【後編】産学官連携による空き家利活用プロジェクトとは?『産学官連携プロジェクトで得たもの、今後の展望 〜京浜急行電鉄×横浜市大×横浜市金沢区の試み〜』

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横浜市金沢区で、産学官連携による空き家の利活用として「ヨコイチ空き家利活用プロジェクト」が実現しました。
前編では、その経緯や進め方について、京浜急行電鉄株式会社 生活事業創造本部まち創造事業部 課長補佐の菊田知展氏(写真左)、公立大学法人横浜市立大学 企画財務課課長補佐(地域貢献等担当係長)の金井国明氏(写真中央)、横浜市金沢区総務部区政推進課まちづくり調整担当係長の今野剛氏(写真右)に伺いました。
後編では引き続き、プロジェクトがもたらしたものや今後の展望など伺います。

3者の目指す方向性が一致、三方良しが成功のカギ

Q:3者が連携するメリットとは何でしょうか。

金井:横浜市立大学の国際都市学系まちづくりコースでは、従来の座学に加えてフィールドワークにも力を入れ、地域で実際の課題を目にして解決に取り組むことを積極的に取り入れた、実践的な教育を進めてきました。
それで従前から担当教員が地域で学生が調査をする際などには、担当教員が区の区政推進課や関連部署に話をして、個別に対応していました。大学は、我々のような公立であっても、なかなか地域住民の方々との接点は多くありません。それが本プロジェクトのように、地域に最も近い行政機関とともに行う活動になったことで、地区を良くするための活動だというのが上手く伝わって、態勢的にも意識的にもご協力いただきやすかった点が1つです。

また、京浜急行電鉄に加わっていただくことで企業の方々の実践的な視点からアドバイスを貰えたり、実際の物件をもとに調査、研究を進めることができました。そして、この連携取組の結果として、学生の考えたプランに不動産を生業としているプロの手を加え、不動産物件としてブラッシュアップされていくのを見ることで、ビジネスのあり方を学生が直接体験できたのも大きなメリットでした。

菊田:京浜急行電鉄としては、不動産にかかわる齊藤先生の知見や、学生の考えたプランは、新しいサービスの検討にたいへん参考になっています。
また、定期的に自治会等の地域とコミュニケーションを取っている金沢区も一緒に取り組むことで、住民の方々に安心感を持ってもらい、プロジェクト自体がとてもスムーズに進められたと考えています。

今野:金沢区としては、空き家問題に対して住民の方から苦情や相談の連絡があれば、まず区政推進課が伺います。
それで樹木繁茂ならこの部署、害虫駆除ならこの部署といった具合に各担当に対策や対応を振り分け、どこも引き受けられない場合に当課で対応するといった形でこれまでやってきました。
今回のプロジェクトについては、前向きに空き家を再生できる対応策の雛形となるもので、産官学連携の良い事例となれば今後にも活かしていけると思いました。
空き家問題は全国の自治体共通の悩みですから、具体的な取り組みを発信していくことは、その地域だけでなく全ての自治体にとってプラスになることでもあります。

シェアハウスの次は庭シェアリング、と若いアイデアで続く試み

空き家利活用
Q:プロジェクトはその後、どのように進んでいますか。

金井:2017年度にも同様に、まちづくりコースの3年生前期授業で産学官連携に基づく実習を行いました。
テーマは完全空き家になる前の、準空き家です。空き家には急になるのではなく、その前段階として、高齢夫婦のみや配偶者に先立たれて高齢者の一人暮らしといった状況があるものです。その段階で空き家になることを未然に予防し、それを活用・再生できないかというのが、2017年度の目標設定でした。
そして、準空き家の利活用プランを前回と同じように学生が考え、実現させたプランが「庭のシェアリング」です。お年寄りには自邸の庭の手入れは体力的に負担となります。また、マンション住まいの若いファミリーには子どもたちを安全に遊ばせたり、バーベキューなどをできる庭が時々にでも使えればというニーズがあります。
そこをつなげるのがシェアリングです。

菊田:シェアリングは自動車や自転車、民泊など様々な領域に広がっていますが、「庭」というのは新鮮なアイデアでした。不動産における所有の概念に新しい何かをもたらしてくれそうな点から評価させていただいたのです。

