【前編】首都圏では集合住宅も課題に!空き家問題の対策を詳しく学ぶ『全国の空き家事情と不動産としての問題〜オラガ総研株式会社〜』

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空き家問題
空き家の増加が社会問題化している中、2017年7月17日に、神奈川新聞社・テレビ神奈川・空き家対策推進協議会準備会議の主催、川崎市・川崎商工会議所共催による「あなたの実家を『空き家』にしない対策セミナー」が開催されました。
そこで行われた、オラガ総研株式会社代表取締役社長 牧野知弘氏によるセミナー「空き家のリスクと解決への処方箋」の概要をレポートして紹介します。

牧野氏はホテルやオフィスビルなど不動産事業の企画を手掛け、空き家問題では自治体やNPOとの意見交換、提言を行うとともに、「空き家問題」(祥伝社新書)、「2020年マンション大崩壊」(文春新書)など不動産関係の書籍を多数執筆しています。

前編では、セミナー前半の全国の空き家事情と空き家対策特措法についてまとめました。

地方だけの問題ではない!全国の空き家事情とは

セミナーの冒頭で牧野氏が示したのは、全国の空き家の現状です。総務省によって5年に1度調査が行われている「住宅・土地統計調査」の結果では、日本の空き家は2013年度に全国で820万戸に達し、前回調査よりも8.3%増加しています。牧野氏によると、「50年間一方的な右肩上がりの統計は見たこともない」という異常とも言える状態で、空き家数を総住戸数で割った空き家率は13.5%にも達しています。

空き家問題は、過疎化に悩む地方のものと考えがちです。しかし、都道府県別の空き家率(別荘など二次的住宅を除く)のワースト1位は「山梨県」17.2%、2位は「愛媛県」16.9%ですが、「大阪市」の空き家率も16.9%と同等のレベルにあり、大都市である大阪でも空き家問題は深刻化していることが示されました。

空き家の種類は、賃貸住宅で空室となっている「賃貸用」、売却活動のために空き家となっている「売却用」、別荘などの「二次的」な利用目的のもの、個人住宅などで空き家となっている「その他」に分けられます。この内、空き家増加の数字として重要なのは「賃貸用」と「その他」です。2013年度の空き家820万戸の内、「賃貸用」が429万戸で半数を占め、「その他」は318万戸となっています。しかし、空き家の増加率では、「賃貸用」が3.8%なのに対して、「その他」は18.7%に及ぶため、「個人住宅の空き家が増加していることで、空き家問題が日本の社会問題に発展していく」と牧野氏は警鐘を鳴らしています。

首都圏でも空き家問題が深刻化

空き家問題
首都圏各都県の空き家率は埼玉県と神奈川県が10.6%、東京都が10.9%で、震災の影響を受けた宮城県と山形県を除くと沖縄県の9.8%に次ぐ低い水準です。しかし、2013年度の東京都の空き家は81万7000戸で、実数では最も多く、埼玉県や神奈川県も全国平均を上回る伸び率です。神奈川県の個人住宅の空き家率は1998年からの15年間で81ポイント増加しています。

横浜市郊外のベッドタウンでも空き家問題が起きている事例として、牧野氏が挙げたのは、自身の実家がある横浜市栄区と横浜市金沢区のケースです。
仕事上で仲良くなった設計事務所の社長の実家が横浜市金沢区にあり、お母様が施設で暮らすことになったため、近所にあいさつにいったところ、その地域には空き家と高齢者の一人暮らしの家ばかりで驚いたという話をきっかけに、牧野氏の実家の周辺でも空き家が増えていることを知ったと言います。
横浜市栄区の実家は、JR港南台駅からバスで10分ほど、設計事務所の社長の実家も京急線金沢文庫駅からバスで10分くらいの場所にあります。どちらも昭和50年代に大手デベロッパーが分譲した高級物件ですが、横浜でもバス利用物件は競争力を失い、売るに売れない状態となり、空き家になっているのです。横浜市栄区の15歳〜64歳までの生産人口の比率は1999年の74.7%から2014年には59.2%へと落ち込み、全国平均の62%を下回っていることからも、横浜市の郊外で高齢化が顕著に進んでいることは明らかです。

野村総研によるデータでは、2033年には空き家が2000万戸を超え、空き家率も30%超となり、今後、3軒に1軒は空き家という時代が来ることが予想されています。都市部郊外には、膨大な数の空き家予備群が存在しています。

空き家を維持するための負担と空き家対策特別措置法

空き家問題
空き家は「景観」や「治安」、「災害」の面から、地域社会で大きな問題となっていますが、牧野氏はさらに「不動産」の観点から空き家問題についての解説をしました。空き家は「いつか住むかもしれない」と考えて放置する人が多く、片付けが面倒なことや活用方法がないことも要因にあるといいます。また、家屋の解体費が30〜40坪の住宅で250万円程度も掛かり、更地にして建物がなくなると、固定資産税の減額がなくなって、6倍に増えることも、空き家の撤去が進まない要因です。

都市部の空き家は、維持管理費や固定資産税・都市計画税の負担が膨大になるため、親の家を相続すると、「売れない」「貸せない」「住む予定がない」という三重苦に見舞われるおそれがあるのです。

そのような中、2015年5月に完全施行されたのが空き家対策特別措置法です。空き家所有者の特定に固定資産税情報を利用できるようになり、管理されていない空き家は市町村によって特定空き家に指定されると、行政の立ち入り調査や撤去も可能となりました。特定空き家の判断基準は、窓ガラスが破損している、家屋が傾いている、ゴミ屋敷になっているといったケースです。

牧野氏は、空き家対策特別措置法について「空き家に対する調査や指導、勧告をはじめ、行政代執行による撤去もできる画期的な法律」と位置づけています。ただし、「空き家を撤去しただけでは、空き家問題の根本的な解決には至らない」としています。

後編では、「空き家問題解決のための処方箋」と「新しい都市計画の必要性」について触れていきます。

<プロフィール>
オラガ総研株式会社
代表取締役社長
牧野知弘

1983年、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。
1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。
1989年、三井不動産株式会社入社。
レッツ事業企画部で資産有効活用の企画立案、不動産証券化業務などに従事した後、ビルディング営業部でアセットマネジメント業務などを担う。その後、ビルディング事業企画部で、数多くの不動産買収や開発、証券化業務を手掛ける。三井不動産グループのガーデンホテルズ社への出向では、ホテルリノベーションや経営企画、新規開発業務などに従事し、収益の改善に貢献する。

2005年、パシフィックマネジメント入社。
パシフィック・コマーシャル・インベストメント代表取締役に就任。
REIT史上2番目となる1917億円の資産規模で、史上最大規模の約1200億円の資金調達により、東京証券取引所REIT市場に上場。
2006年、日本コマーシャル投資法人執行役員に就任。
2009年、株式会社オフィス・牧野設立、代表取締役就任。オラガHSC株式会社設立、代表取締役就任。
2015年、オラガ総研株式会社設立、代表取締役就任。

http://www.oraga-hsc.com/

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