【後編】生産緑地「2022年問題」から考える『生産緑地の影響など社会問題を、不動産投資にどう活かすべきか〜株式会社さくら事務所〜』

ソーシャル

関連キーワード
生産緑地
固定資産優遇などのメリットを持つ指定農地である生産緑地が、2022年には30年経過で指定解除のタイミングとなります。
東京・大阪・名古屋の都市部において新たに東京ドーム900個分もの土地が解放される可能性があるのです。
その「2022年問題」をはじめとする社会問題が不動産投資に与える影響を、前編に引き続き、不動産コンサルタントの株式会社さくら事務所会長 長嶋修氏に伺います。

生産緑地、五輪、消費税……長期にわたる不動産投資に影響はあるのか

Q:アパート経営などを行う不動産投資家にとって、「2022年問題」はどう考えれば良いでしょうか。

A:この質問は最近よく聞かれるのですが、乱暴な言い方ですけれども、特に気にする必要はないのではと私は考えます。
そのほかにも、今は全国的に建設ラッシュですが、2020年東京五輪以降には不動産全体が落ち込むのではないかという予測もされています。しかし、過去の五輪大会開催とその地域の経済・不動産市況の関連を調べてみたところ、先進国ではほとんど変化が見られませんでした。ロンドン五輪については英国政府も、不動産価格に影響を与えなかったというレポートを公表しています。おそらく、2020年東京五輪についても同様でしょう。東京・晴海エリアに建設される選手村は、五輪後に住宅に転換される予定なので、その周辺地域の不動産価格には若干の影響があるかもしれませんが、大勢には響かないと思われます。

建設ラッシュも、五輪までの事象ではないでしょう。現在既に人手不足などの理由により、一般のアパートも住宅も工事が大いに遅れています。2020年を過ぎたとしてもその勢いが途切れるといった気配はなく、予感すら感じられません。ですから、五輪を特に意識する必要はないのではないでしょうか。

もうひとつ、影響が考えられる要素は、2019年秋に予定されている消費税増税です。以前、5%から8%に上がった時には、その前後で駆け込み需要と反動による消費の落ち込みがありましたが、京都大学大学院が行った消費者心理実験によれば、8%から10%に上がる際には、前回増税の1.4倍もの消費抑制をもたらすとされているのです。上げ幅はそれぞれ3%と2%ですから、そのインパクトは小さいと思われがちですが、カギは10%、1割という「計算のしやすさ」にあるようです。1万円なら1000円、100万円なら10万円とわかりやすいため、より直接消費者の心理に響いてくるので、消費を抑える力が今回のほうが強く働くというわけです。不動産のような金額の大きいものへの影響がどう出るかはわかりませんが、頭に入れておくべき要素と言えるでしょう。

Q:社会問題などの背景は、不動産投資する上で意識せざるを得ないのでしょうか。

A:そうした細かい要因よりは、中長期的なニーズのある場所にニーズに合った規格のものを建てるというセオリーさえ押さえておけば、それぞれの事象に一喜一憂する必要はないというのが、私の考えです。アパート経営というのは20年30年と息の長いビジネスですから、10年もすればまた別の社会問題が持ち上がることでしょう。その度、それらに左右されるようなアパート経営では、そもそも問題があると言えます。経済状況に負けない、足腰の強いアパート経営を心掛けるべきです。

3極化する不動産格差に打ち勝つには、「立地」への意識が重要

生産緑地
Q:経済状況に負けないアパート経営のためには、何が大切でしょうか。

A:不動産市場は今、3極化しています。上位15%は不動産価値が維持され、上昇する余地のあるもので、70%は少しずつ下落していくもの、あとの15%は無価値であり、固定資産税を払うマイナスすらあるものです。この不動産格差の中、上位15%になるための一番の条件は「立地」です。これは賃貸の集合住宅にも一戸建てにも言えることですし、都心でも郊外でも地方でも共通しているというのが現在の状況です。

いずれにおいても市場で強いのは、駅チカ物件です。駅直結や駅徒歩1分のタワーマンションなどは高価格でも売れている状況で、購入しているのは特別なエグゼクティブや投資家ではありません。かつて高度成長期に郊外に一戸建てを購入して住んできたご夫婦や単身の方が、そこを売って中心地に集まってきているのです。地方都市の例で言えば、JR岐阜駅直結のタワーマンションも完売でした。

Q:駅直結となると、物件としてはかなり限られますね。

A:今は皆さん、物件を探す際にスマートフォンなどを使いインターネットで検索していますが、その検索条件として駅から徒歩「7分以内」と検索する人が8割にも上るのです。これは、5年前には「10分以内」だったものです。また、2017年の首都圏分譲マンションの売れ行きも、「駅徒歩8分」が分水嶺でした。それ以上になると、極端に売れ行きが落ちるんですね。駅チカ人気はここ数年のトレンドで、目安となる徒歩所要時間の分数は年々短くなってきていますから、もしかしたら今後はさらに短くなる可能性もあるかもしれません。

