AI(人工知能)で進化する自動ブレーキの普及で実現する交通の未来とは

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2020年までに国内自動車メーカーの新車に自動ブレーキを搭載するための体制が整えられており、今後自動車の自動ブレーキが急速に普及していくと見込まれています。
これからの高齢化時代、高齢者の運転中の誤操作などによる自動車事故の増加事故が懸念されていますが、自動ブレーキの普及は安全な車社会の実現に貢献することができるのでしょうか。自動ブレーキの普及によるメリットや課題などを調査しました。

アクセル・ブレーキ踏み間違いに対する懸念から「サポカー」発想へ

2017年に入り政府は、自動ブレーキを搭載する「『安全運転サポート車』の普及啓発に関する関係省庁副大臣等会議」を随時開催し、4月には中間取りまとめを発表しました。そこには75歳以上の運転者が関係する死亡事故の内、正面衝突・人対車両・追突等が全体の約7割に及び、またブレーキとアクセルの踏み間違いを原因とする死亡事故も75歳未満の運転者に比べて数段に多いとあり、そのため2017・2018年度を「安全運転サポート車」を普及啓発の重点期間とする内容が盛り込まれています。さらに、全自動ブレーキは高齢者だけでなく全ての運転者の安全に役立つものであるため、その搭載車全般を「セーフティ・サポートカー」(通称「サポカー」)として広く普及させるとし、同時に事故実態や利用目的に応じて設定された、ワイド・ベーシック+・ベーシック3段階のコンセプト「セーフティ・サポートカーS」(通称「サポカーS」)を発表しています。

その内訳は、ブレーキ・アクセルの踏み間違い防止に効果が見込まれるペダル踏み間違い時加速抑制装置に加え、1.ベーシックは時速30キロ以下の低速における対車両自動ブレーキ、2.ベーシック+は速度を問わない対車両自動ブレーキを搭載、3.ワイドは対歩行者に対する自動ブレーキとともに車線逸脱警報、自動切替型前照灯などの先進ライトを搭載したものと定義づけられました。これによりユーザーは各車種の機能が比較検討しやすくなり、自動車メーカーもより高いランクに該当するため標準装備化や技術開発を一層加速させることとなるでしょう。

自動ブレーキの体験会開催や保険料割引が後押しに

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「サポカー」・「サポカーS」の普及に向けては、JAF(日本自動車連盟)のアンケートで70歳以上の9割以上が「自動車に関する様々な先進技術について内容を知りたい」と答え、過半数が先進安全技術を装備した自動車の購入に当たっては「試乗して機能を体験してから考えたい」と答えていることから、自動車教習所などにおける試乗会といった体験機会を増やすとしています。実際、6月にはロゴマークも公募策定され、各自動車メーカーも店舗での試乗イベントを、自動ブレーキなどの安全装備体験会として広報宣伝しています。

さらに、任意自動車保険でも自動ブレーキ搭載の自家用車につき、保険金の支払いに充当される純保険料の参考純率を2018年1月以降、9%割り引くことが決まっています。これは各損害保険会社が保険料率を算定する際に参考とするものですが、今後、ユーザーが支払う自動車保険の保険料に反映されることとなります。順次割り引きが適用されていく見込みであり、自動ブレーキの認知や普及の後押しにもつながることでしょう。

国内乗用車メーカーにおける自動ブレーキの新車搭載率は、2015年時点で45.5%と5割に達していませんが、「サポカー」の普及啓発を促すことで、2020年までに新車の9割以上への自動ブレーキ搭載を目指しています。それは全乗用車の約3割に当たり、その後も新車への買い替えによってさらに自動ブレーキの普及が進むことになると思われます。また、メーカー各社もブレーキ性能向上に取り組み、2020年までに新車に搭載される自動ブレーキのほとんどが歩行者の検知が可能なものとなる見通しです。

自動ブレーキの効果については、スバルでは同社の運転支援システム、アイサイト搭載車において追突事故が84%、歩行者事故も49%発生率が減ったと発表しています。アイサイトは区画線や先行車を認識するステアリング制御といった安全機能も含まれ、自動ブレーキの有効性の証明には十分と思われます。自動ブレーキを備えていれば少なくとも、アクセル・ブレーキの誤操作による事故の防止・軽減につながりますし、自動ブレーキ搭載車に対する認識が高まることで、誤操作する可能性の高い高齢者が非搭載車に乗らなくなることも見込まれます。

各社で差がある自動ブレーキ機能を過信しすぎない

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自動ブレーキを普及させる際の注意点は何でしょうか。
ひとつには、こうした運転支援機能の安全性を過信しないことが挙げられます。正しく運転すれば高い安全性を発揮するものの、条件によっては作動しない場合があることを運転者は理解していなければなりません。運転中に「自動的に止まるから」と、周囲への注意を怠るのは危険です。時速30キロ以下でしか機能しない自動ブレーキであれば、急に踏み込んだアクセルには反応できないかもしれません。また、対車両の自動ブレーキでは歩行者の飛び出しなどには対処できない場合も考えられるでしょう。対歩行者自動ブレーキ搭載車は咄嗟に止まることができても、後続車に追突される可能性もあるのです。こうした自動ブレーキ推進の流れの中、トラックやバスなどの大型貨物車については、2014年11月から新型車への搭載が義務づけられました。さらに、2017年9月以降には継続生産車への搭載も義務化となる予定です。

現在、AIによる自動運転技術の開発が自動車メーカーのみならず、グーグルなどIT企業でも積極的に進められていますが、その中で、自動ブレーキ機能とも連動した高度な安全性能が自動運転車の実用化には必要不可欠と考えられます。乗車中の負担軽減は大きな目標ですが、安全の担保を何より徹底的に実現してもらいたいものです。

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