【前編】空き家の適正な管理をさらに推進! 練馬区が取り組む空き家対策とは『空き家になる前に相談できる、専門家によるアドバイスの機会を〜練馬区環境部環境課〜』

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核家族化や少子高齢化もあって、全国で空き家が増えています。防災や防犯・景観・衛生などの様々な面で悪影響が懸念され、大きな社会問題にもなっています。
その中で、東京都の練馬区が取り組んできた空き家対策について、環境部環境課長の星野 明久氏(写真右)と、まち美化推進係長の樋口 哲也氏(写真左)にお聞きします。

区内の約15万件を全棟調査してわかった、空き家の実態と所有者の悩み

Q:練馬区で空き家対策を始められた経緯を教えてください。

星野:背景としては、防災や防犯・景観などの事柄から、隣家の樹木が茂って越境しているといった苦情まで、区民から様々な相談が入る状況がありました。そのような中、2015年5月に「空家等対策特別措置法」、いわゆる「特措法」が完全施行され、区市町村が空き家対策の実施に努めることが規定されたわけです。また、地域活性化につながる地域資源として、空き家を何らかに活用できないかという期待もありました。

そこで、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の練馬区版総合戦略となる「みどりの風吹くまちビジョン」という基本計画とその実施計画であるアクションプラン、さらに「空家等対策計画(特措法第6条)」に基づく取り組みとして「練馬区空き家等対策計画」を位置づけ、計画の策定を進めました。そして、そのためにはまず実態把握が必要ということで、2015年5月から2016年3月までの1年近くを掛け、練馬区全域で民間建築物の全棟調査を実施しました。

樋口:調査方法としては、外観目視調査にて老朽度を4段階に分け、それら物件の所有者を登記から調べ、その方たちを対象に今後の意向をアンケート調査しました。
他自治体と比べても、おそらく全棟調査というのは珍しいのではないでしょうか。一般には抽出しての調査となると思われます。練馬区の民間建築物は、全棟で14万8713棟あり、苦労ではありましたが、一旦は区内の空き家状態を全て把握することができましたので、そのメリットは大きいと思います。

Q:それで分かった空き家の状態は、どのようでしたか。

星野:15万棟近くの内、空き家が1507棟あり、外観目視調査の判定AとBに当たる、外観に損傷が見受けられるものがそれぞれ221棟、369棟で、合わせて4割弱でした。また、判定CとDに当たる、それほど手を掛けなくても倒壊の恐れ等には及ばないものはそれぞれ325棟、602棟で、6割強という結果です。

所有者の方に今後の意向と、今困っていることを伺ったところ、解体して更地にすると税金が上がってしまうし、新築・改築も費用の捻出が困難、売却や賃貸も相手が見つからない、また、相続においても諸手続きに困っているといった状況が明らかになってきました。また、そもそも、空き家をどのようにしたら良いのか、どのような選択肢があるのかも分からないという様子も伺えました。逆に言えば、対応策や解決策を提示できれば、動いていただけるのではと思えたわけです。

Q:所有者が遠隔地におられるケースというのもありますか。

樋口:地方の空き家では、相続される世代が都市部にお住まいで、物件の状況すら分からないままに放置されていることが少なくないかもしれません。練馬区の場合は幸い、空き家の半数程度は所有者の方のお住まいが離れていても比較的近隣、近県地域のようです。また、ご兄弟姉妹など、どなたかおひとりは近くにおられたりしますので、区としてもまずお近くの方に問い合わせをすることはあります。

空き家オーナーが相談しやすいよう、区が不動産・建築・相続の専門家とつなぐ

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Q:整理すると、空き家について対応策や解決策を提示すべき課題は何でしょうか。

星野:まず、管理のし方や流通方法が分からないということ、そして、経費や労力の負担であったり、相続で権利関係が複雑化していることから適正な維持管理がなされないケースがあります。また、遠隔地にいるため現状を把握しにくいこと、さらに、建物を除却して更地にしてしまうと税負担が増す、といった事柄が何らかの対策を講じるべき課題と分かりました。

