【前編】フィンテックによるサプライチェーン改革! レオパレス21の競争力強化戦略とは『フィンテックが解決した「サプライチェーン・ファイナンス」とは』

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レオパレス21では2017年9月より「サプライチェーン・ファイナンス」を導入しました。
これにより、納入企業への入金サイトはこれまでの最長70日から、最短2日での現金化が可能となっています。IT技術を使った新たな金融サービスであるフィンテック(Fintech:Finance+Technology)の活用によるこのサービスを開発したTranzax株式会社代表取締役社長の小倉隆志氏(写真右)と、導入を推進したマーケット開発統括部戦略企画部の芦村健人部長(写真中央)、全社のフィンテック導入を担当するコーポレート業務推進第2部の外園真一郎部長(写真左)に伺います。

電子記録債権を用い、検収の2日後に工務店が資金化可能に

Q:「サプライチェーン・ファイナンス」を導入されたきっかけを教えてください。

芦村:2016年10月の日本経済新聞に、Tranzax社がベンチャーで初めて金融庁より電子債権記録業の指定を受け、中小企業の資金繰り支援となるサービスを開始するとありました。レオパレス21でも約1000社ものサプライヤーと取り引きがありますので、すぐに問い合わせました。その後、順調に調整が進み、2017年9月から導入しています。

Q:「サプライチェーン・ファイナンス」の概要を教えていただけますか。

小倉:電子記録債権という仕組みを使ったオリジナルの決済システムのようなもので、サプライヤーである受注企業が、発注企業からの代金受領を早期に行えるのが特徴です。通常の取り引きでは、納品物の検収後にその発注企業の支払いサイトに従って代金が支払われます。当社の仕組みでは、検収が行われて債権・債務が確定したら、当社が発注企業毎に設立するSPCという特別目的会社に支払先会社名や口座、金額、支払期日などの情報を債権明細データとして送信していただきます。当社はそのデータを電子記録債権化して、その債権と発注企業の信用力で銀行から低金利で資金調達します。その資金で受注企業に代金の支払いを行うので、検収が行われて債権・債務が確定してから最短2日で支払えるわけです。金利(年1%)が掛かりますが、受注企業からすれば、それを差し引いても納品後に速やかに現金化できるというのが大きなメリットです。

また、発注企業は、SPCに対して本来の支払期日に発注額を支払えば良いので、支払いのための振込手数料をまとめることで経費削減につながりますし、何より、早く現金化したいという受注企業側の声に応えることができます。SPCでは発注額を入金していただいたら、それを銀行からの借入返済に充てます。

受注先の多くを占める中小企業の大きな資金繰り支援に

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Q:電子記録債権を、大手発注企業の信用力で低利で現金化できるのが大きいですね。

小倉:その通りです。日本の金融における最大の問題は、中小企業の資金調達が困難な点にあります。中小企業向けの貸付残高のピークは1995年の約266兆円で、以来低迷を極め続け、2016年には約189兆円と3割近く減少しています。また貸付金利についても、大手企業は東京銀行間取引金利TIBORというレートが適用され、6ヵ月でも0.1%と、ほとんどゼロに近い水準で借り入れができますが、中小企業に対しては短期プライムレートを基準に各企業の信用状況によって上乗せされた金利での融資となります。この短期プライムレートが2008年のリーマンショックから下がっておらず、現在のところ年1.475%となっています。

つまり、アベノミクスの低金利政策の恩恵が中小企業には届かず、厳しい経営環境を強いられています。そこで、大手発注企業の信用力を活用して、受注先中小企業が低利で資金調達できるようにするのが、「サプライチェーン・ファイナンス」の主旨です。

Q:レオパレス21の立ち位置からするとどのようなメリットがありますか。

芦村:アパート・マンション建設に関わる工務店、資材納材店、リース会社などのサプライヤーは大切なステークホルダーです。そのため、当社の支払いサイトは最長でも70日と、業界でも良心的に設定してきました。それでも受注から納品までの工期は通常半年ほども掛かり、その間、そのプロジェクトからの収入がないままに資材や作業員を確保しなければならず、サプライヤーの多くを占める中小企業に対して大きな負担を強いる業界の構図となっていました。

