ベトナムではITエンジニアが増加! 成長するオフショア開発市場

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ベトナムでは年間9000人の学生がIT系学部を卒業し、IT系技術者の育成が進んでいます。
こうした中、オフショア開発における中国一極集中のリスクを回避するため、ベトナムへの日本企業の注目が集まっている現状について解説します。

より低廉な賃金水準を求めて中国でも沿岸部から内陸にシフト

現在、日本企業の半数がオフショア開発を導入していると言われています。オフショア開発とはソフトウェアやアプリの開発や運用、保守管理を海外の開発会社に委託することで、開発コストの削減にもつながるものです。日本ではシステムエンジニア不足で、必要な人材確保が難しい状況ですが、新興国は官民合同でIT教育に力を入れているため技術者を確保しやすい面があり、オフショア開発が増えています。そして、一般職種では日本語〜英語〜現地語など言語障壁が伴いますが、システム開発におけるプログラミング言語は世界共通だというのも導入を進めやすい一因となっています。

日本からのオフショア開発拠点として早くから人気があったのは中国です。
90年代には、日本との時差が少なく、もともとIT企業が多く存在していた沿岸部や北京などで相次いで日本向けオフショア拠点が立ち上げられていました。人口13億人の中国ではシステムエンジニアの数も多く、日本向けオフショア開発は当初人気がありました。しかし、中国全体のGDP成長や、暮らし向きの向上により都市部を中心に賃金が高騰するとともに、中国IT企業の目覚ましい進化と市場の拡大で、国内でのオフショア需要も急増しています。そのため、北京・上海・南京といった、それまでの日本向けオフショア拠点が次々と縮小し、撤退を繰り返し、より低賃金の労働力を求めて内陸シフトが起きました。
中国中央部の都市、西安ではIT企業におけるアウトソーシング市場が年20%ペースで拡大しており、その発注元として中国企業に次いで多いのが日本企業となっています。2010年から2016年に掛けて、中国の国内オフショア需要は3倍以上に増えたと言われています。ただ、現在西安の大卒初任給は沿岸都市部の3分の2程度ですが、周近平中国国家主席肝いりの広域経済圏構想「一帯一路」の中核都市であり、近い将来賃金上昇の可能性も高いとされ、日本企業にとって安住の地と言い難くなっています。

大学や現地企業が支援する、ベトナムのIT技術者教育

このような状況の中国に代わり、日本向けオフショア拠点として近年人気を集めるのがベトナムです。
日本の大手ITベンダーがこぞって中国全体でのオフショア要員を絞っている一方、各社がベトナムでのオフショア開発のために増員させています。ベトナムはソフトウェア開発の歴史は日本や中国ほどではなく、まだまだ成長途上にありますが、もともとの勉強熱心で勤勉な国民性も功を奏し、大学など教育機関や地場のIT企業が協力して若いエンジニアの育成を推進してきた結果が実ってきているのです。

ベトナムでは国策としてIT教育を推進しており、年間9000人の学生がIT系学部を卒業しています。日本との国際関係の良好さを踏まえ、他のASEAN諸国に比べて日本語学習が盛んな傾向もあります。ベトナムの理系大学で上位にあるハノイ工科大学では、日本のODAと連携した、日本語のできるブリッジエンジニア育成プログラム(HED SPI)も設けられているほどです。また、国としてベトナム全体で現在約30万人のIT技術者を、2020年までに60万人へと倍増させることを目指しています。
ベトナムの科学技術省・教育訓練省・IT業界団体のベトナムソフトウェア協会(VINASA)と言った官民主導によりIT分野における競争力強化を図っており、大学で数学や物理を専攻した卒業生のIT専門の大学・短期大学への再入学を支援し、IT企業への就職プログラムも用意しています。そして、既に2017年10月には1期生を輩出しています。

ベトナムを日本向けオフショア開発拠点にする利点には、休日や3連休以上の大型連休が少なく開発スケジュールを立てやすいといったことがあります。日本との時差は2時間で、出勤時間が早い習慣のため、日本との連絡にも大きな影響はありません。

またコスト面での優位性もあります。開発実務経験3年ほどのエンジニアの月額発注コストは約25万円と、中国に比べ2割ほど低い水準です。ただし、こうした賃金も上昇する傾向にありますし、ホーチミンやハノイなど主要都市のエンジニアは国内平均以上の所得を得ています。そのため、それよりは3割ほど低賃金水準と言われる中部の都市ダナンにおいて、日本向けオフショア開発が増える動きも見られます。

コスト重視から優秀なIT人材確保や技術向上を目指して

オフショア開発市場
今後は、単純にコスト抑制を目的とするだけでなく、日本でのIT技術者やエンジニア採用、育成の難しさからも、ベトナムを中心とするオフショア開発は日本企業にとって欠かせないものとなります。また、開発のスピードアップを図るために、オフショアにおいてもより優秀な人材の確保や技術の向上が求められるでしょう。

例えば、大手広告代理店では従来の広告企画やクリエイティブからデジタルマーケティング支援へ、さらに実際のウェブサイト制作及びアプリ開発まで行うなど、事業の転換と拡大を進めています。そのために開発の内製化が必要であり、2017年4月にベトナムの現地法人との合弁でオフショア事業会社を設立しました。業務は主にウェブサイトに掲載する画像の加工やSNSの運用、アプリの開発などで、1〜2ヵ月で制作、納品を行うような案件を受け持っています。内製化にこだわったのは、こうしたデジタル分野では更新や改修のサイクルが短く、外部発注ではスピードが追いつかないからだと言います。オフショア開発としては後発なだけに最新技術への取り組みにも積極的で、ECサイトの構築など、より高度な開発案件も視野に入れているとのことです。

大手証券会社のリサーチやコンサルティング部門と担っているD社では、2015年からベトナムのソフトウェア会社に、高度な技術を要する業務を委託しています。一例では、有価証券報告書から企業の事業内容を表す言葉などを自動で抜き出す機械学習プログラムの構築です。データサイエンスと言われる領域ですが、日本でコンサル会社に依頼する3分の1程度のコストであり、業務を重ねるごとに精度の向上も期待できると想定しています。さらにチャットボットやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、自動運転技術といった先端技術領域でも相互協力することにしており、まずはチャットボットの日本語版開発をベースにD証券での顧客対応に活用を検討するなどしています。

日本でシステム開発を行う場合にもコスト抑制策として効果的とされるプロジェクト管理の徹底で手戻りの削減に挑んだのが、リクルートテクノロジーズです。リクナビなどのウェブサービスのシステムやスマホアプリの開発、保守のための拠点をベトナムに置いており、2012年にスタートした時点では20人だったチームが、現在はダナンに300人、ハノイに100人といった規模にまで成長しています。当初からコストメリットばかりを求めすぎず、同社独自の開発方法論や仕組みを現地で根づかせるために、日本人エンジニアが常駐して教育に当たった時期もありました。こうした人材教育やプロジェクト管理に係る人件費や設備費をプロジェクトごとには計上せず、投資期間と割り切ることで体制づくりを優先させたといわれています。現在は現地スタッフのみで自律的に運用ができており、コストメリットを大いに享受できるようになっているとのことです。

このように、より安い賃金環境のみを求めて国や都市を移転していくのではなく、腰を据えて技術レベルなども求めていくようなモデルへの移行が始まっています。その中でベトナムは、日本企業の要望に応える能力と環境を有していると言えるでしょう。

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