集合型住宅が増えるパリで、賃貸併用住宅への関心高まる

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フランス・パリでは多くの人がアパルトマンと呼ばれる賃貸の集合住宅に暮らしています。
2008年における東京都の持ち家率が44.6%であるのに対し、パリの持ち家率は30%を下回っています。パリでアパルトマンに暮らすというと素敵な響きが感じられるものですが、賃貸の住まいに暮らすパリジャン、パリジェンヌの中には家を持ちたいと考えている人もいます。そして、近年パリで賃貸、あるいは販売される集合住宅では、ソーシャル・ミックスを推進するための保育園併設型集合住宅や賃貸併用住宅が増えてきています。
そこで今回はパリにおけるソーシャル・ミックスと住宅事情について紹介します。

パリの持ち家率はなぜ低いのか

パリで持ち家率が低い主な原因は以下の2つです。

・学生や外国人といった短期滞在の人が多い
・不動産価格の上昇

花の都パリは多くの人の憧れですが、その分、短期滞在者も非常に多く、そうした人々はいずれパリを離れます。そのため賃貸住宅に対するニーズが高いのです。またパリでは2000年から2008年にかけて不動産価格が急激に上昇しました。2008年のリーマンショックを機に不動産価格は一度下降しましたが、その後再び上昇を続け、2014年の不動産価格は2000年当時の約3倍となっています。
このようにパリでは不動産価格の上昇により家を持ちたくても持てない人が増えているのです。

パリにおけるソーシャル・ミックス

ソーシャル・ミックスとは様々な階層の人がひとつの地域に居住することを理想とする都市計画上の概念であり、1970年代にアメリカで注目されるようになったものです。
1990年以降、低所得者層が集まる地域における犯罪率・失業率の上昇が社会問題として顕在化し、それを改善するためにソーシャル・ミックスが取り入れられるようになりました。ソーシャル・ミックスが実現すると、様々な階層の人が同じ地域で暮らすようになります。その中には高所得者もいれば低所得者もいます。その結果、中高所得者層の規範意識が低所得者層に浸透し、犯罪率・失業率の低下が期待できるのです。

ソーシャル・ミックスの実現のためには、パリにおける各地区で不動産価格に大きな開きがあってはいけません。どの地区においても、高所得者のニーズを満たす住宅と低所得者のニーズを満たす住宅が共に存在しなければならないのです。パリではソーシャル・ミックスを実現する取り組みが推進されており、その中で幅広い階層の人々のニーズに応える多種多様な集合住宅が生まれています。

パリで見られる保育園併設型集合住宅

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近年、パリでは保育園併設型集合住宅が増えています。フランスの女性は出産後もすぐに仕事に復帰することが多く、0歳児であっても保育園に預けられることが多くなります。そのような場合に、集合住宅に保育園が併設されていると母親としては大変に便利です。
また、パリにおいても昨今の日本と同じような保育園施設の不足の問題があります。そのため集合住宅の一部を保育園とする併設型の集合住宅は、パリの保育園不足の問題を解決する可能性を持っています。

保育園だけでなく、高齢者向け施設や図書館、病院、遊技場などを併設する大型の複合型集合住宅も増えています。保育園、高齢者向け施設が併設された集合住宅には自ずと幅広い年齢層の人が集まります。また、集合住宅の部屋タイプも均一ではなく、ワンルームのものから複数の部屋を備えたものまでひとつの集合住宅内に作られるケースが多く見られます。

その結果、異なる階層の人々のみならず、異なる年齢層の人々も集まる集合住宅には、パリで暮らして60年という老人と、短期滞在者である外国人が同じ場所に住むことになるのですから、まさにソーシャル・ミックスの実現へ一歩近づくのです。さらにこれらの集合住宅と並行して、賃貸併用住宅も増えてきています。これは購入した住宅の一部を賃貸居住者用として貸し出すことを前提とした住宅です。家の購入費を賃貸収入で賄っていくことができる点に大きな特徴があります。

複合型集合住宅が増える背景

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人々が必要とする施設を1ヵ所にまとめた複合型集合住宅が増えている背景には、ソーシャル・ミックスの実現とともに市民の住環境の改善を推進する目的があります。フランスにおいて家には「資産」としての側面と、人が健康で文化的な最低限度の生活を送る「安全な場所」としての側面があります。そのため政府が積極的に住宅問題を改善する取り組みを進め、多くの人々に安全、快適な住環境を提供しようとしているのです。

複合型集合住宅の普及により、幅広い人々のニーズを満たす住まいが提供されるようになると、パリにおける持ち家率が低いといった住宅事情も変わってくるかもしれません。複合型集合住宅は、パリに住む多様な人々に安全、快適で、しかも多様性に触れる機会のある住環境を提供することにつながる大きな可能性を秘めているのです。


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