検収が行われて債権・債務が確定してから最短2日で受注額を現金化できるのは、サプライヤー企業への大きな資金繰り支援となります。Tranzax社の手数料が1%ですので、サプライヤーに対する100万円の買掛金が70日後ではなく、2日後に99万8000円※に現金化できるわけです。資金繰り計画が大いに立てやすくなることでしょう。

また、建設業は人手不足の上に高齢化もあって、特殊技能を持った作業員の確保が難しい業界ですが、2020年の東京五輪を前にますます人材確保が難しくなっており、サプライヤーの確保は重要な経営課題のひとつです。そこで、運転資金の確保が容易になれば工務店の負担も軽減しますし、資金繰りが良くなればより良い作業員を確保できます。それはまた、優良な工務店がレオパレス21を選んでくださることにつながるでしょう。つまり、サプライヤー企業との関係強化とともに、サプライチェーン全体の競争力の向上にもなるのです。しかも、支払い期日はそのままに、サプライヤー企業の早期資金化ニーズに応えることができるのです。

※最大の支払いサイト70日の債権に掛かる金利(1%×70日÷365日)の負担分を差し引いた金額。

ステークホルダーの経営管理、業務改善を目指してフィンテック導入を

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Q:レオパレス21にも大きなメリットですね。

芦村:そのほか、支払い事務作業の合理化もメリットです。当社では買掛金支払いは賃貸事業部、請負事業部など事業部ごとに担当者が行っていました。買掛金の支払いデータをそれぞれ数十社分も作成して銀行に送り、最長70日後の着金を確認するといった作業ですね。それが今回、買掛金支払いをSPCに一元化することで、社内では買掛金明細データをSPCに転送するだけでよくなりました。買掛金に関する決済業務の一括アウトソーシングで、働き方改革による業務改善と生産性向上を目指す上でも、大いにプラスです。

しかも、振込手数料もサプライヤー各社ごとに支払っていたのが、一括してSPCに支払う1回分で済みます。メガバンクですと他行宛て電信振込が3万円以上で864円として、1000件で90万円近くもの経費削減効果が見込めることになります。

Q:電子記録債権を用いたフィンテックによって生み出されたサービスですが、レオパレス21ではこうした先進的なサービスの導入に積極的ですね。

外園:工務店などのサプライヤー企業をはじめとする取り引き企業やアパートのオーナー様など、当社のステークホルダーに対して、常により良いサービスを考えています。決済や経営管理などに関連する問題解決の方法は、フィンテック分野に多く存在しているため、結果的に先進的な取り組みにつながっていると言えます。

(プロフィール)
Tranzax株式会社
代表取締役社長
小倉 隆志
一橋大学卒業後、野村證券株式会社に入社。
金融法人部リレーションシップマネージャー、主計部経営計画担当者などを歴任。
2004年より株式会社エフエム東京執行役員経営企画局長として、モバイルIT上場企業の買収を実施。
2007年株式会社CSK-IS執行役員に就任し、福岡市ユビキタス特区のデジタル放送実証実験、電子記録債権に関する研究開発に取り組む。
2009年、Tranzax社の前身である株式会社日本電子記録債権研究所を設立、代表取締役に就任。

株式会社レオパレス21
マーケット開発統括部
戦略企画部長
芦村 健人
株式会社住友銀行(現、株式会社三井住友銀行)入行後、法人営業部門、企業金融部門、不動産ファイナンス部門に従事。
同行、法人業務部上席推進役、銀座法人一部長などを歴任。
2016年10月より現職。サプライチェーン・ファイナンスの導入を主導する。

株式会社レオパレス21
コーポレート業務推進統括部
コーポレート業務推進第2部
部長
外園 真一郎

Tranzax株式会社
http://www.tranzax.co.jp/index.html

株式会社レオパレス21
平成29年4月27日 ニュースリリース
http://www.leopalace21.co.jp/news/2017/0427_1941.html

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