Q:そこから導き出された方針による取り組みを教えてください。

星野:練馬区が立てた方針としては3つです。まずは管理不全な空き家の発生予防に努めること、空き家の有効活用と適正管理の促進、そして、管理不全の空き家に対しては、必要な措置を実施することとしました。

発生を予防するための取り組みとしては、所有者の方の様々な悩みに対してアドバイスできる体制を整え、区が専門家団体と連携して間に入ることで、助言などを区民に届きやすく提供するようにしました。セミナーや個別相談会を随時開催して、専門的相談に対応してもらったり、専門家団体の連絡先を一覧にしてホームページやリーフレットを通して必要な区民にお知らせするなどです。各団体側にも、区内にある空き家所有者の方などからの相談に応じるための窓口を設置してもらっています。

樋口:専門家団体というのは、相続などに関しては東京司法書士会と東京都行政書士会、不動産取引については東京都宅地建物取引業協会と全日本不動産協会です。また、家を改築・修繕したい場合や耐震上の問題であれば東京都建築士事務所協会といったように、空き家でお困りの方が直面する問題について、相談のできる各種専門家団体の練馬支部などと協定を結びました。

そして、年に1〜2回、セミナー・個別相談会を区が主催しています。こちらでは、第1部で区が実施している空き家対策の概要説明や2団体ほどから30分ずつ対応策に関するご案内を行い、第2部では個別相談会として各団体のブースにて困りごとなどご相談いただき、その際は匿名でのご相談も可としています。ご相談の内容としては、空き家に対してどのようなことができるのか、売却と賃貸どちらが適しているか、また、当該物件が法令上、再建築可能なものかの判定といったことが多いようです。

地元の信用金庫の協力で、空き家の解体・活用費用の融資商品も用意

空き家対策
Q:まずは物件としての可能性を知りたい、ということですね。

樋口:こうしたことは、街の不動産業者にいきなり相談するのも不安でしょう。民間でも相談会やセミナーか実施されているようですが、区が主催して行うことの安心感は大きいのではないでしょうか。まずは空き家について考える、その第一歩を踏み出すきっかけにしてもらえればと思います。

これまで開催してきた2部制のセミナー形式では20〜30人の方々が予約してから来場されるのですが、この9月にはより相談しやすくするための工夫として、区役所1階のホールに無料出張相談コーナーを設置する形式も試みます。予約不要ということで、相談に訪れるハードルが下げられますし、多くの人の目に触れることで、空き家問題そのものにも関心を持っていただけるのではと期待しています。

Q:このような専門家団体との連携は、各自治体で進んでいるものですか。

樋口:基礎自治体レベルでは、練馬区では全国を先駆ける動きだったと自負しています。また、専門家団体と連携することで空き家対策の中身について情報共有できるようになったのは大きいですね。練馬区の場合、各団体の「練馬支部」との連携で、より実効的なものとなっています。

Q:専門家団体のほか、金融機関とも協定をされていますね。

樋口:専門家団体との連携に併せて資金の問題にも対応できるよう、信用金庫と協定を締結しました。練馬区内に支店のある信用金庫の内、西京・城北・西武・東京シティ・巣鴨・東京の6つの信用金庫に、空き家の解体や活用のための資金ニーズに応える融資商品を用意していただきました。既存の住宅ローンやリフォームローンを応用した商品もありますし、今回の協定締結を受けて一から商品をつくっていただいた例もあります。いずれにしても、使い道が具体的に設定され、所有者の方からも空き家の活用がイメージしやすくなっています。

(プロフィール)
練馬区環境部
環境課長
星野 明久

練馬区環境部
環境課まち美化推進係長
樋口 哲也

練馬区 空き家・ごみ屋敷対策
http://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/sumai/akiya/index.html

「空き家に関する相談窓口」のご案内
http://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/sumai/akiya/0661439612017117.files/tirasi.pdf

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