さらに、駅からの距離という話で知っておきたいことがあります。ご存知の通り、日本は少子高齢社会を迎えています。日本地図を2050年の人口予測で塗り分けると、本州の8割以上が半分以下になってしまうのですが、一部の都市部はその時点でも人口増が見込まれています。つまり人口減少の局面では、皆が中心に集まってくる流れがありますし、それに加えて、ある町の区画内に偏りなくばらけて住んでいた人々が、利便性を求めて一定エリア内に固まってくるので偏在するようになるんですね。 実際、地方ではコンパクトシティ構想を進めている自治体も多く、大小合わせて400ほどもの取り組みが進められています。例えば埼玉県の毛呂山町は、コンパクト化によって地価上昇10%を目指すとしています。このような、10年20年にわたる都市計画の取り組みの中で、中心部に人口を誘導して行政効率を上げるということは、逆に周辺地域ではごみ収集や上下水道などのインフラも手薄になっていくわけで、計画された時点でまず金融機関による不動産評価に影響が出るでしょう。それほどに、一にも二にも「立地」が重要なのです。

Q:駅チカではない土地や物件は、どうすれば良いでしょうか。

A:今、複数物件を持つ不動産投資家などの一部に見受けられるのが、資産の入れ替えです。物件を見直して、古いものから新しい物へ、立地のより良い所へと売却・購入が行われているんですね。規模が小さくなれば利回りは下がったりもしますが、現在の低金利のうちであればローンの借り換えも有効ですし、新たなローンでも低金利を享受できます。3極化している不動産を価格上昇が見込める15%に近づけるよう、入れ替えるということですね。

若年層から新築一戸建ての「持ち家願望」が消え、賃貸市場が活況を呈する兆しが

生産緑地
Q:不動産投資自体は、良い選択でしょうか。

A:立地にこだわり、規格や将来市場を見据えることができれば、あらゆる投資の中でこれ以上のものはないかもしれません。低金利の日本では、家賃収入の利回りと借入利息の差が非常に大きく取れるため、イールドギャップ、つまり得られる金利と調達金利の差が大きいのです。中古ワンルームの賃貸利回りが今7〜8%で、アパート経営ならさらに上回りますが、それに対する借入利息は1%未満です。この差は、世界でもトップの水準でしょう。米国でマイホームを購入する場合は金利4%ほどで、不動産投資であれば7〜8%になります。アジアの新興国においてもマイホーム購入はやはり金利7〜8%くらいになってしまいます。

日本はこれから大きく人口減少はするものの、1億2000万人から3000万人減っても、まだ9000万人はいるわけです。その9000万人がどのような動きをするかを想定しながら物件を扱っていけば良いだけです。

また、日本は持ち家率も年々下がっていて、数年前の試算で約60%です。先進国ではイタリアや米国が70%、スペインが80%、旧東ドイツの影響でやや低めのドイツが40%なので、日本は平均くらいの水準です。さらに、ここ数年の推移を見ると若年層ほど持ち家率が下がってもいます。所得の低下で買えなくなっていることもあるのでしょうが、不動産を所有する意義をあまり感じていない点もあるのではないでしょうか。昔のように、一国一城の主を目指す、それもできれば新築で、という価値観ではなくなっています。今後、資産を多く所有している高齢層が減るにつれ、持ち家率は50%かあるいはそれ以下にまで下がるかもしれません。
その意味では、人口減少ほどには賃貸層は減らないでしょう。むしろ、賃貸市場のほうが盛り上がりを維持することが見込まれると言えます。

(プロフィール)
株式会社 さくら事務所 会長
株式会社 長嶋修事務所 代表取締役社長
長嶋 修

不動産デベロッパーで不動産売買業務全般を経験後、業界初の個人向け不動産コンサルティングを行う消費者エージェント企業、さくら事務所設立。様々な活動を通じ、「購入者のみの立場に立つ、マイホーム購入コンサルタント」第一人者の地位を築く。マイホーム購入・不動産投資など不動産購入ノウハウに留まらず、業界・政策提言や社会問題全般にも言及するなど、精力的に活動している。
NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会 理事長、株式会社 しあわせな家 取締役、一般社団法人住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会 理事。
著書・マスコミ掲載やテレビ出演、セミナー・講演実績多数。
近著『5年後に笑う不動産』(ビジネス社)

さくら事務所
https://www.sakurajimusyo.com/

その他のおすすめ記事

その他のソーシャルの記事

キーワード一覧

 ページトップ