どうなる? 介護報酬改正

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介護報酬改正
2018年4月に行われた介護報酬の改定ではどのような点が重視されているのか、これまでの介護報酬改定の流れと比較して解説していきます。

6年ぶりの増加となった2018年度の介護報酬改正

介護報酬とは2000年に施行された介護保険制度に基づき、提供した介護サービスに対して保険と公費から、サービスを提供した事業者に支払われる報酬です。医療サービスを提供した事業者に医療保険から支払われる費用を診療報酬と呼ぶのに準じて、介護報酬と呼ばれています。

介護報酬は介護サービスの種類によって設定され、サービスの提供の仕方や利用者の状況により基本報酬に加算・減算されて支払われる仕組みです。基本報酬に加算される仕組みにすることでサービスの提供事業者は、多くの報酬を得るためにより良いサービスの充実や取り組みを強化するようになります。

介護サービスの事業者に支払われる介護報酬の改定は、プラスになるかマイナスになるかによって事業者が廃業に追い込まれる事態を引き起こす要因にもなるため、各方面の専門家の意見なども聞きながら慎重に検討が重ねられて決定されます。前回の改正では大幅な減少となりましたが、今回の改正ではわずかですが6年ぶりの増加に転じました。

介護報酬は介護保険制度によって定められる

介護保険制度は「健康保険」「年金保険」「雇用保険」「労災保険」に次ぐ5番目の社会保険制度で、2000年度(平成13年度)から導入されました。
それまでは「老人医療」と「老人福祉」の2つの制度がその役割を担っていました。「訪問看護サービス」や「老人保健施設」などは老人医療が、「ホームヘルパー」や「デイサービス」、「特別養護老人ホーム」などは老人福祉が受け持っていましたが、異なる制度で運用するサービスは利用しづらいのが実状でした。これらの異なる分野にまたがっていたサービスを一本化する目的で導入されたのが介護保険です。

介護保険制度が導入されたことで、それまで「施し」の印象が強く利用しにくかったサービスも、加入者全員が費用負担をすることで、利用に対する心理的なマイナスイメージを払拭しました。今までなかった新しい介護サービスも提供されるようになり、加入者がサービスを選んで利用できるようになったのもメリットのひとつです。

2018年度の介護報酬改正のポイントは4つ

介護保険制度は、円滑な保険給付実施のために、3年を1期とした介護保険支援事業計画の策定をします。期ごとに状況と介護保険事業が掛け離れていないかどうか、事業の見直しが行われています。

2018年度改正のポイントは、大きく分けて4つあります。「地域包括ケアシステムの深化・推進」と「自立支援・重度化の防止」、「多様な人材確保と生産性の向上」と「介護サービスの適正化・重点化による制度の安定性と持続の可能性」です。2025年には団塊世代が75歳以上に、2040年には団塊ジュニア世代も65歳以上の高齢者になることを踏まえて、2015年度改正のテーマをより深く推し進める内容となっています。

地域包括ケアシステムをさらに推し進める

介護報酬改正
適切な医療サービスや介護サービスを誰もがどこにいても受けられるようにするのが、地域包括ケアシステムの軸となる考え方です。これに基づき、複数のサービスで介護報酬が増額になりました。

・ターミナルケアや看取りの評価
ターミナルケアや看取りが評価され、新たに加算される項目が増えました。これにより、ターミナルケアを多く実施する事業者が加算を得られるようになります。これまで評価されなかった「たんの吸引」などの医療ケアに対して新たな加算項目が設定され、より手厚い医療ケアの充実を促しています。

・医療と介護の連携の強化
居宅介護支援では入院時の情報連携加算について取得条件の変更が行われたり、退院・退所加算の評価が上乗せされたり、特定事業加算に新たな加算区分が設定されたりと、医療機関と積極的に連携して取り組む事業者をより評価できるように改正されました。また、介護リハビリテーションを開始する際の要件が緩和されたり、医療と介護でリハビリテーション計画書の書式を統一するなどの見直しが行われました。

・介護医療院の創設
医療との連携では介護医療院が新設されることも、今回の介護報酬の改正に盛り込まれた内容です。これまでの介護療養病床の廃止に伴い提案された、新たなサービスのひとつです。

・認知症の人への対応を評価
認知症に対するケアを充実させるために、看護職員を多く配置する施設や専門的なケアを提供している施設に対し、新たな加算項目が設定されます。これまで加算が設定されていなかったサービスでも、認知症専門ケアを評価する加算や若年性の認知症患者を受け入れに対する加算が設けられました。

自立支援や要介護度の重度化の防止のための取り組みを強化

高齢者でも自立した生活できるように、リハビリテーションを中心に取り組みが強化されています。今回の介護報酬の改正でも複数のリハビリテーションに関するサービスで、介護報酬が増額されています。

・リハビリテーションの強化を評価
2つの評価区分が新設されたり加算の単位が見直されたりすることで、医師による指示が反映されたリハビリテーションのマネジメントが評価されるようになりました。要支援者のリハビリテーションを行う施設でも新たに加算項目が設定され、他職種連携の取り組みなどが評価されます。

