高齢者の介護・自立支援をAIデータ分析で支援

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介護 AIデータ分析
様々な分野で導入されているAIを活用したデータ分析が、介護サービスの現場でも利用されようとしています。AIがあらゆるデータを分析してケアプランを提案することが、介護サービスのさらなる充実につながると期待されています。

AIの進化とAIデータ分析の活用

近年、耳にすることが多くなったAIは、「Artificial Intelligence(人工知能)」の略で、人間の知能に近づけたコンピュータシステムのことです。映画の中では人間のような高度な知能や思考力を持つ姿が描かれていますが、現在のAIは知的作業を代替させるツールの意味合いが強く、身の回りの家電製品などにも搭載されています。

AIは「自ら学習する」ことが最大の特徴で、収集し学習したデータをもとに自ら推論や判断を下せます。従来のコンピュータプログラムがあらかじめプログラムされた処理以外はできないのに対し、AIは自ら学習して適切な処理を実行できる点が、各分野から注目を集め利用されてる理由のひとつです。

AIのもとになっているのは、大量のデータを学習させ共通の法則を見つけ出し、その法則に別のデータを判断させる機械学習のプログラムです。迷惑メールの自動判別や写真の顔認識などで利用されています。そして、機械学習の手法のひとつである深層学習は人間の神経ネットワークを模した、より高度な学習を行えるようデザインされたプログラムです。「ディープラーニング」とも呼ばれており、機械学習に比べると飛躍的に高いパフォーマンスを発揮します。中でも人間に匹敵する、あるいはそれ以上のパフォーマンスを期待できるものが、現在のAIと呼ばれるシステムです。

ビッグデータと呼ばれる膨大なデータを短時間で学習・分析できるAIは、家電をはじめとする製品だけでなく、ビジネスの分野でも積極的に取り入れられています。身近な例ではGoogleなどの検索エンジンや、iPhoneのSiriなどが有名です。コールセンターや飲食店、労務管理や帳票管理といった具合に、あらゆる分野で導入されており、私たちは普段の生活の中で、必ずAIに触れていると言っても過言ではありません。

AIと機械学習の違いは

大量のデータを学習できる点では、機械学習もAIも同様に優れていますが、学習の方向性で大きく異なっています。機械学習は予め学習する内容がプログラミングされているのに対し、AIは学習する内容も自分で見つけるのが特徴です。そのため、予期せぬ有効な結果を得られることもあるものの、反対に意図しない方向へ学習が進んでしまう場合もあります。機械学習と違いAIでは、どんなデータを与えるかが重要なファクターになるのです。

そうした方向性の違いがあるため、より高度な技術のAIが全ての分野で機械学習に取って代わるといった図式ではなく、現状ではそれぞれの特性を生かした使い分けが行われています。学習結果を早く得ることが可能でスピーディな判断を期待できる機械学習は、特定のテーマに対して素早い分析が必要な分野に適用され、機械学習では対応しきれないような複雑なテーマには、あらゆる方向に学習を発展できるAIが用いられるといった使い分けです。

ケアプランから始まる介護サービス

介護 AIデータ分析
ケアプランとは、各種介護サービスの手続きの代行や調整を行う居宅介護支援(ケアマネジメント)において、利用者ができる限り自宅で自立した日常生活を送れるように、状況に応じた様々な介護サービスの利用を考えて作成するサービス計画のことです。介護保険法に基づいて公表されている介護サービスは現在25種類53サービスあり、ケアマネージャーはたくさんのサービスの中から、利用者の自立支援につながるよう適切なサービスを選択します。介護サービスはケアプランで決まると言うこともできるでしょう。

ケアプランの作成は、ケアマネージャー(介護支援専門員)が利用者宅を訪問し、現状から課題を分析し把握することから始まります。それに基づいて利用者とその家族、介護サービス事業者と話し合いを行い、自立支援につながるようにするにはどのサービスを利用すれば良いのか検討します。その結果を踏まえて、ケアマネージャーと利用者が利用する介護サービスと回数を決め、ケアプランが作成されるという手順です。ケアプランが作成されて初めて介護サービスが開始されます。

