【前編】災害に介護に大活躍のポータブルトイレ「ラップポン」とは? 開発の経緯と活躍内容 〜日本セイフティー株式会社〜 

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災害や介護など様々な分野で、水を使わない自動ラップ式トイレ「ラップポン」が活躍しています。
その「ラップポン」の開発・販売を行っている日本セイフティー株式会社が主軸とする事業は、ポータブルトイレとは一見縁がなさそうな、仮設資材のレンタル事業です。
今回は、なぜ日本セイフティーで「ラップポン」の開発が始まったのか、そのきっかけや製品の特徴、活用事例などについて、同社ラップポン事業部営業部の餅月忍部長(写真左)と、同事業部の漆田裕治事業部長代行兼開発部長代理(写真右)に話をお聞きしました。

“水を使わない”がコンセプトのポータブルトイレ「ラップポン」

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Q:まず御社の事業内容や取り組みについて教えてください。

漆田:弊社の事業内容は、主に建築や土木・解体などの工事に用いる仮設資材のレンタル・販売・設置などです。そのような事業の一端として、自動ラップ式のポータブルトイレ「ラップポン」の開発や販売を行っています。

Q「ラップポン」とはどのような仕組みのポータブルトイレなのでしょうか。従来のものとの違いについてもお聞かせください。

漆田:「ラップポン」をひと言で表すと、水を使わないポータブルトイレです。水を使わないので、匂いがしませんし、排泄の処理も非常に簡単です。

例えば、介護用のポータブルトイレの場合、便器の下にバケツが収納され、その中に排泄をするという仕組みとなっています。使用後は介護者がバケツを取り出して、排泄物をトイレに流し、さらにバケツを洗って乾燥させるという一連の流れを行う必要がありました。

しかし、弊社の「ラップポン」では、搭載している自動ラップ式排泄処理ユニットが、排泄物を自動で完全に密閉し、個包装で切り離すため、後処理に手間が掛からないだけでなく、匂いも気になりません。また、通常のトイレと同じようにトイレットペーパーの使用ができます。災害時などにはウェットティッシュの使用も可能です。

Q:現在は何種類の「ラップポン」製品を販売しているのでしょうか。

漆田:現在、災害用で1種類、介護用で2種類の「ラップポン」製品を販売しています。まず、災害用の製品に関しては、持ち運びができて備蓄もしやすいように、折り畳み式でコンパクトなトランク型のものを販売しています。また、介護用に関しては、在宅で使うことを想定し、お部屋の雰囲気を損ねないような木製で家具調のものを展開しています。

Q:「ラップポン」開発のきっかけについて教えてください。

漆田:13、4年前に、弊社の創業者が海外で似たような製品を見て、感銘を受けたのがきっかけでした。当時は、本業である建築・仮設資材のレンタルを行う現場で使えそうだということで、製品を輸入しようと考えたそうですが、そのタイミングで製造元のメーカーが倒産してしまったのです。ならば自力でつくろうと、独自に開発を始めたことにより「ラップポン」が誕生しました。

Q:「ラップポン」開発時に苦労された点についてお聞かせください。

漆田:「ラップポン」の一番の特徴は、排泄物を密閉するためにフィルムを熱で溶かし、溶着してから切断するという機構を持っていることにあります。この機構になるべくトラブルが生じないように開発を進めるためにかなりの時間が必要でした。一番苦労した点かもしれません。

餅月:また、コスト面でも苦心しました。「ラップポン」は通常の介護用ポータブルトイレとは仕組みも機能も異なっており、既存にない商品だったので、販売価格をほかの特定福祉用具と同じレベルにまで抑えることがたいへんでした。本体だけでなく、消耗品のフィルムも当初は1回排泄するごとに100円以上掛かっていたので、おむつよりも高額だったのです。現在は1回50円以内に収まっていますが、ここまでコストダウンを進めるのに時間を要しました。

災害時の犯罪抑止・衛生面の向上にも効果が期待できる「ラップポン」

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Q:「ラップポン」はどのようなシーンでの活用を想定されているのでしょうか。

漆田:災害時や介護の場面での活用を想定しています。災害時に関しては、2007年以降に発生した能登半島地震や中越沖地震・東日本大震災・熊本地震、そして西日本豪雨などの被災地で「ラップポン」を設置し、被害に遭われた方々に使用していただきました。