・訪問介護の現状に大きな変革
利用回数の多すぎる生活援助中心の訪問介護を是正するため、介護報酬が見直されています。これまでと比べて身体介護中心型は基本報酬が上がり、生活援助中心型は基本報酬が下がる方向に改正されます。また、通常より頻度の多い訪問介護プラン(生活援助中心型の場合)はケアマネージャーに市区町村への届け出が義務づけられ、プランの是正が促されるようになります。

・デイサービスで新しい評価基準
デイサービスにはバーセルインデックスという評価方法が採用され、新たな介護報酬の加算基準が設けられました。日常生活動作(ADL)を維持するもしくは改善するなどの結果が、一定の基準に達した場合に評価されるようになり、自立支援を推し進める体制を促す効果が期待できます。

・排せつに関する支援は各サービスで評価
自立支援や重度化の防止で、リハビリとともに注目度の高いのが排せつです。排せつ支援加算は医師等が排せつの要介護状態を改善できると判断し、かつ利用者もそれを望む場合に行われた分析や支援に対し加算されます。全介助から一部介助へ、一部介助から見守りへと改善することが評価の目安となっています。

多様な人材の確保と生産性の向上

介護報酬改正
介護サービスの人材不足状況を改善するため、人員配置の加算評価基準が緩和されたり、距離や時間的な問題の解決にICT(情報通信技術)の導入ができたりと、介護報酬の方面からも見直しが行われました。

・生活援助に新しい人材を確保
身体介護はこれまで通り介護福祉士や訪問介護員が行いますが、生活援助が中心の訪問介護では短時間で修了できる新たな研修カリキュラムを設け、訪問介護ヘルパーの人材を確保できるように改正されます。ただし、生活援助を行える人員は確保しますが、生活援助中心の訪問介護の介護報酬は減額され、身体介護中心の訪問介護に力を入れています。

・介護ロボットで夜間業務の効率化
特別養護老人ホームなどの夜勤業務の効率化を図るため、見守り機器などの介護ロボットの導入も推進されます。介護ロボットを導入した場合、夜間の介護職員の配置加算について、基準が緩和されるようになります。

・テレビ電話でリハビリテーション会議に参加
これまでリハビリテーション会議には医師の参加が義務づけられていましたが、インターネットを使ったテレビ電話などでも参加として認められるようになりました。介護給付費の請求も2018年4月よりインターネットか電子媒体による請求が原則になるなど、ICTの導入が積極的に行われています。

介護サービスの適正な運用のための改正

介護サービスが適正に運用されるように、介護報酬の改正では毎回、収益の多い介護サービスで報酬が削られるのがセオリーです。

・訪問型のサービスで集合住宅減算が拡大
集合住宅※などへの訪問型サービスでは、これまでの集合住宅減算について建物の範囲が拡大し、減算幅も大きくなります。定期巡回型のサービスでも、利用者数に応じて減算幅が拡大します。
※事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内に存在する建物

・定期巡回や随時対応型のサービスでも減算幅が拡大
訪問看護と介護予防訪問介護では、両サービスともに介護報酬の基本報酬が引き下げられました。介護予防訪問介護では、訪問看護ステーションと病院の両方でさらに基本報酬が引き下げられます。

・大規模型の通所介護でも基本報酬が引き下げ
大規模型の通所介護では基本報酬が引き下げられ、サービス提供の仕方も2時間ごとから1時間ごとへと細かく分けられました。通所型のリハビリテーションでも長時間のサービス提供に対しての基本報酬が引き下げになり、サービスの提供時間も1時間ごとに固定されました。

・福祉用の器具レンタルに上限価格を設定
福祉用の器具は利用者の状況に応じて交換できるように、通常はレンタルが原則です。同じメーカーの同一商品であっても仕入れ経路やメンテナンス費用などが異なると、レンタル業者によって価格に差が生じてしまいますが、今回の介護報酬の改正でレンタル価格に上限が設けられるようになりました。

2018年度の介護報酬改正は高齢者の自立支援が大きなテーマ

2018年度の改正のテーマは、地域で介護・医療・予防・住まい・生活支援が連携しケアシステムを進化させることです。最も重要視されているのが医療との連携であり、どこに住んでいても適切な医療や介護を受けられる、安心できる社会の実現が目標のひとつとされます。さらに、障害のある人へのサービスと高齢者へのサービスが連携し、誰もが共生できる地域社会の仕組みを生み出すことが、地域包括ケアの重要な要素に据えられています。

2015年度の改正より、それまでの介護の考え方から大きな方向転換が行われました。高齢者には介護が必要になるという考え方から、高齢者でもあまり介護を必要とせず、自立して生活できるようにするという考え方への転換です。要介護度に合わせて介護サービスを提供するだけでなく、要介護度が軽くなるように、介護を必要としないように、介護サービスの提供の仕方も見直されました。
そして、2018年度の改正でも高齢者の自立支援や重度化防止の推進などが大きなテーマとなっています。

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