【後編】労働時間等を管理する注目の理想の上司「イクボス」とは?働き方改革実現に必要なこと

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近年、日本政府が取り組んでいるダイバーシティ実現のための「働き方改革」。レオパレス21でも着々と「働き方改革」は進められており、そのひとつとしてNPO法人ファザーリング・ジャパンが設立した「イクボス企業同盟」への加盟も果たしました。
後編では、NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也氏に、「イクボス」について詳しく伺いました。

「イクボス」とは何か、安藤氏が「イクボス」に着眼した理由について

Q:新しい理想の上司「イクボス」とはどのような上司のことをいうのでしょうか?

A:「イクボス」とは、職場において部下やスタッフのワークライフバランス(仕事と生活の両立)を考え、その人のキャリアや人生を応援しながらチームの生産性を向上させ、自身も仕事とプライベートを楽しむことができる上司のことです。
例えば、僕が以前企業に勤めていた頃、育休が明けて会社に戻ってきた女性社員が多くいました。彼女たちは子どもを保育園や幼稚園へ送り迎えしなければいけなかったため、時短で働いていました。そして、当時僕も同じく、子どもの送り迎えなどで早く退社したい時が多かったのです。そこで既婚者・独身者に関係なく、チーム全体が早く帰宅できるように仕事に取り組むようにしたところ、チームの生産性が上がり業績もアップしました。さらに僕は僕で、早く帰宅できる分、子育てに回す時間を増やすことができました。これが「イクボス」です。

Q:どうして「イクボス」に着目したのですか?

A:僕自身もプライベートでは3人の子どもの父親で、妻とは共働きをしています。
会社勤めをしていた時に子育ての時間が取れなくなり、働く時間を削って、その分を子育てに使うようにしました。そうしたら妻が残業できるようになり、僕自身も仕事と子育てを楽しめるようになったんです。そういった自分自身の経験から、「世の中のお父さんは同じような思いをしているのではないか」と考えるようになりました。そこから「Fathering=父親であることを楽しもう」というコンセプトのもと、仕事を諦めずに男性も育児を楽しめるような世界を目指そうと思い、NPO法人ファザーリング・ジャパンの設立に至りました。

「イクボス企業同盟」結成の背景と現段階での展開について

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Q:いろいろな場所で講演やセミナーを行っているそうですが。

A:そうですね。先に話した僕自身の体験から、「共働きをしながら夫婦ともに子育てを楽しめる社会」を思い描き、今まで200社以上もの企業で「イクボス」について講義をしたり、セミナーを行ったりしてきました。現在はセミナーや講演会などを全国各地で年間200本ほど行っており、今日もこれから講演に向かいます。大学でも10講義ほど受け持っていますよ。

Q:レオパレス21が加盟した「イクボス企業同盟」ではどんなことが行われているのでしょうか?

A:「イクボス企業同盟」では加盟企業を対象に2ヵ月に1回勉強会を開き、毎回3社程度が取り組みについて発表する場を設けています。「イクボス」にせよ「ダイバーシティ」にせよ、進んでいるところもあれば、まだこれからのところもあります。現在、「イクボス企業同盟」に加盟している企業は160社(2017年8月18日現在)、今年中には200社くらいに増える予定です。「イクボス企業同盟」では、先進的に「イクボス」養成に取り組んでいる企業について学ぶことができるほか、日頃からネットワークを通じて様々な企業の取り組みについて知ることが可能です。

「イクボス企業同盟」への加盟は無料ですが、有料で各種の研修も実施しています。管理職の意識改革を目的とした講演、課長や係長といった中間管理職向けのグループワークに加えて、さらに企業によって働き方改革が必要となる事例に沿って、例えば女性活躍や介護離職、男性の育児休暇など、様々なケースに応じたプログラムを提供しています。

現状での「イクボス」の浸透状況と将来の展望について

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Q:2010年に「イクメン」という言葉が流行語となりましたが、何か変化は見られましたか?

