ドイツに学ぶ働き方改革の鍵は「生産性の向上」

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安倍政権が掲げる働き方改革では、長時間労働の是正を目指しています。
そのような日本にとって、労働時間短縮のお手本となるのは、同じ「物づくり大国」を目指すドイツです。ドイツの労働生産性は日本を上回り、世界の主要国の中でも労働時間が短く、それでいて経済は好調となっています。

そこで、短時間の労働で高いパフォーマンスを発揮することが評価されているドイツの労働環境についてまとめました。

日本より労働生産性が高い「物づくり大国ドイツ」

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「物づくり大国」を目指すドイツでは、2011年に「ハイテク戦略2020」で示された「未来プロジェクト」のひとつとして、「インダストリー4.0(第4次産業革命)」 が提唱されています。IT技術による生産の自動化とAIを活用した「サイバー・フィジカル・システム(CPS)」でスマート工場を実現し、生産の効率化とコストの削減を図るものです。ドイツは2016年に経常収支が世界最大となり、経済は好調を維持しています。

また、2016年のOECDの調査による時間当たりの労働生産性を見ていくと、G7の中では、アメリカが69.6ドルと首位、ドイツが68.0ドルで続き、46.0 ドルの日本は最下位の結果です。年間の労働時間においては、ドイツの1363時間に対し、日本は1713時間と350時間もの開きがあります。日本はドイツよりも1ヵ月当たり30時間弱、20%程度多くの時間を働いていますが、ドイツのほうが約1.5倍労働生産性が高いという計算になります。

日本は労働時間に見合った成果を上げているとは言えず、労働生産性を向上させ労働時間を短縮することが急務なのです。

長時間労働を防ぐ法律と国柄

ドイツでは、長時間労働の禁止が法律で整備されています。役所による抜き打ち検査の結果、1日10時間を超える労働を行わせていた企業に対しては、最高で1万5000ユーロ(約180万円)もの罰金が徴収されます。高額な罰金の支払い義務があるのは企業ではなく、長時間労働をさせていた部署の管理職です。マネジメント能力が低いと見なされ、勤務評定にも響くため、管理職は部下が1日10時間を超えて働くことがないよう管理し、部下に退勤を促します。

有給休暇の制度面では、最低で年24日取得することが法律で義務づけられ、多くの企業では30日間の有給休暇を付与しています。所定の労働時間を超える部分は代休として振り替え、年に10日前後取ることも可能です。「ワーキング・タイム・アカウント」(労働時間貯蓄口座)が導入されている企業では、残業した分の時間を弾力的に利用できます。口座に貯まった残業時間を利用して有給休暇を取得したり、出勤時間を遅くしたり、退勤時間を早めたりすることが可能なため、労働時間の短縮につながっています。

実際にそれほどの休暇を取得できるのは、「休暇を取得する権利」が広く根づいていることもあります。管理職を除くと、2〜3週間の休暇を取得することは一般的ですので、周囲に特段気を使う必要がないのです。

さらに、有給休暇と病欠が区別されていることも、ドイツと日本の大きな違いです。ドイツでは病気やケガで休む場合、6週間まで給与を支払うことが法律で義務づけられています。日本では病欠に対する健康保険の傷病手当金はありますが、多くの人が病欠に備えて有給休暇を取っておくことも、使い切る人が少ない理由です。

労働時間の短縮には日本人の意識改革も必要

日本で有給休暇の取得が進まないのは、「私がいないと仕事が回らない」と考える人が多いことも要因のひとつに挙げられます。例えば、日本では顧客からの問い合わせに対して、担当者が不在でほかの社員が答えると、気分を害する人が少なくないのではないでしょうか。

ドイツでは仕事は企業に付随していると考えるのが一般的なので、担当者が長期の休みを取得していても、顧客は回答が得られれば問題ないのです。もちろん担当者は休暇中に会社のメールチェックをする義務もありません。

仕事がシステム化され、担当者不在でも状況が把握できる仕組みができていれば、実際には大きなトラブルは起りにくいでしょう。しかし、日本では顧客のために「自分がいないと」と考え、顧客側も担当者による対応を望むという意識が「休みにくさ」を生んでいるのです。ただし、日本のサービス水準の高さには、このような意識による部分もあります。

日本で有給休暇を取得しやすくするためには、顧客側の意識改革も求められるのです。また、残業時間で会社への忠誠心を推し量って評価するのではなく、短時間で効率良く成果を上げることを評価するべきと言えます。

日本の労働時間を短縮するため、法律の整備によって有給休暇の取得に強制力を持たせることも重要です。しかし、仕事の持ち帰りを防ぎ、休暇中の連絡義務を課さないためには、「休暇を取得する権利」を日本の企業に根づかせることも課題となるでしょう。

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