【後編】「互いに助け合う」地域密着の信用金庫。現場を知っているから実現できた「認知症高齢者向け口座」開設〜城南信用金庫〜

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前編では城南信用金庫がつくってきた、ご高齢者の方にとって将来の金融取引における不安解消につながるサポート体制や、認知症などで理解や判断が難しくなった時に頼りになる成年後見制度を信用金庫のOB・OGが担当する仕組みについてお聞きしました。
後編では、同庫で最近取り扱いを開始した認知症高齢者向け専用口座など最新の取り組みや今後の展望を、城南信用金庫の吉原毅顧問に伺います。

認知症でも現実的に利用しやすい、新しい視点の金融商品を開発

Q:成年後見制度の利用については、信用金庫の定年退職者が親身にサポートする体制が、5つの信用金庫を母体とする「しんきん成年後見サポート」で組まれたわけですが、それでも課題はありますか。

A:もともと成年後見制度を運用する上で、後見人による使い込みや横領といったトラブルが問題になっており、「しんきん成年後見サポート」では信用金庫のOB・OGが2人体制で後見スタッフを務めるなどしてトラブル回避に努めていますが、国としても2012年より最高裁判所が中心となって「後見制度支援信託」という仕組みを導入しています。

これは、本人様が日常的な出費などの少額分を除いた資産を信託銀行に預けるものですが、安全な一方で、信託資産の一部でも使いたい時にはその都度、家庭裁判所に書面で申請して承認を得ないとお金を下ろせないという不自由さが伴います。また、この取り扱いは信託銀行に限られており、信託銀行自体が都市部に偏在しているため、慣れ親しんだ金融機関から預け替えるのは不安だし面倒だといった声も少なくありませんでした。

Q:「後見制度支援信託」だけでは心配という利用者様が、少なからずいらっしゃるのですね。

A:そうですね。特に、まとまった金額が必要となる度に書面で家庭裁判所に申請し、承諾を得ないと引き出せない点は問題で、実際、最高裁判所と日弁連から相談を受けて、「しんきん成年後見サポート」で利用しやすい金融商品の開発を考えることになりました。
つまり、運用に手間の掛かる信託でなくても、一般に使い慣れた預金商品で同様の安全性が担保できれば良いのです。そこで2016年11月に内閣府の成年後見利用促進委員会において提言したところ、高い評価が得られました。要は、日常的に使用する生活費などを管理する小口の預金口座と、財産のほとんどを預け入れる大口の預金口座を併せ持って、前者は後見人のみの管理権限で、後者は後見監督人などの許可も要するといった仕組みの金融商品であれば対応できるということです。

それを受けて、2017年3月24日には、本商品案を含む「成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づく成年後見制度利用促進基本計画」が閣議決定されました。そしていち早く同じ3月中に当金庫にて「城南成年後見サポート口座」として商品化して、取り扱いを始めたわけです。

資産管理の大口預金と日常的支出用の小口預金、2つの口座を併せ持つ

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Q:それが、認知症高齢者向け専用口座と言われている商品ですね。

A:その通りです。煩雑な手続きを必要とせず後見人の不正防止ができれば良いので、複数名による署名捺印を登録する仕組みにしています。このようなことは営業現場においては珍しいことではなく、遺産分割前の預金管理などで行われているものですので、常に実務の最前線に立っている私ども信用金庫であれば思いつくことですが、大手都市銀行はじめ、多くの金融機関ではなかなか考えにくい内容だったのかもしれません。

実際には、複数名の署名捺印で管理するのは大口の預金口座のみで、日常の生活費を管理する小口の預金口座については日常的にサポートを行う後見人のひとりが簡便に管理できるようにしています。前者から後者への定額自動送金は当金庫でも従前から行っているサービスですので、取り立てて難しいことでもありません。

また、それ以外に家族信託の活用も、いつ判断力が失われるか分からないリスクのある高齢の方にとっては、非常に有効です。アパート経営など不動産管理をする上で注目されているサービスでもあり、住宅業界がこぞってセミナーを行うなどしていますが、この分野で対応できる金融機関の存在がポイントになります。城南信用金庫では家族信託の取り扱い実績も多く、全国各地からお問い合わせをいただいている状況です。

困っている人のために次々浮かぶアイデアやノウハウは、広く公共でも活かしていく

城南信用金庫
Q:認知症になるリスクの高い現代では、たいへん必要性が感じられるサービスと言えますね。

A:信用金庫というものは、他の金融機関と成り立ちから異なっており、19世紀イギリスで生まれた協同組合運動をルーツとしています。
城南信用金庫は明治35年(1902年)に大森・山王在住の加納久宜子爵によって設立されましたが、その先祖の加納久通という殿様は江戸幕府の第8代将軍徳川吉宗公の側近で、享保の改革を進める手足となった方です。加納子爵は互助・共助の思いから、1901年に大森で物産展を行った収益を元手に1902年に入新井信用組合を結成し、地域の将来を担う子どもたちの学費に充てたことが当金庫設立の元となりました。つまり、信用金庫は自分たちで地域を良くしていこうという、地方自治のための信用機関なのです。

近代社会は、己の利益を追い求める傾向にありますが、古来から生物は皆、同じ種の繁栄のために助け合ってきました。人間も本来互いに助け合うもので、貧富の差などないはずです。困っていることがあれば互いに支え合おうというのが自然で、私自身、そうした思いから次々とアイデアを生み出し、懸賞金付定期預金や乱数表付テレホンバンクなど、全く新しい視点からの商品開発を数多く行ってきました。当金庫の店舗で用いる電力も自然エネルギーによるものに限り、脱原発としてきたのも、同じ考えによるものです。震災の被災者でも障がい者でも高齢者でも問題があると思えば同じように、何かできることはないかと思案し、あきらめずにできることをひねり出してきて、今日があるのです。

今後もそのような考え方に基づき、これまでの信頼をベースにして、高齢の方々が安心して暮らしていけるようなサービスをいろいろ考えていきたいと思っています。私どもでは経験を独占するのではなく、ノウハウの提供を無償で行ってきました。「しんきん成年後見サポート」も地域を超えて、今年5月に静岡県沼津市と岩手県花巻市に関連法人ができました。このように、同じ志を持つ組織が全国に広がっていけば良いですね。

(プロフィール)
城南信用金庫
顧問
吉原毅
1955年東京都生まれ。
慶応義塾大学経済学部卒業後、1977年に城南信用金庫へ入職。
企画部時代には、同庫第3代理事長である小原鐵五郎の薫陶を受け、懸賞金付定期預金や乱数表付テレホンバンクなどの新商品を開発。
2010年、信用金庫の原点回帰を掲げて理事長就任後は、年収を支店長以下の1200万円に抑え、四権分立や現場による経営計画など異色の改革を断行。東北大震災以降は、被災地に対する支援活動にも尽力。「原発に頼らない安心できる社会へ」を宣言し、講演活動を行うとともに、金融を通じて自然エネルギーや省エネルギーを推進する。
2015年に、自ら制定した任期に則り、理事長を退任。現在、顧問として現場の指揮に当たっている。2015年より、一般社団法人しんきん成年後見サポート理事長を務める。

城南信用金庫
http://www.jsbank.co.jp/

一般社団法人しんきん成年後見サポート
http://www.shinkin-support.jp/

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