Q:「ラップポン」を用いた被災地での活動実績などございましたら教えてください。

餅月:弊社では津波・水害・地震などの被災地支援として、社内で「絆・プロジェクト」という活動を実施しています。これは災害発生時に、事業部やほかの部署の者と何人かでチームを組み実際に被災地に行って「ラップポン」の設置活動をするという取り組みです。基本的に「ラップポン」の使い方を教えることから感想を聞くところまで、現地に滞在して行います。今年の7月に起きた西日本豪雨のあとでは、およそ1ヵ月間現地に滞在しました。また、東日本大震災や熊本地震の時には2ヵ月間くらい交代で現地活動を続けました。

漆田:災害が起きると、多くの場合はライフラインが止まってしまうので、避難場所にはまず仮設トイレが設置されます。仮設トイレは通常、下部に汚水タンクが設置されているため、トイレに行くまでに2、3段の階段を上る必要があります。しかし、災害時に避難してくるのは高齢者・子ども・女性の方の割合が高く、夜暗い中でトイレに行くことだけでもリスクを伴います。また、高齢で足腰が弱っている方などは、階段を上ったりするのがつらいからとなるべくトイレに行かないように、水分を控える場合も少なくありません。そのような状態が長く続くと、今度はエコノミークラス症候群になってしまうという二次災害の心配も出てきます。

餅月: 避難所は災害が発生してからすぐに設けられるので、皆さん土足で避難するのが普通です。また、大便以外は避難所にもともと併設されていたトイレなどで人為的に汲んできた水を流すことになり、トイレの床は常に濡れている状態です。そこで濡れてしまった靴のまま、避難所の床でご飯を食べたり寝たりすれば、おう吐や下痢で体調を崩す人も出てきてしまいます。

漆田:「ラップポン」は使えなくなったトイレや体育館の廊下など、施設内に設置することも可能なので、犯罪抑止にも効果が期待できます。また、水を使う必要もありませんし、排泄による匂いも抑えられるので、衛生面に配慮された環境を維持することが可能です。設置できる数にはどうしても限りがあるので、全員に使ってもらうというよりも、まずは高齢者・子ども・女性といった、災害時のリスクを受けやすい方から使っていただきたいと思います。

Q:事業を通じて社会にどのような貢献をしたいとお考えでしょうか。

漆田:最近は介護用おむつが高機能化してきていると同時に、介護職に従事している人の数が足りていないため、要介護度が上がるとすぐにおむつにしてしまう傾向が高くなっているように思えます。しかし、トイレの度に立ち上がる必要がなくなると寝たきりになるスピードが速まってしまうことにもなりかねません。その点、ポータブルトイレは自立を促すトイレでもあり、もっと多くの方に「ラップポン」を使っていただき、寝たきりを防ぐための役に立てればと考えています。

餅月:これからの超高齢社会において、在宅で過ごす高齢者は急速に増えていくはずです。排泄に関わる場面は介護でも非常に大切なポイントだと思うので、今後これからの社会のニーズに沿うような「ラップポン」を開発していきたいと思います。そして、たくさんの方に使っていただけることを願っています。

また、社会貢献のつながりで言えば、災害が起こった際、今後はさらに会社一丸となって支援活動に取り組んでいきたいと思います。最初は限られた予算内で、ラップポン事業部の中だけで行っていたプロジェクトですが、最近はほかの部署に所属している社員で、自ら手を挙げて「絆・プロジェクト」の活動に参加してくれる人も少なくありません。

漆田:自発的な思いから「絆・プロジェクト」で被災地に行きたいと申し出てくれる人がどんどん増えています。ほかの部署では本業である建築や仮設資材のレンタル業務などを行っているので、プロジェクトに参加して実際に被災地におもむき、感謝されることが活力になるという社員も多いようです。

(プロフィール)
日本セイフティー株式会社
ラップポン事業部
事業部長代行兼開発部長代理
漆田 裕治
2007年より前職で、ラップポン開発に関わり、2014年ラップポン事業部の開発部長代理として日本セイフティー株式会社に席を置く。
2017年より事業部長代行を兼任。

ラップポン事業部
営業部
部長
餅月 忍
2004年ラップポン事業に初期より関わる。
2010年より営業部長に。

日本セイフティー株式会社
https://www.nihonsafety.com/

ラップポン公式ページ
http://wrappon.com/static/product/

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