【後編】空き家の適正な管理をさらに推進! 練馬区が取り組む空き家対策とは『環境課が舵取り役となって、“オール練馬”で対応〜練馬区環境部環境課〜』

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全国の自治体で「空き家問題」が深刻化しています。東京都の練馬区ではいち早く全棟調査に着手し、建物の老朽度ごとに所有者の方が抱える悩みや課題を抽出しました。
前編では主に、管理不全の空き家の発生を予防するための情報提供やセミナー開催についてお聞きしました。後編では練馬区が取り組むそのほかの対策について、前編に引き続き、環境部環境課長の星野 明久氏(写真右)と、まち美化推進係長の樋口 哲也氏(写真左)にお聞きします。

地域で公益活動を行いたい団体と空き家オーナーを区が支援してマッチング

Q:管理不全空き家の発生予防策以外で行われている対策を教えてください。

星野:空き家を地域資源と捉え、その有効活用を促進することで管理不全空き家の発生を未然に防ぐとともに、地域交流の活性化に役立てる「空き家地域貢献事業」に取り組んでいます。内容は、区内に空き家を所有している方と、空き家を活用して公益的な事業の実施を希望する団体などとのマッチングです。公益財団法人練馬区環境まちづくり公社 みどりのまちづくりセンターに窓口業務を委託し、区としては、建築物の現況把握や改修のためのアドバイザー派遣、さらに改修費等の初期整備費用の補助などの支援を行っています。

樋口:実例として、2017年4月より区内高松地区の2階建て物件の1階部分を「自然工房めばえ」というNPO法人が活用しています。この物件にめぐり合えたのは、2016年3月に区が開催したセミナーに、当該この物件の所有者のご家族方が参加されたのがきっかけです。この時点ではまだ空き家ではなかったのですが、一人で暮らしている親御さんに転居予定があり、このままだと空き家になってしまうとお悩みの段階でした。「空き家地域貢献事業」も当時は検討段階でしたが、所有者の方に興味を持っていただけたことでマッチングに向けて関係者が前向きに動きはじめ、実現に至ったと言えます。
同NPO法人は植物のガーデニング活動を通して生活を豊かにすることをテーマとしており、物件を改修後、地域で緑・農と健康に関するイベントや講座などを行っていく活動拠点としてもらっています。

Q:理想的な事例ですね。後に続く例は出てきていますか。

星野:使い方が公益的事業に限られるという難しさもあり、現在のところこの1事例のみです。商業利用であれば、民間の賃貸ベースでマッチングできるのですが、行政が行うマッチングはそれとは役割が異なります。23区内ですから、通常であれば不動産市場で流通するはずですが、何らかの事情で活用できる状態なのに活用されていない空き家がターゲットです。該当する物件が少ないところに、公益的な活動で使ってもらいたいという意欲のある所有者方を探すわけですので、数ではなくマッチング内容でより良いケースをつくっていければと考えています。

樋口:練馬区は住居系用途地域が多くを占めています。世の中のニーズを考えれば、認知症カフェや子育て施設などに使えると良いのですが、住居系用途地域では住宅以外に転用することに対して、法的な制約や制限があり難しいケースも多いのが実情です。

ただ、所有者の方からすれば、建物をなるべくそのままで残せたり、思い出のある家具なども使い続けてもらえたりするメリットがあります。この事業の適用があれば、改修工事等に対して100万円を上限とする補助金も受けられますし、引き続き、空き家及び活用団体の募集や事業自体の周知に努めていくようにします。

また、建物は人が住まなくなり、使われなくなると急激に傷んでくるものです。その意味では、紹介した事例のように、空き家になる前にご相談いただけると良いですね。空き家にならずに済むよう、大切な資産として活用される手立てを見つけるのが最善の方法でしょう。

立ち入り調査から代執行までの間に、区として聞き取りや応急措置が取れる条例を整備

空き家対策
Q:そのほかに取り組みを行っている空き家対策はありますか。

星野:実際に空き家になって管理不全に陥っている物件に対して必要な措置が取れるように、「練馬区空家等および不良居住建築物等の適正管理に関する条例」を制定し、2017年10月より全面施行されています。

