カンボジア・ミャンマー・ラオスに期待! CLM諸国とは?

グローバル

関連キーワード
CLM諸国
東南アジアのCLM諸国(カンボジア・ラオス・ミャンマー)に対して、日本企業の関心が高まっています。
CLM諸国とはどのような国々なのか、その概要や、安価な労働力と外資誘致強化といった日本企業が注目している理由などについて紹介します。

低コストな労働力の宝庫である「ラストフロンティア」として注目の的に

日本から見た東南アジアと言えば、ASEAN諸国の中でもタイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナムといった国々が身近でしょう。
政治的安定や着実な経済成長のもと、日本にとっての消費市場としてもますます有望になっています。英国の調査会社の推計によれば、この6ヵ国における年間の世帯可処分所得が5000ドル以上という中間〜富裕層は、2010年の2億7200万人から2015年には3億5200万人へ、2020年には4億3300万人にまで拡大が見込まれています。ただし、そうした経済発展が進むとともに、工場などに望ましい安価な労働力を提供してくれる存在としては難しくなってきます。

そこで近年注目されているのが、特に軽工業を中心とする労働集約型産業においてタイ、ベトナムより相対的に賃金の安いカンボジア、ラオス、ミャンマーのCLM諸国です。2010年以降に下位中所得国入りを果たしたCLM諸国は、ASEANの中でとりわけ低コスト労働力の活用余地の大きい「ラストフロンティア」として投資が集まり始めました。

周辺国を見ると、これまで下位中所得国の代表格であったフィリピンやインドネシアは今後10年で上位中所得国入りを遂げそうで、従来の組立を中心とする労働集約型産業から資本集約型へのシフトが見込まれています。ベトナムでは生産年齢人口の伸びが今後は大きく低下するために労働集約型産業では優位性が失われつつあり、やはり資本集約型へと移行させることで上位中所得国入りを目指すこととなりそうです。その一方で、下位中所得国入りしたばかりのCLM諸国ではまだまだ生産年齢人口が高い伸びを維持していくことからも、顕著な労働集約型産業を主体とした現在の経済発展路線が続けられそうなのです。

注目が集まる理由としては、各国の政治的、経済的変化もあります。カンボジアは内戦や地雷のイメージを乗り越え、フン・セン首相のリーダーシップのもとで社会が安定し、治安も大幅に改善しています。工業団地の整備も着実に進んでおり、2008年に完成したプノンペン経済特区を皮切りにタイやベトナムとの国境付近でも続々と経済特区が開設されています。そこへの日本企業の進出も活発で、プノンペンには2014年3月時点で住友電装、味の素など66社が進出、タイ国境沿いのコッコン経済特区には矢崎総業などが進出しています。ラオスでも同様に工業団地が建設され、同じくタイ国境沿いのビタパークには三菱マテリアルなど、サワン・セノにはニコンやトヨタ紡織などが構えています。

そして、特に大きく変化したのがミャンマーです。2010年、20年ぶりの総選挙を受け、翌年3月にはそれまでの軍政から民政に移管されて新政権が発足しました。その後も規制緩和や経済自由化が進み、ヤンゴン近郊のティラワ地区で日本とミャンマーの官民協力による総開発面積2400ヘクタール、東京ドーム約500個分に相当する工業団地が開発されています。ティラワ特別経済区には2016年時点で78社が進出を決定、その内日本企業が39社を占めています。同年末には日本政府の支援により電子通関システムMACCSが導入され税関審査や検査手続きの簡素化及び時間短縮が期待されるとともに、日本政府の円借款(ODA)による港の開発整備も2018年末の供用開始を目指して進められています。

