【後編】集合住宅のさらなる可能性! 設計事務所が勧める賃貸併用住宅の魅力『ハウスメーカーと異なるこだわりとは〜株式会社STUDIO COVO〜』

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家賃収入を得ながら住まう賃貸併用住宅は資産の有効活用法としてますます注目されていますが、マーケティングで想定した入居者像に合わせて収支プランを幾重にも考えなければならないなど、注意すべき点があります。
後編では引き続き、賃貸併用住宅を数多く手掛けている設計事務所「株式会社STUDIO COVO」の代表取締役である山口健太郎氏に、設計事務所ならではの進め方のこだわりやメリットについて伺います。

全てのパターンのメリットとデメリット、さらに収支案でまず比較検討

Q:ターゲットとする入居者様に向けて設計プランを考えていくために、具体的にはどのような進め方をしているのですか。

A:土地の条件に基づいて考えられるプランとその収支案を10通り以上出して、オーナー様とともに考えていきます。パズルのようなもので、階段の向きや、外廊下か内廊下かなどのバリエーションを形にしてお見せするのです。オーナー様が納得することが大事なので、それぞれのプランにメリット、デメリットも提示して並立させます。

例えば、レンタブル比(収益部分の比率)を上げるために共用部を必要最低限にできるのがスキップフロアのメリットですが、デメリットとしては、構造的には少し負荷が掛かりやすいので構造材を太くする必要があることや、工務店の経験や技量が求められることがあります。そうやって比較検討していただくわけです。

Q:建物構造の違いもありますね。

A:RC(鉄筋コンクリート)・鉄骨造・軽量鉄骨・木造とそれぞれの特性がありますので、オーナー様にパターンをお見せしながら収支計算も行って、同時に考えていきます。価格は土地の大きさや地盤状況によって様々、数百〜数千万円かかる場合もあります。しかし木造で考えた場合、地盤に対して軽いのが特徴でコストが抑えられます。木は鉄より熱伝導率が低いので柱の部分の断熱性能も高いですし、リフォームしやすいのもメリットでしょう。遮音性能・耐火性能は木造のデメリットですが、こうした特性と実際の収支例を示して決めていただきます。

リスクを念頭に置きながら、厳しめの収支計画を改善させていく

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Q:収支計算を考える際の手順と中身を教えてください。

A:工事費を算出してそれに掛かる設計費・水道の負担金・地盤調査代・不動産取得税・設計費用・保存登記費用・抵当権設定費用など、これが事業費になります。そして、自己資金と借入金の割合をオーナー様の状況に合わせて計算し、借入の年数と金利を設定します。賃料はマーケティングに基づいた相場で考慮し、借入期間と空室率を設定します。1年目は満室として、2〜5年目、5〜10年目、10〜20年目、20年目以降と徐々に空室率を高くして空室リスクに備えて考えます。これらの35年間の累計とキャッシュフローを見るわけです。

収入部分には住宅・店舗・駐車場・共益費などがあって、空室率も見込んで営業収入を出します。支出部分は固定資産税・都市計画税などの税金や、火災保険・修繕費積み立て・不動産会社の管理委託費・住宅ローンの利息・減価償却費などですね。これらを相殺して、プラスになれば利益として所得税が掛かります。収入部分からこれらの税金、積立金、借り入れ返済などを引いた残りが、キャッシュフローとなります。

Q:かなり具体的なのですね。

A:場合によっては専用住宅として建てる際の試算も行って判断材料とすることもあります。この段階では収支をあえて厳しめに出していますが、賃貸併用住宅を希望されている方はオーナー業への憧れなどもあって、決意は固いことが多いですね。ですから、家賃を厳しめに設定してリスクを共有しながら、収支を改善できる方法をオーナー様と一緒に探ります。そうしたやり方を通して、個人設計事務所ですが6年間で約20棟、年に3棟くらいのペースで賃貸併用住宅を手掛けてきました。

収支・プラン・構造を一括して調整、検討できるのが設計事務所の特徴

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Q:ハウスメーカーと設計事務所の進め方に違いはありますか。

A:RC(鉄筋コンクリート)・鉄骨造・軽量鉄骨・木造、どの構造になるかは、ハウスメーカーの場合、ある程度会社ごとに決まっています。収支計算については外部のコンサルティング会社が担当することもあります。一方、当事務所では、近隣マーケティングに基づいてコンセプトをつくるところから始め、収支計算を全ての価値基準に置きますから、構造は何でも良いのです。構造によって収支は大きく変わってきますので、収支とプランと構造を三位一体で考え、外部には出さずに自分で調整しながらオーナー様と臨機応変に相談していきます。
また、設計事務所は独立した存在ですから、そこで作成したプランは複数の工務店に声を掛けて相見積もりを取ることも可能です。

