徘徊者捜索にスマホを活用「みまもりあいプロジェクト」

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認知症高齢者 徘徊
現在、認知症高齢者の徘徊トラブルが社会問題化していることをご存知ですか。
実際に認知症と診断されている、またはその疑いがある高齢者の行方不明者数は2016年度には1万5432人(警察庁資料)おり、前年から3224人増と年々増加傾向にあることが分かっています。そんな中、認知症高齢者の徘徊トラブルを未然に防ぐ、もしくは徘徊して行方が分からなくなってしまった後に保護から引き取りまでを迅速に行うためのさまざまな方法が最近注目を集めています。

今回は、そんな認知症高齢者の徘徊事情を紹介しながら具体的な対策について取り上げていきます。

社会問題化している認知症高齢者の徘徊事情

徘徊は認知症の症状のひとつです。ひと口に徘徊と言っても、家の中をぶらぶらと歩き回るだけの人もいれば、驚くほど遠くまで歩いて行ってしまい、自力で自宅へ帰れなくなる人もいます。たいていは警察に保護され自宅に帰ることができるそうですが、ケガをしたり、そのまま行方不明になってしまう場合のほか、命を落とすという最悪の事態もあると言われています。

また、本人の身元が分かれば保護から引き取りまでスムーズに進めることができますが、認知症高齢者の場合には自分の名前や住所、電話番号などをはっきりと口に出して言えないこともあります。こういった時は関係者の方が引き取りに来るまで、長期間医療機関や施設などで過ごさなければいけなくなってしまう場合もあるそうです。

・高齢者の徘徊、その原因と危険性について
認知症高齢者の徘徊には幾つかの原因が考えられますが、特に多いのが認知症患者の代表的な症状である「記憶障害」「見当識障害」によるものです。例えば、トイレに行きたいのにトイレの場所が分からなくなって歩き回ったり、眼鏡を探し始めたけれど「眼鏡を探していた」こと自体を忘れてひたすら歩き回るようなケースなどは「記憶障害」や「見当識障害」の主な事例です。

そのほか、引っ越し後や慣れない場所に一時的に置かれることで、大きな不安やストレスを感じて徘徊を始める高齢者も少なくはないようです。家の中をぐるぐると歩き回る程度なら心配ないように思えますが、何かにつまずいた拍子に転倒してしまいケガをしてしまう可能性もありますし、外に出て行ってしまった時のリスクは言うまでもなく高くなります。実際に高齢にもかかわらず、着の身着のままで数キロ先へ歩いて行ってしまい保護されるケースもそれほど珍しいことではありません。

徘徊の具体的な対策と適切な対応とは

認知症高齢者 徘徊
認知症高齢者の徘徊は、介護者の精神と身体にも大きな影響を与えます。
実際に身内が徘徊を始めると、「そのまま行方不明になってしまったらどうしよう」「どこかに行ってしまわないように見張っていないと!」といった心配や不安を介護者は常に抱くようになります。また、徘徊が何度も続くとつい声を荒げて怒ってしまうこともあるでしょう。しかし、叱ったからといって徘徊がピタッとなくなるわけではありません。むしろ逆効果になることのほうが多いのです。そして、心身への負担や疲労が溜まり、体調を崩してしまうケースも少なくはありません。

そこで、認知症高齢者の徘徊に対する具体的な対策や周囲の人に求められる対応の仕方について見ていきましょう。

・徘徊の理由を尋ねてみる
徘徊しないように闇雲に注意したり怒ったりするのではなく、「なぜ徘徊するのか」を本人に尋ねてみることも大切です。もし明確な回答が得られなかったとしても、会話の中に何かしらのヒントが隠されているかもしれません。
例えば「家に泥棒がいるから家の外に逃げている」と答えたならば、認知症による妄想の症状が出ている可能性があります。また、そのほかにも認知症高齢者には本人なりに徘徊する理由があるはずなので、その原因を取り除いてあげることが大切です。

・日中に適度に体を動かしてもらう
日中に無理がない程度に運動し程よく身体を疲れさせると、夜ぐっすり眠れるようになるため、深夜の徘徊予防に効果的です。本格的な運動ではなくても、ラジオ体操や高齢者向けの軽いストレッチでも十分効果は期待できます。

・服やカバン、持ち物に名札をつけておく
服やカバン、持ち物、靴などに名前や住所、電話番号などを記載した名札をつけておくと、万が一行方不明になった時にも安心です。本人が名札を気にするようでしたら、目立たないところに縫いつけたり接着剤で貼っておくと良いでしょう。

・人感センサーグッズや徘徊防止カギを上手に活用する
特に深夜や薄暗い朝方の徘徊は危険性も増してくるため、玄関をはじめとする出入り口にひと工夫加えておきましょう。最近はいろいろな対策グッズが販売されていますが、なかでも注目したいのは、人感センサーグッズと徘徊防止カギです。人感センサーは人が動くと音で知らせてくれるので、玄関や窓・階段などに設置しておくと良いでしょう。また、徘徊防止カギは、玄関に取りつけると内側からは開けることができないようになっている補助ロックですので、徘徊防止に効果があります。

