【後編】地方都市における「稼げるまちづくり」推進の取り組み『人材確保や資金調達、自走できる仕組みづくり。有効な事例を各地に広げて〜内閣府地方創生推進事務局〜』

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稼げるまちづくり
現在の日本は人口減少局面にあります。地方ではそれが地域経済を縮小させ、それがさらに人口減少へという負のスパイラルが懸念されます。
前編では、地域が民間の活力も用いて経済的な創生を果たし、自走できる「稼げるまちづくり」施策の背景や概要について、内閣府地方創生推進事務局の参事官補佐、伊藤嘉道氏と担当者の宮﨑航一氏に伺いました。
後編では引き続き、事例の詳細や今後について伺います。

任期4年、月額委託料90万円の推進役を全国公募。自走できる組織づくりも

Q:2017年3月に、「稼げるまちづくり」の事例集「地域のチャレンジ100」が公表されています。その中から、特徴的な事例を教えてください。

宮﨑:ひとつは、宮崎県日南市における外部人材の活用による商店街の再生と、民間主体の自走の仕組みづくりのケースです。舞台は中心市街地に位置する油津商店街で、空き店舗の増加に悩んでいました。そこで2013年に「テナントミックスサポートマネージャー」、通称サポマネというまちづくり推進役を全国公募したのです。
月額90万円の委託料で任期は4年、商店街に20店舗を誘致するという明確な条件と任務を示したことで、333人もの応募を集めました。選出されたサポマネが家族を伴って移住し、まず行ったのが地元市民と交流し、市民イベントを多数実施するなどして信頼感を得ることでした。そして2014年には商店街の自走を見据え、サポマネも含めた約40人の市民出資にて株式会社油津応援団を設立しました。市民の手でカフェを再生し、遊休地に市民交流施設や地元食材レストラン、コンテナを活用した多世代交流モールなどを整備して、まちの空気感を一変させたのです。
その結果、20件以上の空き店舗への出店が実現しました。なお、その中には東京のIT企業からの誘致も含まれています。このように以前にはなかった仕事をまちに呼び込むことで、地元出身者のUターンなど新たな雇用にもつながったことが、この事例の優れた点です。この事例における主なポイントとしては、外部人材を活用したことや商店街の自走を見据えた体制の構築を行ったこと、サポマネが着任後まずは地域住民との信頼感醸成に向けた活動を行ったこと等があげられます。

SPCによる官民複合施設開発スキームで、資金調達を実現

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Q:ほかにも目を引く事例はありますか。

宮﨑:官民複合施設を核として集積拠点を形成できた、岩手県紫波(しわ)町のケースがあります。
1998年に公共施設の集約や整備のために、町が紫波中央駅前に事業用地を取得しましたが、財政状況の悪化等で遊休化していました。そうした環境の中、2007年に、町が東洋大学と協定を結び、公民連携手法による駅前町有地の活用について可能性調査を実施することになりました。
2009年には町民や地元企業のニーズ把握をもとに公民連携基本計画を策定し、「オガールプロジェクト」が始動します。まずプロジェクトの運営主体として、まちづくり会社を設立し、その会社が遊休化していた町有地を町から賃借しました。
そして、建物を建築する事業主体としてSPC(特別目的会社)を出資設立し、そのSPCが地元金融機関や政府系ファンドから資金調達を行って、官民複合施設「オガールプラザ」を整備したのです。
その施設の内、図書館と地域交流センターという公共部分の建物は竣工と同時にSPCから紫波町へ売却し、建築資金を一部回収しています。
産直マルシェや飲食店、クリニック、学習塾など民間部分の建物については引き続きSPCが貸主として事業者に賃貸し、管理・運営は当初設立したまちづくり会社に委託し、賃料収入によって金融機関からの借入金の返済や出資者への配当実施を行う仕組みです。
こうして遊休地が整備され、来街者の増加や新規雇用の創出につながりました。また、周辺町有地においてもホテルや国際規格のバレーボール専用体育館を有する民間複合施設、町によるエコハウス基準の分譲宅地などがつくられた結果、駅前周辺地価の上昇にもつながっています。
地方の不動産活用において見習うべき点が多くある好事例です。本事例は、地方の不動産の活用に焦点をあてた事例集として「地方創生に資する不動産流動化・証券化事例集」にも取り上げております。

伊藤:ハコモノ行政に陥らないように、まずテナントニーズを把握した上で、民間の創意工夫による補助金に頼らないスキームで整備を行ったのが大きいですね。テナントを先付けした賃料見込み収入から逆算し施設規模を決めるなど、身の丈にあった事業構築も参考になります。

事例を効果的に波及させるべく、セミナーや意見交換会、現場視察会も開催

稼げるまちづくり
Q:こうした事例は、どのように広報されているのですか。

伊藤:もちろん事例集を作成して内閣府ホームページでも紹介していますが、それだけでは足りません。
そこで、2017年から「稼げるまちづくりセミナー」を各地で開催しています。セミナーでは4つの事例紹介にパネルディスカッションを行っておりますが、これまでに開催した岩手県遠野市、熊本県熊本市、広島県尾道市ではいずれも70人、150人、120人という定員に達し、好評でした。また、有志の参加による立食での意見交換会や、翌日には現場視察会も行っています。

宮﨑:セミナーの開催については我々から全市町村にお知らせするほか、Facebookやツイッターの地方創生アカウントからも発信しています。また、まちづくり会社や金融機関の関係団体など外部組織にもお願いして広報しています。おかげで、セミナーには地方創生に関心を持つ多様なセクターの方々が集まっています。

熊本市での開催はやはり被災地の復興がキーワードとなりました。熊本市では熊本城復旧過程だからこその観光資源活用について事例紹介がありました。また、遠野市では廃校を産官学民連携で人材育成拠点として活用している「遠野みらい創りカレッジ」という趣きある場所を会場にしました。今後も、稼げるまちづくりの全国展開を図っていきたいと考えています。

(プロフィール)
内閣府
地方創生推進事務局
参事官補佐
伊藤嘉道
2018年から現職に着任。趣味はダーツ。

内閣府
地方創生推進事務局
宮﨑航一
2016年7月から民間企業より出向。趣味はまち歩き、食べ歩き。

内閣府地方創生推進事務局「稼げるまちづくり」サイト
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/seisaku_package/index.html

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