【前編】生涯自立した生活を! 介護現場で活躍する「マッスルスーツ」の今と未来

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東京理科大学発のベンチャー企業である株式会社イノフィス(以下イノフィス)では、「生きている限り自立した生活を実現する」ためのウェアラブルロボット「マッスルスーツ」の開発に取り組んでいます。

今回はイノフィス代表取締役社長の古川尚史CEO(写真右)と、企画部広報担当の森山千尋さん(写真左)に「マッスルスーツ」の具体的な機能や可能性について話を伺いました。

東京理科大学発のベンチャー企業、イノフィス

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Q:まずは「マッスルスーツ」開発のいきさつや背景を教えてください。

古川:最初のきっかけは、静岡県で訪問入浴介護をはじめ総合的な介護サービスを提供しているアサヒサンクリーンという企業から相談を受けたことでした。同社から、「介護を担当しているスタッフの身体負担がどうしても大きく、その負担を何とか減らせないか」という相談が東京理科大学の小林宏教授にありました。そこで小林教授が、介護者の負担軽減のために開発したのが「マッスルスーツ」だったのです。

Q:イノフィス設立前から既に「マッスルスーツ」の開発が行われていたということでしょうか。

古川:「マッスルスーツ」自体は2001年から開発が始まっています。この「マッスルスーツ」の開発を推進し、商品として販売するために2013年末に設立されたのがイノフィスという企業です。イノフィスは一般的な大学発ベンチャー企業のように大学で生まれたアイデアを商品化することからスタートしたわけではなく、商品ありきの状態で生まれました。

イノフィスは、介護に従事している方が長く働けるようにというリクエストのもとに開発された「マッスルスーツ」を広く提供するために設立された企業です。そのような経緯もあり、「生きている限り自立した生活を実現する」ことをイノフィスのミッションとして掲げています。

また、私どもが手掛けるロボット事業では、例えば加齢やつらい肉体労働などに悩む方の手助けになるような、あくまでも人を主体にしたロボットの開発に取り組んでいます。

介護現場で活躍する「マッスルスーツ」とは

マッスルスーツ
Q:「マッスルスーツ」とはどのようなものなのでしょうか。

古川:「マッスルスーツ」は、人工筋肉の働きで、装着者が、人の身体や重いものを持ち上げたり、長時間前傾姿勢を続けたりする際の動作をアシストし、身体への負担を軽減させます。例えば、介護現場では、介助が必要な方を抱えてベッドから車いすに移動する時や、中腰姿勢でおむつを交換したり、身体を拭いたりする時などに利用いただいています。

この人工筋肉が大きな特徴のひとつです。「マッスルスーツ」には、ゴムチューブをナイロンメッシュで包み、両端を金属で固く止めた、空気圧式の人工筋肉を使用しています。空気を注入することでゴムチューブが膨張し、非常に強い力で収縮しようとするので、その力を使って装着者の動作をアシストします。

Q:現時点で何種類の「マッスルスーツ」を展開しているのでしょうか。

古川:2014年から毎年新しいタイプの「マッスルスーツ」を発表しているので、2017年で4代目となります。
2014年販売開始の「マッスルスーツ」の原点でもある標準モデルは、使用する際にコンプレッサーで空気を注入する必要がありました。しかし、コンプレッサーは使用する際に大きな音がするのと、電源につなぐコードが作業の邪魔になる可能性があるということで、2016年には電源が要らない「スタンドアローン」モデルを打ち出しました。その後も開発を進め、2017年から、よりスタイリッシュになった「スタンドアローン」を販売しています。

この「スタンドアローン」モデルは、手元のポンプで空気を注入することができ、モーターやバッテリーが要りません。また、スイッチ操作やセンサー検知も不要で、作業に集中いただけます。

Q:実際に「マッスルスーツ」を装着してみると、負担がどれだけ軽減されているのか分かりますね。「マッスルスーツ」自体も見た目ほど重さを感じませんが、重量はどれくらいあるのでしょうか。

古川:「マッスルスーツ(スタンドアローン)」自体の重量は5kg程度になります。ランドセルに教科書を詰めた重さとほぼ同じくらいなので、そこまで重いと感じることはあまりないと思います。

Q:製品開発時に特に大事にするポイントはありますか。

古川:開発から販売へのスピード感は大事にしています。例えば実際に「必要だ」「欲しい」と声が上がっている時、その状態が続いている内に要望に応えられる製品をつくらないと意味はないですよね。特に現代は色々な製品が世に出てきているので、スピードは非常に重要だと考えています。

森山:当初のモデルですと、機体だけで8kgほどの重量があったため、特に女性の方から装着するのが大変だという声が寄せられていました。そのため、製品自体の軽量化やサイズダウンもどんどん進められています。

(プロフィール)
株式会社イノフィス
代表取締役社長CEO
古川 尚史

1995年日本銀行入行。その後、2000年から約2年間、ボストン・コンサルティング・グループに勤務した後、不動産投資ベンチャー企業を創業、代表取締役社長を務める。2004年よりベンチャーの経営支援に携わり、2007年から2015年には経営共創基盤(IGPI)でディレクターを務める。サンバイオ株式会社執行役員を経て、2017年より現職。
趣味は、ヨット、スノーボード等。

企画部
広報担当
森山 千尋

2018年入社。
趣味はフラメンコ。

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