高齢者の徘徊を防ぎきれなかった場合の対処法

認知症高齢者 徘徊
もし目を離した隙に認知症高齢者が家の外へ徘徊に出てしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。ここでは対処法を2つ紹介します。

・近所の方や警察へ連絡する
まずは焦らず近所の方や警察へ連絡することが大切です。特に近所の方にはあらかじめ徘徊する可能性があることを伝えておき、見掛けたら連絡をもらえるように頼んでおきましょう。警察へは身体的特徴や服装などを詳しく伝え、しっかりと情報共有をしておくようにしましょう。

・認知症高齢者を保護するためのサービスも
認知症高齢者を迅速に保護するためには、周囲の方との見守りが重要です。ただ、現状では徘徊する認知症高齢者を発見、保護しても、その後の身元確認や連絡に時間が掛かってしまい、本人に大きなストレスを与えてしまっています。

そんな中、認知症の人とその家族の社会生活改善を目的に活動している社団法人セーフティネットリンケージでは、徘徊トラブルを早期解決するために、専用ステッカーとスマホアプリを使って見守りあう街を作っていくことを目的とした「みまもりあいプロジェクト」を開始。すでに2017年から山梨県笛吹市、山梨県山梨市、東京都八王子市、千葉県柏市などが導入しており、複数の自治体が導入を予定しています。

「みまもりあいプロジェクト」とは?

「みまもりあいプロジェクト」は、認知症患者の徘徊などがあった場合、捜索の手助けをしてくれる協力者を増やし、地域で見守りあえる街を育てていくプロジェクトです。捜索に協力するには、スマートフォンに無料アプリ「みまもりあいアプリ」をダウンロードするだけでOKで、個人情報が発信されることもないので安心して協力することができます。

認知症患者の徘徊に悩んでいる家族側は、「みまもりあいステッカー」(入会金2000円で48枚セット、月額利用費300円)を申し込んで入手し、あらかじめ認知症の方の財布やカバン、携帯や衣服などに貼り付けておく必要があります。「みまもりあいステッカー」にはフリーダイヤルとIDのみが明記されていて、個人情報を保護した状態で、協力者とご家族が直接連絡を取り合うことができる仕組みとなっています。

実際に徘徊が起こった際の「みまもりあいアプリ」を活用した捜索方法は以下の通りです。

1.捜索依頼
自宅または施設にて認知症患者の徘徊を防げなかった場合、「みまもりあいアプリ」を起動して捜索依頼ボタンを押すと、「みまもりあいプロジェクト」の協力者に、事前に用意していた捜索者情報が配信されます。配信したい捜索者情報はご家族側で管理でき、どの範囲(半径5km、10kmなど)までの協力者に捜索依頼を配信するかも選択できます。
協力者は捜索依頼に対して「協力」ボタンを押すと、配信された捜索者情報が閲覧できます。

2.発見
配信された捜索者情報から徘徊者を発見したら「みまもりあいアプリ」の捜索者情報に掲載されているフリーダイヤルに電話をかけて、表示されているID番号を入力すると直接ご家族に連絡できます。その際、双方の電話番号は非公開で表示されないため、ご家族は捜索者情報を配信する際に安心して捜索者の写真を掲載することができます。写真があることで早期発見と早期直接連絡につなげます。

3.確認
徘徊者を無事保護したら、ご家族が「発見」ボタンを押すと、捜索依頼を配信した協力者すべてにお礼の通知が届き、捜索者情報は自動消去されます。

この「みまもりあいプロジェクト」の優れている点として、以下のものがあげられます。

・ご家族が直接、徘徊者の服装や持ち物、声かけのヒントなどを配信することができる。
・写真の掲載も可能で、「みまもりあいステッカー」記載IDとフリーダイヤルの利用で徘徊者本人の特定化を防げる。
・「みまもりあいステッカー」により、個人情報が保護された状態で直接依頼者と連絡がとれる。

アプリダウンロード開始から6ヵ月で、全国で約6万人の方々にダウンロードされており、実際に導入自治体ではこのシステムによる保護事例が生まれています。「みまもりあいプロジェクト」のシステムは、協力者が増えれば増えるほど捜索がしやすくなります。自治体で「みまもりあいプロジェクト」の支援を行っている地域では協力者も集まりやすいと思いますが、それ以外の地域でももちろん使用可能ですので、捜索に協力してもいいという方はぜひ無料アプリ「みまもりあいアプリ」(平仮名で検索)をダウンロードしてみてください。

徘徊の問題は家族だけでは解決が難しい社会問題ですので、地域の住民の協力が大きな手助けとなります。地域全体で高齢者を見守れる、安心して暮らせる街が増えていってほしいものです。

みまもりあいプロジェクト(社団法人セーフティネットリンケージ)
http://mimamoriai.net/


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