電子契約・フィンテックの推進を。海外から立ち遅れる日本の現状

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最近、日々のニュースでもフィンテックという言葉が一般的になってきました。フィンテックとは、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、「ファイナンス・テクノロジー」の略称になります。

フィンテックを分かりやすい例で言うと、会計時にスマホで決済したり、個人間の送金をスマホだけで行ったりするサービスです。さらには紙ではなく電子化された契約書で契約行為をする電子契約もフィンテックの一種です。

世界的に注目されているフィンテックですが、日本は先進国の中でも出遅れていると言われています。今回は、日本でのフィンテックの現状を、電子契約の観点を中心に解説していきます。

電子契約とは?

電子契約とは、簡単にいうと紙の契約書を電子化してしまい、インターネット上で署名、捺印、そして保管まで行うという契約方法です。電子契約の実例として、ゼネコンが工事を受けた場合の契約書を紹介します。

仮に、建設業を営むA社が公共工事を受注したとします。その際、建設工事を行う下請け業者B社に注文書を発注して、工事の請負契約書を結びます。従来であれば、「工事請負契約書」を紙で2通作成し、契約書の内容をお互い確認します。

その後、その2枚の契約書に印紙を貼付し、契約書と印紙に捺印した後に、2枚を重ね合わせて契約書に割り印をするという流れです。そして、契約書は各々の会社で鍵付きのキャビネットなどに管理し、一定期間保管する義務があります。

これを電子契約に切り替えると、まず契約関連の書類が紙から電子化されます。そのため、わざわざ担当者が契約書を持参する必要がなく、インターネット上でお互いに契約書の内容を確認するだけで済みます。また、紙の契約書には印刷して製本する手間もありますが、電子契約だとその手間も掛かりません。

そうなると、担当者の交通費、郵送費なども節約でき、何より無駄な時間が省けます。お互いに契約書の内容を確認した後は、インターネット上で署名、捺印を行うという流れです。また、インターネット上でやりとりするので、わざわざキャビネットに紙として保存する必要がなく、検索する時も楽です。

そのほかにも、スマホ決済をすることで、会計時に現金を出す時間を省くことができ、ATMで引き落とす手間や手数料などもなくなります。このように、フィンテックや電子契約を導入することで、業務効率が上がり、無駄な費用が掛からなくなるのです。

フィンテックを導入している海外の現状

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さて、そんなフィンテック、電子契約について、日本は海外に比べて出遅れていると言われています。それが確認できる事例として、諸外国のフィンテックがどこまで進化しているかを見ていくことにしましょう。

・納税方法
イタリアでは2000年以降の納税は、全て電子申告に移行しています。当初は税務上の本人確認という目的でしたが、その後は銀行口座の開設や不動産登記などの本人確認番号として利用が拡大しているので、日本でいうマイナンバーのようなものです。一方、日本では確定申告は電子化(e-Tax)されていますが、平成27年時点でも個人での所得税の申告での利用率は52.1%です。つまり、半数近くが紙で確定申告書を作成し、税務署に持参したり郵送したりしているというわけです。

・社会保険
ベルギーでは、12歳以上の国民に対してIDとカードを発給しています。このIDで本人確認が可能であり、障害者雇用・労働災害・傷病休業・育児休業・高齢者再雇用・休日深夜勤務・失業時の受給資格の管理や金銭の給付サービスに活用しています。それにより、これらの手続きに必要だった約210種類の証明書、約50種類の申請書類などが廃止でき、行政手続きの手間が大幅に減りました。日本でも電子化されている行政関係の書類はあるものの、利用率はわずか20%です。

電子契約についての日本と海外の現状

日本の商取引では、いまだに紙での契約が主流であり、電子契約が活用されている場面は少ないと思われます。皆さんも契約書といえば紙というイメージがあるのではないでしょうか。例えば、レオパレス21が2015年に業界で初めて導入した不動産の賃貸借契約における電子化サービスも、ようやく業界内で普及しはじめ、2017年10月から「IT重説」(ITを活用した重要事項説明)の本格運用がスタートしたばかりです。ただし、実際に電子化されるのは現状一部の契約だけとなっています。

一方、電子政府の先進国であるエストニアは、国民IDを15歳以上に義務化しており、行政サービスのほぼ全てが電子化されています。そのため、公的な手続きはX-Roadというシステムを介し、電子認証と電子署名で完結するというほどです。当然ながら、行政手続きのほぼ全てで紙は廃止され、業務効率は大幅に上がったと思われます。

行政サービスの状況から推察できると思いますが、契約書関係でもほぼ電子化しています。2013年にはエストニアとフィンランドの間で、電子政府と情報化社会の政府間協定を締結しました。これによって、エストニアとフィンランドという自国以外の国でも本人確認が容易となり、契約関連も電子化できます。つまり、国境を越えての電子化が進んでいるというわけです。

このように、経済規模が大きいとは言いがたいエストニアなどの国で電子化が進んでいる中、日本の出遅れ感は否めません。日本は判子文化が根強く残っているために電子化への抵抗が強く、そうした国民性が普及の邪魔をしているとも言われています。

今後の日本の対策

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電子契約をはじめとしたフィンテックにおいて日本が出遅れている理由は、各国のフィンテックに関する投資額を見れば理解できます。フィンテック先進国である2016年のアメリカの投資額は約122億ドルであり、イギリスも9.7億ドルを投資しています。これは、それぞれGDO比で見るとアメリカは0.7%でイギリスは0.32%です。

日本の投資額は6500万ドルに留まっており、アメリカやイギリスと比較すると桁が違います。また、GDP比で見ても0.014%と非常に小さい投資額になっています。そうした、日本でフィンテックの代表格である電子契約を普及させるための最も効果的な対策は、法整備です。

そもそも電子契約が普及しなかった最大の原因は法改正が時代の流れに追いつかなったことにあるので、法律を現代に適応させることで電子契約の普及を推進しようというわけです。詳細については経済産業省の「電子商取引の促進」という資料がありますが、ここでは不動産契約法改正を見てみましょう。

1971年の宅地建物取引業法(宅建業法)改正以降、通常の不動産取引は宅建士による対面での重要事項説明が義務づけられていました。今後は2017年3月に行われた「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」(国土交通省設置)の取りまとめを経て、オンラインシステムでの重要事項説明が可能となり、賃貸借契約もこれに準じます。

このように遅ればせながらではありますが、日本でも法整備によって電子契約が進むと思われます。これから不動産の賃貸借契約と売買契約が完全電子化されると、契約書作成の手間はもちろん、場所や時間を気にせずに契約することができます。そのため、わざわざ休日に不動産会社のオフィスまで出向かなくても、会社や自宅でWebを通じて契約することが可能になるのです。

そうなると単純に営業マンもお客様も時間が節約できますし、様々なコストが減っていきます。これにより会社の業績アップにつながり、営業マンの負担軽減にもなるので、会社側からしても利点は少なくありません。当然ながら、顧客も時間的な拘束がなくなるため、両者ともメリットは大きいです。

電子契約をはじめとしたフィンテックを普及させることで、企業も顧客も大きなメリットが受けられます。現在は立ち遅れている日本ですが、法整備を迅速に行い、フィンテックの先進国を目指して利便性を高めていってほしいものです。

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