【前編】労働時間等を管理する注目の理想の上司「イクボス」とは?働き方改革実現に必要なこと

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近年、大手企業に勤めていた社員が過労死した出来事を受け、人々の関心の目が日本における長時間労働の実態に集まっています。
政府も「働き方改革」実現のための取り組みを進めていくことを公表し、実際に働き方改革実現会議や総理と現場との意見交換会などを実施していますが、企業側からは「働き方改革としてどんなことを行えば良いのか」といった困惑の声も上がっているようです。
今回は、そんな「働き方改革」で注目を浴びている「イクボス」を推奨し、様々な事業に取り組んでいるNPO法人ファザーリング・ジャパンのファウンダーであり代表理事も務めている安藤哲也氏にお話をお聞きました。

これまでの日本企業に見られる長時間労働の実態と変化とは

Q:日本の長時間労働の実態は変わってきていると思いますか?

A:そうですね、人口が増えていた高度経済成長期のように、同じものをどんどんつくってガンガン売れていたという時代も確かにありましたが、その背景には男性たちの長時間労働があります。実際に「今から出張に行ってこい」と上司に言われて本当に行く部下がほとんどでしたし、その時代には長時間労働というものがひとつの勝ち方だったという事実も否めません。しかし、今は消費のあり方や人の価値観もどんどん変化してきているので、以前と同じ価値観のままの企業が生き残っていくのは難しいと思います。実際に2016年に起きた、大手企業に勤める社員が過労死した出来事を受けて、そういった昭和型の働き方やマネジメントでいいのだろうかという問題が起きています。

Q:長時間労働がなくなり、残業せずに帰れる社会になればどんなメリットがあると思いますか?

A:残業せずに帰宅できたり、男性も育休を十分に消化できたりといった社会になれば、それに伴うメリットは多々あると思います。例えば男性がベビーカーを押す機会が増えれば、男性が扱いやすいベビーカーを開発しようといったアイデアが出てくるでしょうし、女性がしっかりと働くことができるようになれば、女性ならではのアイデアも多く出てくるはずです。実際に今は女性が生み出したヒット商品もバンバン出てきていますしね。そういった意味でも、男女ともに育休明けに仕事に励むことができれば、さらにその業績がしっかり評価されることにつながるのではないかと思います。そして、そのために必要なのが「イクボス」なんです。

ファザーリング・ジャパンが掲げる「Fathering=父親であることを楽しもう」とは

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Q:ご自身が設立されたファザーリング・ジャパンが掲げている、「ファザーリング=父親であることを楽しもう」について教えてください。

A:現在、「結婚して子どもができたら仕事も子育ても両立しながら楽しんでいきたい」という考えを持つ若者が増えてきています。しかしその反面、男性の育児参加が十分にできていないのが実情です。と言いますのも、僕自身お父さんたちに働き方改革や子育ての楽しさを教えていますが、「土日は育児に取り組めているけれど平日は仕事が忙しくて・・・」という声が多く届いているという現実があるからです。

さらにお父さんたちからは、「育休どころか有休もとりづらい」という声も多く聞かれていました。実際に現段階で、2016年の日本の有給休暇の消化率は50%で、これは世界最下位の水準です。「休みづらい」「休めない」・・・こういった悩みを抱えている社員はたくさんいます。では、そんな有休を消化しにくいような職場をつくっているのは誰なのか、となると、それは上司の場合が多いですよね。「上司が休まないから休めない」「上司が帰らないから帰れない」・・・僕が部下だった頃もそうでした。そして、この傾向が強い上司というのが、いわゆる「育児をしなくても良かった世代」の人たちです。当時は給料の支給額も伸びていましたし、実際に奥さんが寿退社して専業主婦になるというケースが一般的でした。

しかし今の時代では、経済状況の変化や少子化問題などが相まって、昔のような生き方は難しくなりました。同じことを今しようと頑張ってしまうと、長時間労働しなければいけなかったり育児にも参加できず子どもと触れ合う時間や家族との時間が減ってしまったりして、結果的に離婚することになったというケースはたくさんあります。そうならないように、仕事と両立して育児や家事に関わっていき、「父親であることを楽しむ」ことが大切なのです。

なぜ今、男性の「働き方改革」が必要なのか?

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Q:「働き方改革」で重要視すべき点はどんなことでしょうか?

A:特に意識してほしいのが、現在「一人ひとりの働き改革」が問われているということです。例えば企業側が労働時間を減らしたり、有休を消化させたりといった取り組みを実施するだけでは、「働き方改革」は満足に進みません。長時間労働が問題視されているからといって、労働時間を減らすためにチームのリーダーに部下の労働時間を把握しておくよう指示するような管理職がいる企業は、この先、生き残っていけないと思います。

また、働く側も時間の余裕ができたからといって、スマホゲームに多くの時間を費やすのでは意味がありません。
できた時間をどれだけ有意義に使うかということが、「一人ひとりの働き方改革」につながってくるからです。例えば資格の勉強をしたり、自己研鑽したりも良いでしょうし、子どもがいるのであれば子育てや家事をすることも大切です。さらに、地域活動に参加することも将来的に自分のためになると思います。僕自身もPTA会長や学童保育クラブの会長などを務めたことがありますし、現在、ファザーリング・ジャパンの会員にはお子さんが通う学校のPTA会長をしている男性が40人ほどいます。

こういった地域活動は一見仕事とは無関係そうですが、実際には意見調整やチームへのアウトプットが求められるため、結果的にダイバーシティマネジメントのスキルアップにつながります。そのため僕は、お父さんたちに積極的にPTA会長に立候補するよう声を掛けているんです。今はまだそう多くはないにしても、今後PTA活動にも積極的に参加する男性がどんどん増えていくと思いますよ。

(プロフィール)
NPO法人ファザーリング・ジャパン
ファウンダー/代表理事
安藤哲也

1962年東京生まれ。
1985年明治大学卒業後、有紀書房に入社。
その後出版社、IT企業など9回の転職を経て、2006年に父親の子育て支援・自立支援事業を展開するNPO法人ファザーリング・ジャパンを設立。
2008年3月には『パパの極意 仕事も育児も楽しむ方法』(NHK出版)を出版、続いて同年12月に『この本よんで!papa’s絵本33』(小学館)、2009年には小崎恭弘氏共著『パパルール あなたの家族を101倍ハッピーにする本』(合同出版)、2017年に『「パパは大変」が「面白い」に変わる本』(扶桑社)を刊行。
2012年には社会的養護の拡充と児童虐待・DVの根絶を目的とするNPO法人タイガーマス基金を立ち上げ、代表理事に就任。
NHK第一ラジオ「ラジオビタミン」にてレギュラー出演を果たしているほか、読売新聞にてコラム「パパ入門」を執筆。二男一女の父。

http://fathering.jp/

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