消えゆく「スターハウス」。かつての集合住宅のシンボルの今

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「スターハウス」という住宅をご存知でしょうか。若い世代はもちろん、40〜50代でも知らない人はいるかもしれません。「スターハウス」というのは、それくらい昔に流行った建築物であり、現在では非常に少なくなっています。

今回は、「スターハウス」とはどのような建物なのか、かつて「集合住宅のシンボル」とまで言われた「スターハウス」の現在はどのようになっているのか、について見ていくことにします。

「スターハウス」とは?

「スターハウス」とは、1950〜60年代を中心に当時の日本住宅公団などが建築を進めた集合住宅(団地)の建物のことで、特徴としては上から見るとY字型をしています。
そのため、星のような形に見えることから「スターハウス(星形住宅)」と呼ばれ、団地住民に親しまれてきました。ここでは、「スターハウス」が建築された背景や魅力を解説していきます。

「スターハウス」が建築された背景

通常の団地建築物ではなく「スターハウス」がつくられた理由は以下の点にあると言われています。

・中途半端に残った土地を活用する
・通常の団地建築物だと無機質な景観になる

「スターハウス」は通常の横並びの建物とは違う形状です。フラットな建物であれば、ある程度大規模かつ長方形の敷地が確保できる土地に建築しますが、「スターハウス」の場合は中規模で、しかも正方形の場所でも建築可能です。

そのため、戦後から10〜20年前後、「スターハウス」が多く建築されていた時期には、「中途半端な土地を活用する役割」としても重宝されたのです。

また、フラットな長方形で特徴のない建物が立ち並ぶ団地風景を、当時の人は「無機質で墓が並んでいるようだ」と思っていたそうです。そこで、星型にも見える形状の建物をつくることで、単調になりがちな団地の景観と一線を画したという背景もあります。

「スターハウス」の魅力とは?

スターハウス
「スターハウス」は特別な形状とも言えますが、この形状にした理由は以下の点にあり、これらがそのまま魅力につながっています。

・吹き抜け部分ができる開放感
・陽当たりや通風に優れる(角部屋)
・団地にゆとりスペースができる

「スターハウス」はY字形状だと言いましたが、そのY字の先端部分に住戸があるので1フロア3住戸の構成になり、建物の中心部分が吹き抜けの構造になっているのが一般的です。この中心部分にある吹き抜けを、3つの住戸が囲うようなレイアウトをイメージしてもらうと分かりやすいと思います。

いずれにしろ、この吹き抜け部分があることによる開放感が、「スターハウス」の1番目の魅力と言えるでしょう。通常の団地建築物にはこのような吹き抜けのスペースはありません。

また、Y字の先端が住戸になるので、全て独立性のある角住戸になります。向きこそ違いますが、全住戸が3面開口になるため、陽当たりや通風に優れるという点が2番目の魅力です。住環境の面においては非常に大きなメリットと言えます。

最後に、建物の敷地内にゆとりスペースができやすいという点です。例えば、正方形の土地に「スターハウス」を建築すれば、上から見ると住戸間にゆとりができます。このゆとり部分に緑を植えるなどすれば、建物にとって付加価値が得られるというわけです。

団地内で「スターハウス」の地位は高かった

「スターハウス」は通常の団地建築物とは一線を画している構造であり、開放性や独立性に優れ、ゆとりスペースが多いというメリットがあります。ほかにも、当時の団地内では給水塔がそうであったように、特徴的な形状を持つ「スターハウス」がそのエリアのシンボル的な位置づけになっていることが多かったようです。

当時の公団の機関紙には、「中層フラットとテラスハウスが公団住宅の型の樹幹であるとするとこのポイントハウス(スターハウス)は花とも言えよう」という一文があり、かつては「スターハウス」の地位が高かったことが分かります。今でいう「タワーマンション」のような位置づけかもしれません。