A:男性の育児が社会化してきましたね。以前は「働いているから育児はしない」という男性の主張がまかり通っていましたが、現在の30代ぐらいの男性には「働いているから育児はしない」と言える選択肢はもうなくなったと思います。なぜなら女性たちの多くも働いている上、同じ程度の給料は稼げるのですから、家事や育児を女性ひとりで行うという必然性がなくなったからです。もっと言ってしまうと、家事や育児をしない男性と結婚してくれる女性はいないと思います。なのでわが家では息子たちに対して、家事や育児はしっかりとするように言っていますよ。

Q:現在の「イクボス」の浸透状況と今後の予測を教えてください。

A:ちょうど3年ぐらい前に安倍政権が「女性活躍推進」を取り上げ始めました。そして、去年頃から「働き方改革」の需要が一気に高まってきています。昨今では大企業の勤務実態も問題視され、メディアでもクローズアップされています。そういったこともあり、「イクボス」への興味もかなり広がってきていると実感しています。

3年後は東京の企業で「イクボス」を知らないところはなくなると思いますよ。しかし、「イクボス」の導入をするかしないかは依然として温度差があるでしょうし、地方の企業への浸透にはまだ時間が掛かると思います。

それでも「イクボス」の必要性は今後、より高まっていくことが予測されます。なぜなら、これから就職するであろう今の大学生は、昨今の過労死事件などがあったためか、「働きやすさ」を重視しているからです。これは、僕たちの世代が就職先として魅力に感じていた企業のブランドや初任給の高さ、安定性などとは全く異なります。

このような変化の背景には、若者が抱いている「これからどうなるのか分からない」といった未来への漠然とした不安感もあるでしょうし、一人暮らしではなく自宅から会社に通う若者が増えていることもあると思います。現在は「早く帰れる」「有休をしっかりと消化できる」といった条件を満たしている働きやすい企業への関心が集まってきているのです。実際に「イクボス企業同盟」に加盟している企業も優秀な若者を採用するために「イクボス」の養成や「働き方改革」に力を入れています。

Q:「イクボス」が増えることで社会はどんな風に変わっていくと思いますか?

A:そもそも僕たちが活動していなくても、「働き方改革」は起こっていました。
2025年には団塊の世代と呼ばれる人々が75歳を迎え、その後は大介護時代が到来するでしょう。そうなると介護に追われる社員も増えてくるでしょうし、今でも週末に実家へ介護に行き、月曜には会社へ出勤するという人は実際に少なからずいます。そういう社会になった時に、介護をしながら働き続けることができる企業は必要ですし、そのためにはダイバーシティ実現のための取り組みが不可欠になると言えるでしょう。さらに「ケアメン=介護をする男性」をマネジメントするのに必要なものは何か、となるとそれはやはり「イクボス」なのだと思います。2017年3月に「イクボス企業同盟」に加盟したレオパレス21には、多様な人材の活躍を目指す時代なので、今後も一層、ワークライフバランスの実現と、男性女性ともに働きやすく、働きがいのある職場環境を目指していただきたい。そして、イクメンを積極的に支援する理想の上司「イクボス」の育成・向上に努めてもらいたいと思っています。

(プロフィール)
NPO法人ファザーリング・ジャパン
ファウンダー/代表理事
安藤哲也

1962年東京生まれ。
1985年明治大学卒業後、有紀書房に入社。
その後出版社、IT企業など9回の転職を経て、2006年に父親の子育て支援・自立支援事業を展開するNPO法人ファザーリングジャパンを設立。
2008年3月には『パパの極意 仕事も育児も楽しむ方法』(NHK出版)を出版、続いて同年12月に『この本よんで!papas絵本33』(小学館)、2009年には小崎恭弘氏共著『パパルール あなたの家族を101倍ハッピーにする本』(合同出版)、2017年に『「パパは大変」が「面白い」に変わる本』(扶桑社)を刊行。
2012年には社会的養護の拡充と児童虐待・DVの根絶を目的とするNPO法人タイガーマス基金を立ち上げ、代表理事に就任。
NHK第一ラジオ「ラジオビタミン」にてレギュラー出演を果たしているほか、読売新聞にてコラム「パパ入門」を執筆。二男一女の父。

http://fathering.jp/

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