Q:工務店をオープンに選べるわけですね。その際に注意点はありますか。

A:オーナー様の価値観によって、工務店との相性はあるでしょう。会社規模や営業担当が専任でいるかなどのほか、会社としての安心感を重視される方もいらっしゃいます。アフターケアや引渡し時の書類の緻密さなど信用面が重視されることもあります。

一方で、腕の良い大工のいる工務店は、技能もあって器量が良い。妥当な額になり、話も進みます。実際に会って人柄を見れば分かるというのが通用しそうであれば、引き合わせたりもします。オーナー様がそうしたお付き合いのできるタイプの方なのかが重要ですね。

Q:設計事務所に賃貸併用住宅を依頼するデメリットはありますか。

A:手を掛ける分、時間も掛かります。当事務所の場合、通常15回はオーナー様との打ち合わせを行います。ですから、すぐ契約して半年後には住んでいたいという方には向かないでしょう。ハウスメーカーであれば打ち合わせも3〜4回で済むでしょう。希望をある程度伝えれば、そのポイントは押さえて収支が合うようなプランを用意してもらえると思います。あまり大きなこだわりがなく、打ち合わせも煩わしいと考えられるタイプの方にはハウスメーカーのほうが向いているかもしれません。

Q:こだわり始めると、きりがなくなりそうですね。

A:そうですね、専用住宅でもそうですが、賃貸併用住宅ではさらに複雑になります。
自宅部分は徹底的にこだわっていただいて構いませんが、賃貸部分は収支で考えなければならないので、判断基準が全く異なります。フローリングは合板か無垢かといった選択も、入居率への影響で考えるわけです。小さなお子さんのいるファミリー層を想定するなら、後々張り替えが容易な樹脂性のPタイルなどの方が良いかもしれません。無駄なコストを掛けずに、いかに目指すターゲットに訴求できるか、なのです。

Q:賃貸は事業、というわけですね。

A:はい。しかし、賃貸併用住宅では自宅部分が賃貸部分に引っ張られて、おざなりになってしまいがちだという点に気をつけなければなりません。普通に自宅を建てるなら、風の流れ方や光の入り方、窓の配置など住み心地にこだわるでしょうが、賃貸併用住宅になった途端に、ペントハウスを自宅部分にして、後は内装でなどと単純に考えられてしまいます。

賃貸併用住宅であっても、自宅部分のクオリティは落としたくありません。採光や通風、窓から見える景色などを満足できるものにして形をつくり、そうしながら賃貸部分も事業として成り立たせるという順番です。

Q:今後、賃貸併用住宅の需要はどのように推移していくでしょうか。

A:少子化で人口減少とともに空き家も増えて、賃貸市場自体は縮小していくと思います。それでも一定期間賃貸に住む人はいるので、賃貸需要はなくならないのではないでしょうか。マーケティングに基づいて想定した入居者様に対して、良質なものを提供することが大切です。

条件の厳しそうな場所でも、可能性を引き出すことはできます。郊外ならガレージハウスに仕立てて、自動車やバイクを愛でながら暮らすことをコンセプトにしてみるなどですね。愛車を眺めながらお風呂を楽しめるとか、物件のアイデアは常に考えているんです。立地によっていろいろ提案できれば良いですね。賃貸併用住宅は、賃貸部分がある分、条件の掛け合わせが複雑になって大変ですけれども、常にフル回転で発想して、オーナー様と一緒にものすごく考えます。条件が似ていても同じ物件はふたつとありませんから、本当に面白いんです。

(プロフィール)
株式会社STUDIO COVO(スタジオ コーヴォ)
代表取締役/一級建築士
山口健太郎
1996年日本大学理工学部建築学科卒業後、渡伊してトーニ・フォリーナ建築事務所に勤務。
運河をベースとした交通インフラを持つベネチアの街並みに魅了され、研さんを積む。
2001年帰国して設計事務所勤務。
2008年独立して株式会社STUDIO COVOを設立。

株式会社STUDIO COVO
http://studiocovo.com/

STUDIO COVO 資産を活かす賃貸併用住宅
http://www.covo-chintai.com/

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