「骨太の方針」が目指す外国人就労の規制緩和とは

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日本政府は、「経済財政運営と改革の基本方針」いわゆる「骨太の方針」を、2018年6月15日に閣議決定しました。その「骨太の方針」には、外国人労働者についての規制緩和が盛り込まれています。

労働力不足が叫ばれる日本にとって、労働力の確保は急務です。また、経済・産業面のみならず、外国人の就労は国民生活にも深く関係してきます。
そこで今回は、「骨太の方針」が目指す外国人就労の規制緩和の内容や、それに伴って懸念される点などについて解説していきます。

外国人の受け入れを拡大する背景は?

外国人の受け入れを拡大する背景にあるのは、単純に労働力不足という点です。日本の人口は減少の一途を辿っており、対策を講じてはいるものの改善していないのが現状です。現在の日本の労働力人口は約6600万人で、2017年10月末での外国人労働者は約127万人になっています。

つまり、現時点でも労働力の約50分の1は外国人が担っていますが、それでも全然足りていないといった状況です。また、15〜64歳の生産年齢人口は、これから2040年にかけて約1500万人減るという試算があります。

今後、高齢者の割合は増え続け、同時に医療・年金の負担も増えていくのに、労働力は減ってしまうという事態を迎えてしまうのです。そうなると、高齢者を支える労働力が絶対的に不足し、年金も満足に支給されなくなるかもしれません。

現在でも、高齢者が働ける環境づくり、少人数でも稼働する生産性の向上といった対策の手を打っていますが、その一環として外国人労働者を増やそうというのが今回の狙いです。例えば、教育の無償化や保育施設の増設、手当や補助金の拡充など、子育てのための支援を手厚くしたとします。

しかし、それで出生率が上がったとしても、労働力になるのは10数年後の話になります。そのため、そのような長期的なスパンでの対策も行いつつ、短期的に結果が出る外国人就労の規制緩和を導入したというわけです。

「骨太の方針」の内容とは? 報酬は日本人と同等以上、在留期間は5年を上限

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さて、そんな「骨太の方針」による外国人就労の規制緩和の内容は、簡単に述べると「建設、農業、介護など5業種に新たな在留資格を設ける」ということです。この5業種(建設、農業、介護、宿泊、造船)は、特に人手不足が深刻な分野になっています。

政府は、新たな在留資格を設けることで、外国人が就業できる単純労働の幅を広げ2025年までに50万人超の増加を目指しています。

そうした新しい在留資格を得る道として、政府は以下に挙げる2通りの方法を用意しました。
・最長5年の技能実習制度を修了すること
・新たに導入する試験に合格すること

本国への技術移転を目的とする技能実習生の場合、従来は研修が終わると帰国せざるを得ませんでした。しかし、技能実習の期間に加え、新しい在留資格によって滞在期間(上限5年)が延びることで、より長く日本で活躍してもらえるようになります。新しい在留資格は、即戦力の人材の確保にとともに、長期で日本に滞在しながら技能を学ぼうという人を増やすのも狙いです。

また、新たに導入される技能・日本語試験に合格することでも、在留資格が得られるようにします。分野によっては、「ある程度の日常会話ができる日本語レベルである」というN4のレベルまで求められない場合もあり、日本語がそれほど得意でない人も合格させる方針です。

つまり、試験のハードルを下げることによって、資格取得の門戸を広げ、外国人労働者の絶対数を増やそうというわけです。

外国人の受け入れ拡大で懸念される点とは?

さて、労働力不足に悩まされる日本にとって、外国人の就労が増えることはポジティブな面があります。
その一方で、外国人労働者の受け入れ拡大には、以下のような点が懸念されるのです。

・国民感情の問題
・治安の悪化
・諸外国に比べ受け入れ態勢の遅れ

まず、日本は島国で、しかもほぼ単一民族ということもあり、身の回りに外国人が増えることに対する抵抗感は少なくありません。現に、安倍首相は「骨太の方針」に盛り込まれた外国人就労の規制緩和について、「移民政策とは異なる」と明確に説明しています。

これこそが、国民感情として、外国人労働者の受け入れ態勢が整っていない証拠なのでしょう。そして、そうした感情が一因で規制が厳しくなっている面もあり、規制緩和後でも海外基準より大きく有利になるとは言えないようです。国際的に見ても、自国外からの労働者の獲得は簡単でないのが現状です。

そのため、規制緩和によって、日本がどれだけ「選ばれる国」になるかは不透明です。そこで、今回の外国人労働者の規制緩和の教訓になると言われているのが、1960年代に働き手不足のため、トルコから大量の労働者を受け入れた旧西ドイツの例です。

当時の西ドイツは、ドイツ語をほとんど話せないトルコ人も受け入れ、そうした人たちが単純労働の担い手となっていました。しかし、共通の言語を話せないという壁は大きく、また生活文化も異なるため、多くのトルコ人は地域で孤立したようです。

それによって、民族間の社会分断が起き、トルコ人を大量に受け入れた地域の治安が悪化してしまうという状況になりました。日本でも、上述した通りあまり日本語が得意でない外国人労働者を受け入れるようになります。その点は、旧西ドイツのような治安悪化のリスクが伴うということです。

将来のみならず、現在でも労働力不足の中で、外国人労働者を増やすことは必須の課題と言えるでしょう。とはいえ、トラブル事例などもあるため、慎重に施策を練り実行していく必要もあります。今回の骨太方針は、今後改正を加えられる可能性もあるので、日々注視していきましょう。

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