので、安定した入居率を目指すために30〜40代の独身キャリアウーマンを想定した上で、生活へのこだわりを考え、27平米でもあえて12畳ほどのワンルームにしてさらに対面式キッチンと食器棚のスペースも確保したのです。
実際、竣工前にはまさに思い描いていたような方たちの入居が決まりました。不動産マーケティングをきちんと行い、どういう人たちにニーズがあるのかを捉えて、それに合った間取りやデザイン、家賃設定を進めていくことが大切なのです。

Q:この物件は外観も魅力ですね。ナチュラルかつスタイリッシュな雰囲気も好まれた要因でしょうか。

A:実は、デザイン面でのアピールはあまり考えていません。デザインで何とかしようとすると、表面的になってしまう気がします。この物件は耐火木造建築物でバルコニーに化粧材として木材を用いたのですが、アイデアの入り口はデザインではなくレンタブル比(収益部分の比率)をいかに上げるかでした。木造なので共用廊下をつくるとその部分の漏水リスクが高くなりますし、メンテナンスに費用が掛かりますから、なるべくそぎ落とそうとしたのです。
それで、階段の両側の踊り場を各戸の玄関に使うことを提案しました。1階のオーナー様宅の玄関部分から階段を半階分上った踊り場の反対側に1戸の玄関があります。また半階分上っていくと、オーナー様宅の上階にあるファミリータイプの部屋のバルコニーと玄関があり・・・という風に、スキップフロアになっているのです。これにより、お隣同士でも階段の分ほど離れるのでワンフロアが自分の部屋だけになり、しかもこの物件の場合は3面に窓を取れることもあって、プライベート感が一層高くなりました。
つまり、レンタブル比(収益部分の比率)を上げるために共用部を最低限必要な広さに抑え、各戸を半階分ずつ、ずらす構造にし、さらにそのずれをごまかさずにデザインに活かしたら、結果として特徴的な形になったというわけです。デッキ材を使って横のラインを強調するとともに、バルコニーに洗濯物を干せるよう、風は通るけれど視線は気にならないようにもなっています。1階の部屋も、道路より少し上にあるため外を歩く人と目が合わずに済むので、実は一番早くに入居申し込みがされたという副産物になりました。

(プロフィール)
株式会社STUDIO COVO(スタジオ コーヴォ)
代表取締役/一級建築士
山口健太郎
1996年日本大学理工学部建築学科卒業後、渡伊してトーニ・フォリーナ建築事務所に勤務。
運河をベースとした交通インフラを持つベネチアの街並みに魅了され、研さんを積む。
2001年帰国して設計事務所勤務。
2008年独立して株式会社STUDIO COVOを設立。

株式会社STUDIO COVO
http://studiocovo.com/

STUDIO COVO 資産を活かす賃貸併用住宅
http://www.covo-chintai.com/

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