外資の進出を促す特別経済区の構築を支える、3大経済回廊

CLM諸国
こうした背景には、この3ヵ国を含むメコン地域内で、80年代90年代にはインフラが未整備だった陸路など輸送網が急速に整えられてきたことがあります。
この地域では古くからメコン川など河川交通を通じてヒト・モノ・カネが行き交ってきましたが、ASEANの陸における連結性を強化することで、エネルギーや情報通信技術などの物理的連結性の補完、さらには貿易・投資・サービスの自由化など制度的連結性の促進につなげる狙いがあります。
今ではタイを縦断してミャンマー、ラオスにつながる南北経済回廊、タイを横断してミャンマー、ラオスにつながる東西経済回廊、そしてタイのレムチャバン港・カンボジアのシアヌークビル港、ベトナムのカイメップ・チーバイ港をつなぐ南部経済回廊及び南部沿岸回廊が整備されています。そのおかげで国境を越えての生産分業、サプライチェーン構築がやりやすくなっているため、ASEAN最大の日本企業の集積地でもあるタイで賃金が上昇していることもあって、労働集約的な製造工程部分が、整備された陸路を通じてカンボジアやラオスに移される動きが出てきました。その結果、既にタイに進出していた企業がタイとの分業モデル「タイ・プラス・ワン」という形で進出することになり、CLM諸国に外資を呼び込みやすくしています。

実際、南部経済回廊を用いた自動車での移動は、ベトナムのホーチミンからカンボジア国境までなら2時間、タイのバンコクからでも3時間で済むようになっています。東西経済回廊のタイからミャンマー国境エリアでは橋の老朽化で自動車に重量制限などの制約もありましたが、増強工事が進められるなど、状況改善の見込みが立っている状況です。

今後についても、南部沿岸回廊に連なるように位置するミャンマー南部のダウェイでは、ミャンマー政府とタイ政府との協力により港湾と特別経済区の開発が進められ、2015年には日本政府もそこに参画する合意がなされました。この特区計画は初期開発だけでも1800億円という巨大プロジェクトとされており、これはティラワ特別経済区における初期開発の10倍規模に相当します。この港とそこへ至る陸路が整備されれば、タイに進出している日本企業はインドや中東、アフリカ方面に輸出する際にマラッカ半島を経由せず、最短ルートを用いることが可能になりますから、タイ・プラス・ワンの投資を加速させることにもつながるでしょう。

タイや中国との連携強化を背景に、ますます発展の可能性が増すCLM諸国

CLM諸国
CLM諸国の発展見込みとしては、ミャンマーが筆頭と言えます。人口5225万人の規模があるため、低コストの労働力活用を目指した直接投資以外にも、ミャンマー自体の内需の成長に期待しての直接投資といった可能性があります。人口1578万人のカンボジアや716万人のラオスではタイ・プラス・ワンの受け皿的な投資がメインと思われますが、産業の裾野の拡大がミャンマーでは期待されます。

一方でカンボジアは、タイとつながる陸路のインフラ整備と自国内の特別経済区開発でミャンマーに先行している強みがあります。とりわけ、タイ国境沿いに特別経済区を点在させていることでバンコクから3時間圏内という地の利を得ているのは、タイとのサプライチェーンにおいて労働集約工程を引き受ける部分でのタイ・プラス・ワンに最適な条件だと言えます。また、「一帯一路」構想でASEANを組み込んだ経済圏設立を目する中国との協調姿勢もカンボジアの特徴です。2016年、中国の習近平国家主席のカンボジア訪問の際には2億4000万ドルの借款供与が示され、国際会議上でもカンボジアは中国寄りの姿勢を明確にするなど、対中関係を基盤にインフラ整備を進めることが予想されます。

ラオスも、カンボジアと同様、タイ国境における陸路や特別経済区の開発が進んでいる強みがあります。そして中国寄りの外交をラオスも展開して、インフラ整備支援の恩恵を受けています。中国国境のボーテンからタイ国境にある首都のビエンチャンまでの400キロ区間に総工費60億ドルの鉄道建設工事が2016年末に始まっており、2021年に完成すればラオスに中国とタイとの間を連結するサプライチェーンの大動脈が通ることとなり、製造業や物流の集積がさらに進むことが見込まれているといった状況です。


カンボジア記事一覧はこちら
ASEAN戦略『グローバル化が進むカンボジアを選んだ理由』
グローバル化でカンボジアに進出する日本企業の業種とは
なぜカンボジア?日本企業の進出が進むカンボジアの魅力とは

その他のグローバルの記事

キーワード一覧

 ページトップ