このように、「スターハウス」は実際に居住する上でもメリットがあり、街のシンボル的な位置づけにもなっていたことから、積極的に建築されて棟数を増やしていきました。

「スターハウス」が抱えていた問題点

メリットが大きいと思われがちな「スターハウス」ですが、実は以下のような問題点も抱えていました。

・建築コストが高くなる
・隣家が面と向かい合うことがある

まずは、特徴のある形状のため建築コストが高くなってしまうことです。今も昔も、建築コストはその建物構造の複雑さによって異なってきます。通常の建物のようなフラットな長方形の形状と比べて複雑な「スターハウス」では、より多くの資材が必要だったり、量産された低コストのものが使えなかったりします。

また、耐震性を考えると柱の数が多くなり、耐震壁をどこに造るかという、設計的な難易度も上がります。そのため、必然的に建築コストが上がってしまうというわけです。事実、建築コストが大きな理由となり、1964年に建築された「明和団地」の「スターハウス」が最後の建物となりました。

「スターハウス」が抱えるもうひとつの問題点は、Y字レイアウトのため、同じフロアの住戸同士で向かい合わせになるということです。これは構造上仕方のないことであり、角住戸のいうメリットを享受できることの裏返しでもありますが、時代とともにプライバシーを気にするようになった日本人にとってはマイナス要素に捉えられたと推測されます。

「スターハウス」の今

さて、1950〜60年代に建築された「スターハウス」ですが、現在ではその多くが築60年を超えた物件となっています。「スターハウス」は取り壊しが進んでおり、一部を保存しようとする動きもあるようです。

取り壊しが進む「スターハウス」

スターハウス
1981年を境に建築基準法が改定され、いわゆる「新耐震基準」になりました。当然ながら「スターハウス」が建築されたのは旧耐震基準の頃であり、現在の建築基準法に則った建物ではありません。これは予想の域を超えませんが、新耐震に該当するために改修工事をしている「スターハウス」はほぼ皆無でしょう。

「スターハウス」だけではありませんが、この時代の集合住宅は「大地震で倒壊の可能性がある危険な建物」であり、それを理由に取り壊しが進んでいるのが現状です。やはり、築年数が50年を過ぎると改修工事を考えるより、建て替えてしまうほうがコスト的にも良いのです。

2012年には、マンモス団地としても知られた、東京23区で初の公団住宅「赤羽台団地」が取り壊され、跡地には大型商業施設が完成しました。「スターハウス」を含めて、団地建築物はまだ世の中に存在しますが、老朽化によって少しずつなくなっていくと考えられます。

一部では保存の動きも

一方、「スターハウス」は日本の住宅建築の歴史でもありますので、一部で保存を望む声もあります。具体的には、兵庫県宝塚市の「仁川団地」と大阪府堺市の「金岡団地」で保存する動きがありました。とは言え、保存は一時的なもので、現在は取り壊しが予定されています。

老朽化が進む団地の建物が少しずつ取り壊されている中で、「団地鑑賞族」と言われるマニアが現れ、そうした人たちの間でも「スターハウス」は独特の形状から人気があるようです。しかしながら、現在の日本は団地の老朽化問題以外にも空き家問題を抱えています。

超高齢社会を迎えた現在、住む人がいなくなり老朽化する空き家が増え、周辺の治安悪化や景観阻害、倒壊リスクの上昇などが顕在化しているという問題です。これは、団地にも同じようなことが言えます。もちろん、多数の住人の方が住んでいる団地もありますが、空き住戸が多くゴースト団地と化しているケースが増えているのも事実です。

そうなると、不法占拠や建物の劣化が進んでいくので、できれば建て替えたいところです。しかし、住んでいる人の中には現状を望む方や高齢の方も多いため、なかなか具体的な話が進みません。今後もこの問題は継続していくので、「スターハウス」などは歴史的建築物として残される事例があるものの、一般的な団地建築物については近い将来、安全のために建て替えられるのは必至でしょう。

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