シニア活用によるダイバーシティ推進と働き方改革への取り組み

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ダイバーシティの推進と働き方改革への取り組みとして、シニア層の活用が進められています。
定年の65歳までの延長や、勤務日数・時間が選べる再雇用制度など、シニア層活用の動きについて解説するとともに、「年下の上司」を巡る課題にも触れます。

段階的に着実な進捗が見られる、定年延長策や再雇用制度

「高年齢者雇用安定法」は、シニア世代の安定した雇用を確認するためのものです。2013年の改正で、労働者が継続就労を希望する場合、企業は65歳まで雇用することが義務化されました。同年の内閣府の調査では、65歳を超えて働きたい人は65.9%にも及び、その内の3割近くは「働ける間はいつまでも」と、さらに積極的な姿勢を示しています。企業側の対応も進み、2016年の厚生労働省調査では、高年齢者雇用確保措置が実施済みという企業は99.5%、希望者全員が65歳以上まで働ける企業は前年から1.6%増えて74.1%、70歳以上まで働ける企業は1.1%増えて21.2%となっています。

この高年齢者雇用確保措置というのは、具体的には「65歳までの継続雇用制度の導入」「65歳までの定年の引き上げ」「定年制の廃止」のいずれかの措置のことです。
労働者側もこの流れを汲み、2018年の春闘では多くの労働組合が定年延長や60歳を超えた労働者に対する処遇改善を求めました。業界ごとに見てみると、慢性的な人手不足に悩む流通・サービス業では、UAゼンセンが65歳への定年延長及び定年制廃止を要望したのに対し、経営側もシニア層の活用を拡大させる方向に理解を示しています。技術の継承に危機感を持つ鉄鋼や造船・重機などの基幹労連も、速やかな定年延長を求めて賃金体系や退職金についての具体的議論を進めています。

雇用延長の実施例としては、ホンダが2017年度より給与水準を50代の約8割に設定する、65歳定年制を導入しているほか、イオンリテールが2018年3月から希望者には70歳まで継続して働ける新制度をスタートさせています。明治安田生命保険は定年後に1年ごとの嘱託社員としての再雇用を行ってきましたが、2019年度には65歳定年制として給与も嘱託社員の2〜3倍の水準を予定しています。生保業界では日本生命も2021年度より65歳定年制を導入検討し、能力に応じて65歳を超えての雇用も図っています。製造現場を持つ岡村製作所も2022年3月に掛けて段階的に65歳への定年延長が図られるなど、それぞれにステップを進めている現状です。

「年上部下」「年下上司」でも気持ち良く働ける職場の合意醸成を

シニア活用
では、シニア人材を活用する際に留意すべき点としてはどのようなものがあるでしょうか。

まず、当のシニア層の意識が様々だということです。年金の受給年齢引き上げの方向が打ち出されていることもあって、経済的に給与所得を得る必要があるといった切実なケースも考えられるでしょう。一方で、アクティブシニアと言われる、意欲あふれる層にとっては体力的にも働くのが当然という意識が強いのも実際です。必ずしも悲壮感を伴ってはいないのが近年の傾向ですが、生きがいや社会との接点、健康維持のためなど、それぞれに重視するポイントは異なるかもしれません。その意欲を最大限に活かすには、個々の価値観に見合った仕事内容や職場環境が提供されることが望まれます。

また、シニア活用は「年上部下」を生む可能性もあります。従来制度なら60歳で職場を去っていたはずの元上司が、嘱託待遇などで勤務日数や給与を減らして、同僚あるいは部下として居続けるケースもあり得るということです。大企業であれば顧問契約や子会社役員待遇というポジションも用いられてきましたが、「希望する全員」の雇用を継続するに当たっては、それではポストが追いつかないと容易に想像がつきます。特に年功序列を慣例としてきた職場においては、呼び名から気を使うようなこともあるかもしれません。企業は単に制度を整えるだけでなく、それぞれが気持ち良く働けるような職場環境や風土の醸成にも努めるべきでしょう。

シニア人材活用によるメリットは多種多様に認められます。経営的には新たな人材を得るために掛かる採用コストの抑制につながりますし、新たな労働条件によって人件費を抑えたり、高年齢者雇用による助成金活用なども見込めるでしょう。また、意欲や体力に合わせて、非常勤勤務を勧めやすい面もあります。曜日を決めて、あるいはピークタイムや繁忙期など、特に人手の必要な時間や時期に勤務してもらうといった活用のし方も工夫できます。

人材の質を見ても、サービス業や製造業などでは長年の経験が若手の育成に良い影響を与えることが考えられます。顧客対応の点でも、同じくシニア層や経験に基づくアドバイスや成熟した対応を望むお客様などからの評価が得られやすいと言えます。

そもそも働き方改革は、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、育児や介護との両立といった社会課題を解決するために、多様な働き方を選べる社会を実現するためのものです。
女性活躍や外国人人材の活用と並んで、シニア層活用も制度の構築とともに経営や職場にもたらすメリットを考えて、効果的に導入していくことが求められます。

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