成年後見制度とは? 認知症700万人時代の到来による課題とは

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日本は既に高齢化社会を迎え、高齢者の人口が増加するとともに、認知症の方も増えています。認知症が進行していくと、日常的な金銭や資産の管理などに支障が起きたり、トラブルに巻き込まれるケースも起こります。そのような人たちを保護し支援するために成年後見制度が設けられています。

この成年後見制度とはどのようなものなのでしょうか。後見人をつけるメリット、さらにニュースでも耳にする、後見人による使い込みといった問題点などについても紹介します。

成年後見制度には2つの種類がある

成年後見制度は認知症だけでなく、精神障害、知的障害により判断能力が十分でない人たちが様々な不利益を被らないよう、家庭裁判所に申し立てて、該当者の援助を行う人をつけてもらうための制度です。
2012年度の成年後見制度の利用者は約16万6000人に上り、ここ数年間は毎年1万人以上のペースで増えています。高齢化社会が今後も続く限り、このペースが加速することはあっても減ることはないと思われます。

成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度があります。
任意後見制度は、本人の判断能力が衰える前に依頼者本人の意思により利用できますが、法定後見制度は判断能力が衰えた後でしか利用することができません。
また、任意後見人は本人からお願いされた人がなれますが、法定後見人は家庭裁判所から選任された人のみです。ただ、誰になってほしいかの希望をあらかじめ伝えておくことは可能です。
法定後見制度は判断能力の程度により、後見、保佐、補助の3つに分かれており、後見は「判断能力が欠けているのが通常の方」、保佐は「判断能力が著しく不十分な方」、補助は「判断能力が不十分な方」を対象にしています。

成年後見制度の申し立てには、法的な手続きが必要

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では、成年後見制度を利用するためにはどのような手続きを行う必要があるのでしょうか。

まず、任意後見制度を利用する場合についてです。こちらは、本人にまだ十分な判断能力がある内に、将来、判断能力が不十分になった状態の時に備えて、自分が選んだ任意後見人に、自身の生活や病気、介護が必要になった場合の財産管理などの事務を代わりに行ってもらうように、事前に決めておくものです。そのためには口約束ではなく、任意後見契約(代理権を与える契約)を公証人の作成する公証証書で残しておく必要があります。
そして、依頼者本人の判断能力が低下した時には、任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任した任意後見監督人の監督を受けながら、任意後見人が依頼者本人の意向に添った保護や支援を行うようになります。

一方、法定後見制度を利用する場合、本人・配偶者・四親等内の親族・検察官などが申し立て、家庭裁判所によって成年後見人(保佐人・補助人を含む)が選ばれます。この後見人は、本人に代わって契約などを行ったり、本人自身が契約などの法律行為を行うことに同意を与えたり、本人が後見人の同意を得ずに行った不利益な法律行為を取り消すなどが可能です。
なお、この法定後見制度を利用した場合、補助の場合を除いて、本人は医師や税理士といった資格、会社役員や公務員などの地位を失う可能性が高くなります。

また、任意後見人は本人からお願いされた人がなるため、未成年や破産者など限られた人を除き、基本的に本人の信頼できる人であれば就任が可能です。法定後見人には家庭裁判所から選任された人がなりますが、2017年7月のデータでは、本人の親族が後見人などに選任されるケースが約42%となっています。
しかし、本人が親族後見人を希望してもトラブルが予想される場合には、司法書士などの専門家が選任されるケースもあります。

任意後見人でも法定後見人でも、利用するには報酬が発生します。任意の場合は契約で決めた金額ですが、任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決めた額になります。法定後見人の場合は、家庭裁判所が報酬額を本人の預金や財産などを考慮して決定します。

制度利用のメリットは安心して財産管理などを任せられること

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成年後見制度を利用することで具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。また、デメリットはないのでしょうか。

まずメリットとして挙げられるのは次の通りです。

・判断能力が不十分になり預金の出し入れが難しくなっても、預金関係の手続きなどの代行を頼むことができます。また条件つきですが、不動産の売買も可能です。後見人が代わりにそうした事務や手続きを行います。

・訪問販売で大量に健康食品を購入してしまった、高額な布団の購入契約を無理強いされて買ってしまった、悪質なリフォーム詐欺の契約をしたなど、明らかに本人に不利な契約は取り消すことができます。

・親族や第三者が本人の財産を使い込むといった事態も、家庭裁判所が関与し、防ぐことが可能になります。

デメリットに関して、いちばんは財産処分の自由度が減ることです。成年後見制度の大原則は、本人の権利擁護のため、財産をできるだけ減らさないよう維持しながら、収支バランスや生活環境を整え、本人が健康的に暮らせるようにすることです。

そのため、後見人が不必要と判断したものについては、出費できないようになっています。例えば、孫の入学祝い金や出産祝いなどにも難しいケースが出てきます。さらに投資や相続税対策も基本的には行うことができないようになっています。

また、成年後見人の財産の使い込みというトラブルも目にするようになっています。日弁連が2011年に実施した「後見人等の不祥事案件に関するアンケート調査」によると、成年後見人が不正に財産を使い込むなどして起こった被害の総額は1000万〜5000万円未満が41%となっており、使い込みによる被害は決して小さくないようです。

成年後見制度は、判断能力が低下しても安心して生活することができ、資産を騙し取られるなどの被害に遭うといった老後の生活不安が起きるのを防ぐためにつくられた制度です。

法的に守られる分、制約を受ける場合もあるので、利用する前にしっかりと知識を持ち上手に活用するようにしましょう。

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