こうした介護の基本ともなるケアプランの作成に役立てるため、AIのデータ分析を活用したシステムの開発が、近年注目を集めています。大量のデータを人間よりも短い時間で学習・分析できるAIを用いて、ケアプラン作成に掛かる負担を軽減するのが目的です。AIのノウハウを持つ大手やベンチャーのIT関連企業と介護サービスで実績を積んだ企業が提携してシステムの開発に取り組んでおり、すでに検証段階に入ったシステムもあります。

ケアプラン作成の現状とAIデータ分析の導入

ケアプランはヒアリングから具体的なプランの作成までに平均してグループホームなどで約3〜7時間、小規模多機能型居宅介護などでは約9〜12時間の時間が掛かっています。それぞれの利用者が必要とする介護サービスは、利用者の現在の状態によって設定するため、日々変化し続ける状況を把握し、それに合わせてケアプランを更新することが必要です。日本は既に総人口の4人に1人が65歳以上の高齢者で、2040年には3人に1人が65歳以上になると予想されています。1人のケアマネージャーが担当する利用者の人数は約40〜60人程度です。利用者1人のケアプラン作成に5時間掛かると考えると、ケアマネージャーが担当する全員のケアプラン作成には200?300時間が必要な時間となり、かなりの負担になっていることが分かります。今後、介護サービスはますます需要が高まると思われ、それに伴いケアプランの作成が増えることはあっても、減ることはなさそうです。

先述のように高齢者の自立支援介護の現場では、ケアプランと呼ばれる介護サービス計画を個別に作成することから始まります。必要とされる介護サービスは人それぞれ異なるため、ケアプランも個別に作成する必要があります。その際、他の業務を並行してこなしながらヒアリングを行い、さらに計画書を作成することは、ケアマネージャーの負担にもなっています。また、ケアマネージャーの経験やスキルによってケアプランのクオリティにバラつきが生じることも課題です。

AIのデータ分析でケアプラン作成をサポート

介護 AIデータ分析
開発チームによって内容は様々ですが、それまでに作成した膨大なケアプランデータをAIに学習させ、ケアプランを提案する点はどのシステムも共通しています。ケアプランの作成にAIを導入するメリットは幾つかあり、その中でも大きなメリットとされるのが時間とクオリティの2点です。

過去のケアプランを学習したAIに利用者の心身の状況や住環境・周辺環境、家族や周囲からのサポート状況など必要な情報を入力すると、様々な介護サービスを組み合わせたケアプランが提示されます。ケアマネージャーはこのプランを参考に、細部まで利用者に適しているかこれまでのノウハウも反映させて検討しながら最終的なケアプランを作成するシステムです。AIが提示するのはあくまでも試案ですが、過去の事例を参照したり、介護サービスに確認を取ったりとケアプランの作成に必要な資料の準備に費やす時間を大幅に削減できます。

また、ケアマネージャーの経験値によるスキルの違いは、ケアプランの作成に少なからず影響します。AIを活用することでスキルの違いによるクオリティのバラつきを最小限に抑える効果が期待できるというのが、もうひとつのメリットです。3年以上の経験があるケアマネージャーは全体の約56%と半数を超えてはいるものの、まだ4割超の人は十分な経験を積んでいません。同僚に経験豊富なケアマネージャーがいない環境もあるようです。こうした条件の違いも、AIを利用したシステムならクオリティの差を埋めてくれます。

AIデータ分析がもたらす自立支援介護のクオリティの向上

AIによるデータ分析の効果は、ケアプランの作成に掛かる時間を削減したり、クオリティの差を縮めたりするだけではありません。ケアマネージャーに掛かる負担が軽減する分、利用者へのヒアリングにより多くの時間を充てるようになれば、自立に向けた介護支援全体のクオリティ向上にもつながります。言い換えれば、人工的なAIの利用で、より人間味のある温かい介護サービスを提供できるようになるということです。

人員不足やスキル不足が課題として挙げられる介護サービスの現場ですが、世界でも類を見ない超高齢社会を迎えた日本では、これからより一層その重要度が増していきます。さらなる介護サービスの充実を図る上で、AIデータ分析は各方面から大きな期待が寄せられています。

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