待機児童をなくすには。待機児童問題の現状と対策について

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「今は夫婦2人で働いているけれど将来は子どもが欲しい」
「現在子育て中だけどもう少し子どもが大きくなったら働きたい」

今の日本社会ではそんな風に希望する女性が増えています。しかし現在、こうした社会進出に積極的な女性を不安にさせる要因のひとつとして考えられるのが「待機児童問題」です。最近では、30ヵ所以上の保育園に落ちてしまった・せっかく保育施設が見つかっても家から離れているので通えない、という人たちも大勢いると報道され、世間の話題に上っています。

2017年4月1日時点で、認可保育所に入れない待機児童は全国で2万6081人いるとのことです(厚生労働省資料)。国の対応として児童の受け皿となる施設を大幅に整備したのですが、今のところ徐々に待機児童が増える結果となっています。

子どもを産んでこれから働きたいと考えているお母さんたちや、これから子どもを産みたいと考えている女性にとって、これらは大きな障害となるだけでなく、それが原因で子どもを安心して産めなくなってしまう家庭もあります。子どもが少なくなれば当然、将来働き手となる国民が減っていくことになり、このままでは国家の衰退にもつながってしまいかねません。

我々はこの問題が起こる原因を知り、国や自治体はきちんとした対策を講じているのか、またその対策は問題を解決する正しい方向へ向かっているのかをきちんと検討する必要があります。まずは待機児童について正確な認識を持ち、そもそもなぜこのような問題が起きているのかを探っていきます。

なぜ待機児童が増えるのか? 

待機児童とは、子どもを育てている人たちが子どもを預かってくれる保育施設に入所希望を出しても、その施設が満員で入所することができず入所待ちの状態になっている児童のことを言います。

今の日本の状況を見ていると、「そもそも子どもが少ないのだから待機児童は現れないのでは?」と感じる方もいると思います。少子化の日本で待機児童が現れる理由はいくつか挙げられます。例えば「社会進出する女性の増加」「共働き夫婦の増加」などです。

不景気により、出産を機に退職するよりも出産後も働くという人が増えています。そのため、子どもを誰かに預けたいと考えることは必然です。また、国民的アニメの家庭のような核家族が増え、子どもを親世代に預けることができなくなってしまったことも理由のひとつです。

このような背景から子どもを保育施設に預けなければ働くことができない家庭が増えているので、保育施設を必要とする世帯も同様に増え続けています。しかし、肝心の保育施設や保育施設で働く保育士が不足しているので、既存の保育施設では十分な数の子どもを受け入れることができずに待機児童が増えてしまうという社会問題が起きているのです。

保育士が足りないのが問題?

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保育士が足りていないのなら、保育施設を多くつくり保育士を増やせばいいじゃないかと考える人もいますが、この問題はそんなに単純ではありません。

実は、保育士の資格を所持しているのに保育士として働いていない、潜在保育士と言われる人たちが今の日本には2015年の時点で約76万人いるとされています。ではなぜ保育士の資格を持ちながら保育士として働いていないのでしょうか。理由として単に、労働環境・業務内容がハード過ぎる、労働に見合う賃金を貰えないということも挙げられます。

保育施設は、早期保育や延長保育など、世の中のニーズに応えるために長時間労働やサービス残業・遅番早番など勤務体制の変更といった対応をせざるを得ない状況に置かれ、そうしたことが積み重なり退職者が増えていき、今度は残った人員で現状の対応をすることでより負担が増し、さらに人が辞めていくという負のスパイラルが起き続けています。

政府も保育士を確保するために賃金の引上げを行っており、2017年には、経験7年以上の中堅の保育士約10万人に「副主任保育士」「専門リーダー」といった役職をつけ、月の賃金に4万円上乗せするという試みを行っています。経験3年以上の保育士についても、「職務分野別リーダー」という役職をつけ、研修を修了したことを要件に、月の賃金に5000円上乗せするほか、保育士全職員の賃金も2%(月6000円ほど)アップしました。しかし、それでも他業種の平均賃金に比べて月の賃金が約10万円も低い状態のため、保育士が増加していくかどうかは疑問です。それらの声を受け、政府はさらに2019年10月の消費税10%の引上げ増収分を財源とした保育士の処遇改善も発表しており、どのような内容になるか注目したいところです。

待機児童ゼロを目指す国の対策

待機児童
政府は保育士の処遇改善以外にも待機児童問題への対策を打ち出しており、2013年に発表した「待機児童解消加速化プラン」では、下記の項目を5本の柱とした地方自治体への支援を行いました。

・賃貸形式や国有地を活用した保育施設の整備
・保育士の確保
・小規模保育事業など新制度の採用
・認可外保育施設の支援
・事業内保育施設への支援

これらの支援を行うことで、2017年末までに約50万人の保育の受け皿を確保し、待機児童ゼロを目指していましたが、その後も待機児童数は増加。目標を3年延ばして2020年末までにすると発表しました。

さらに、2017年6月に新たな対策として「子育て安心プラン」を提案。待機児童解消に必要な受け皿約22万人分の予算を2018年から2019年末の2年間で確保し、遅くとも2020年末までの3年間で全国の待機児童を解消すると説明しました。また、2018年から2022年までの5年間で女性就業率80%に対応できる、約32万人分の受け皿を整備し、30〜40代の女性の就労率が低くなっている「M字カーブ」も解消するとのことです。

ただし、野村総合研究所が2017年5月に発表したレポートによると、2020年までに整備が必要な保育の受け皿は、実際には88.6万人分が必要と予測しています。政府が発表した受け皿、32万人との間には数値に大きな開きがあり、2020年末までに待機児童ゼロが達成できるのかどうかに不安が残ります。

このように、政府でも待機児童を解消するための対策をいくつも行っていますが、後手に回っている印象はぬぐえません。今、待機児童問題に直面している方は、自ら何らかの対策をとっていく必要があります。

ひとつの手として、認可保育園より保育料は高くなりますが、無認可保育園を利用する手もあります。無認可というと悪いイメージを持ちがちですが、設備不足・敷地不足などが国の基準に達しておらず無認可となっているだけで、逆に認可保育園よりも特色のある無認可保育園も多くあります。もちろん下調べは必要ですが、時間外保育などが充実していることもあり、共働きの家庭などでは助かる面も多々あると思われます。

東京都に住んでいる方なら「認証保育所」を利用することもできます。「認証保育所」は国の認可基準には達していないものの自治体の基準に達している保育園で、自治体から補助金も出るため保育料が少し安くなります

幼稚園と保育園の要素をあわせもつ「認定こども園」というものもあります。都道府県知事の認可を受けた施設で、自治体や世帯収入などで保育料が変わるため、利用したい場合はよく調べてからにしましょう。

また、待機児童は都市部に集中していますが、自治体によって待機児童の人数に差があるため、急を要する場合やこれから子どもが生まれる予定の方などは、待機児童の少ない自治体に引っ越すという手段もあります。

まだまだ長引きそうな待機児童問題ですが、子どもが生まれる前に自分の住んでいる地域の保育所を下調べしておくことで回避できるケースもあると思います。国もいろいろな対策を打ち出していますので、待機児童ゼロが実現されるよう、その動向に注目しましょう。


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