金井:実際、2018年3月にまちづくりコースの学生が「富岡グリーンフェスタ」という1日イベントを、京急不動産がリノベ―ションしたシェアハウスの庭をオーナー様のご協力のもとでお借りして開催しました。
その際、地域住民との調整は金沢区にも入っていただき、事前にご理解をいただくことができました。そこで花苗や三浦野菜の販売、地域住民主催のフリーマーケットを行ったのですが、その企画のとりまとめも地域に広報するためのチラシの作成も、すべて学生たちだけで行いました。当日は100名ほどのご参加があり、地域交流という意味である程度地域に貢献できたのではと思っています。

今野:区政推進課では、空き家問題はじめ地域の色々な問題に対応しています。
お年寄りや子どもたちの問題も含まれますから、世代を超えた住民間の交流につながることは大歓迎です。そもそも住宅地の高齢化が進むと住民、特に高齢者世帯の孤立化は深刻になります。ですから、若い学生たちが何かやるらしいというようなイベントは、住民の方々にとって関心の高いことなのです。実際に多くの皆様が訪れてくださったのは、その証しでしょう。
なお、「環境未来都市 横浜“かなざわ八携協定”」の連絡会では関係団体間で産学官の情報共有も促進されており、空き家の活用とは異なる活動ではありますが、並木地区の産業団地の多くの企業と市大と金沢区が連携し、横浜金沢臨海部産業団地の魅力発信を目的とする活動も動いているなど、産学官の連携が広がりつつあります。

パートナーも新たに、さらなる連携・プロジェクトが進行中

空き家利活用
Q:今後の展望をお聞かせください。

金井:2018年度についても、やはり空き家の利活用をテーマに選定して学生が実現可能なプランづくりに取り組む予定です。形になるというのは学生にとって非常に大きなモチベーションになりますし、プランの作成や具体化を通してビジネス、仕事というものを体感できるのは学生にとってはなかなか経験できない貴重な機会になると考えています。今後も実現性を重視して、産学官という連携を活かしていきたいですね。

菊田:空き家をシェアハウスに再生するスキームは、当社ではこのプロジェクトで初めて形になったものです。
この取り組み以降、当社では空き家・空き地対策のサービスを複数展開しています。例えば、京急沿線の空き物件をオーナー様の負担ゼロで再生し、転貸する「カリアゲ」というサービスを提供しています。このサービスは、当社沿線全体で展開しておりますが、空き家利活用プロジェクトの対象地である横浜市金沢区では、特に多くのご相談をいただいています。
また、産官学の空き家利活用プロジェクトを含めた、当社の空き家・空き地対策が認知され、様々な連携の話が持ち込まれるようになりました。実際、地元の湘南信用金庫とは現在、不動産をベースにした新たな金融商品の開発を進めています。今後も事業性の高いアイデアなどが、このプロジェクトから生まれればと楽しみにしています。

今野:2016年度の取組で完成したシェアハウスは留学生をどう地域と交流させられるかなどといった課題がまだあるものの、地元にとっては光明となる成功例です。
空き家は単なる負の遺産として捉えるべきでなく、地域の財産に転化できるような可能性を秘めているものと言えます。このプロジェクトは、横浜市内の他区と比べても先進的な取り組みです。横浜市大とは金沢区にある横浜金沢臨海部産業団地の魅力発信を目的とするAozora Factoryという活動を通じて、このエリアの活性化を目指す取り組みが進行中ですし、産学との連携をますます深めて、地域振興に役立てていきたい考えです。

(プロフィール)
京浜急行電鉄株式会社
生活事業創造本部まち創造事業部
課長補佐
菊田 知展

2009年、京浜急行電鉄株式会社入社。
流通事業、ビル賃貸事業等の担当を経て、京急沿線の横浜及び横須賀エリアのまちづくり担当として、生活事業創造本部 まち創造事業部へ配属。 趣味は、旅行、テニス。

公立大学法人横浜市立大学
企画財務課課長補佐
(地域貢献等担当係長)
金井 国明

2015年4月より現職。横浜市立大学において、地域社会の課題(ニーズ)に対し、大学の先生方の知見を活用した取組を進める中で、空き家の利活用の取組推進に携わっている。趣味はテニス。

金沢区役所
総務部区政推進課
まちづくり調整担当
係長
今野 剛

横浜市役所入庁後、都市整備局で土地区画整理事業、建築局で都市計画等の業務に携わり、2017年4月より現職。趣味は、SF小説の読書、スポーツ観戦等。

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