「空家等対策特別措置法」、いわゆる「特措法」には、立ち入り調査から「特定空家等」の認定、助言・指導、勧告、命令、そして代執行という、強制的に取り壊しなどを行う手続きの流れが定められてありますが、それを補完するべく「予防のための助言・指導」「意見聴取の手続き」「区による手続き代行」「緊急時の応急措置」について条例で定めました。また、条例名にある不良居住建築物とは、いわゆるゴミ屋敷のことです。実態調査では練馬区内に約30棟あるとされましたが、マスコミで取り上げられるような、周辺に影響を与えているゴミ屋敷はその予備軍を含めて10棟に満たないと認識しています。ゴミ屋敷については空き家と違って後ろ盾となる法律がないので、練馬区として、空き家と同様の対策がとれるよう立ち入り調査から代執行までの流れも含めて条例で定めました。

Q:ゴミ屋敷ならではの難しさはありますか。

星野:空き家と違って、そこにお住まいの方がおられる点ですね。また、一度ゴミを片づけても、所有者が依然ゴミを捨てられなかったり、再び集めてきてしまったりが続けば同じことになります。代執行には費用も掛かります。これは税金による負担となりますので、無為に何度も繰り返すわけにはいきません。再発させないための手立てとして、メンタル面の見守りも含めて対応していかなければならないのです。

窓口として、区の空き家対策の総合的舵取り役を担う、環境課

空き家対策
Q:ゴミ屋敷もですが、空き家対策というのは、関係各所が連携して当たる必要があるのですね。

星野:その通りです。建物のことは建築・住宅部門に、住民に危険や不安があれば危機管理部門に、メンタル的な見守りを要するならば福祉・保健部門に、ゴミの問題であれば清掃部門に、と各所が絡んでくるものです。練馬区では窓口を一本化して、環境課がまずは一旦受けつけ、あとは必要な所管部署と調整及び情報共有して当たる体制を築きました。ですから環境課は、区の空き家対策における総合的な舵取り役といったイメージですね。

警察や消防といった行政機関、居住を判断するための電気・ガス・水道事業者のほか、法律・建築・不動産団体などに関する有識者との協力体制も重要です。実際、立ち入り調査から代執行を進めていく際には、各段階でそうした有識者から成る審議会に助言をいただきながら行うこととなります。そして、有識者の知見を上手く活用しながら、丁寧に確実に進めるのに役立てています。

樋口:直接、区民の方々に接するのは、環境課の中でも私たち「まち美化推進係」の担当です。現在7人体制ですが、実は空き家やゴミ屋敷対策以外にも、空き地対策や歩きタバコ問題、カラス・ハクビシン・アライグマ対策など多様な問題に対応しているのが現状です。

その中で、空き家に対しては区民の方々から相談が入ると、まず現場を確認して写真を撮り、登記簿などで所有者を調べます。その上で、適正な管理をお願いする通知文に専門家団体を案内するリーフレットなどを同封し、送付するというのが一連の流れです。草刈りや枝切り程度であれば、この段階で対応していただけることも多いです。ただ、所有者の方には後ろめたさがあるためか、対応されても連絡はなかったりしますね。区としてはいち早く状況を把握しておきたいので、連絡していただけると有難いです。

何も対応していただけない場合には、近隣の方から、区でやってくれと言われるのですが、私有財産なので、粘り強く所有者の方に説明していくことしかできません。代執行となると、審議会で有識者の意見を伺いながら、最短でも1年程度は掛かると思います。ご本人に働きかけ、事情を伺ったりしていればさらに時間は掛かるでしょう。近隣の方としては早く何とかしてもらいたいでしょうが、行政としてはそこを疎かにはできず、法令に基づき進める必要があります。その点はご理解をいただければと思います。

ですから、最も大切なのはやはり、空き家になる前に何らかの対策を打つことです。所有されている物件で空き家の可能性があれば、早めにご相談をしていただきたいですね。そうすれば、幅広い専門知識を寄せ合って、より良い方法を考えることができるでしょう。

(プロフィール)
練馬区環境部
環境課長
星野 明久

練馬区環境部
環境課まち美化推進係長
樋口 哲也

練馬区 空き家・ごみ屋敷対策
http://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/sumai/akiya/index.html

ねりま 空き家でまちづくり
http://nerimachi.jp/operation/akiya.php/

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