外国人旅行者も注目!農家の民泊「ファームステイ」とは?

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田舎に滞在する「ファームステイ」に近年注目が集まっています。
日本の農林漁業を体験できる農泊(農山漁村滞在型旅行)は、訪日外国人旅行者からも人気の高いツアーです。
主要な観光地でのインバウンド需要が頭打ちの中、農林漁業体験民宿はどのような効果をもたらすのでしょうか。

田舎に滞在する「ファームステイ」が海外からの旅行者に人気上昇

地方の農家に宿泊する「ファームステイ」が、新しいビジネスとして注目を集めています。「アグリツーリズム」や「グリーンツーリズム」などとも呼ばれる「ファームステイ」は、ヨーロッパでは広く普及しているバカンスの過ごし方のひとつで、農村に滞在し自然や文化・地域住民との交流を楽しみながら、ゆったりと過ごすのが目的のツーリズムです。イギリスでは「ルーラル(田舎)ツーリズム」とも呼ばれています。

国内の旅行消費が伸び悩む中、政府は2000年代からインバウンドの誘致を進め、この10年で海外からの旅行者数は約3倍に増加しました(※日本政府観光局JNTO資料)。しかしながら、海外旅行者のニーズも次第に変化しています。これまで好調だった日本製のモノに対する売り上げは頭打ちになり、日本の文化や伝統を体験することへのニーズが高まる傾向にあるようです。海外からの旅行者が訪れる場所も、東京や京都といった有名な観光名所ではなく、地方を訪れる人が増える傾向になっています。実際に、SNSなどの口コミで海外からの旅行者が多く訪れるようになり、国内でも改めて注目されるようになった地方の観光スポットが増えています。

「ファームステイ」という言葉は使われていなかったものの、日本でも農村に宿泊する農家民泊は以前から行われていました。修学旅行や体験学習などの一環で、学生が本格的な農業体験をする「ファームステイ」です。ヨーロッパで普及している「グリーンツーリズム」に比べると、バカンスの要素は少なく、一般にはあまり普及しませんでした。政府はこの「ファームステイ」に着目し、海外からの旅行者のニーズが高まる地方での宿泊施設として活用できるよう、規制緩和などを実施して農泊の推進に乗り出しています。

民泊新法とは違う農林漁村余暇法によって運営される「ファームステイ」

ファームステイ
「ファームステイ」には、2018年6月に施行された民泊新法とは異なる「農山漁村余暇法」という法律が適用されています。農山漁村地域の活性化を目的に1994年に制定された法律です。「ファームステイ」を提供する業者の登録を促進するため、2005年には改正が行われました。農泊の推進のため、その後も段階的な規制緩和が行われ、2016年には農林漁業に従事していない人でも、体験民宿業を営めるように規制が緩和されました。

「ファームステイ」と呼ばれる農泊は、単に農山漁村の古民家に宿泊するだけではなく、田植えや農産物の収穫をしたり、牧場で乳牛から乳を搾ったり、収穫した果物を使ったジャムづくりや生活に使う伝統的な工芸品づくりをしたりといった、伝統的な生活体験ができる点で、通常の民泊とは大きく異なります。農林漁業体験以外にも、レストランや食堂では地元の食材を使った料理を楽しめたり、直売所で採れたての農林水産物を購入できたりと、様々なレジャー要素も含んでいます。

もともとは過疎化が進む農山漁村地域の経済活性化を目的として、国内の観光需要を開拓するために推進された農泊ですが、現在では海外からの旅行者の利用が占める割合も増加しています。「グリーンツーリズム」が普及していた海外からの旅行者にとって、日本の独特の農山漁村の風景は、新鮮に映るのでしょう。

農泊経営がもたらすメリット

ファームステイ
農泊を営むことでもたらされるメリットには、まず経済的な効果が挙げられます。修学旅行や体験学習など学生向けの「ファームステイ」では、一度に多くの人数を受け入れる必要から、同じ地域に複数の宿泊場所を設けることになり、価格も横並びで自由に設定できませんでした。また、修学旅行や体験学習はシーズンが限られるため、年間を通じた定期的な収入も望めません。

一般の個人旅行者にも提供するようになり、年間を通して安定した農泊経営が可能になった事例もあります。「グリーンツーリズム」を早くから立ち上げた大分県安心院町では、農泊を始めた農家の年間売り上げは平均で約120万円、多い農家では350万円以上の売り上げがあるとのことです。

過疎化が進んでいた地域に家族連れや若い世代の旅行者が訪れるようになることで、寂れていた農山漁村に活気が戻る効果も期待できます。訪れる旅行者に喜んでもらうため食事の工夫をするようになったり、設備を使いやすく改善したりと、受け入れる側の新たなモチベーションを生み出すのも、農泊のメリットと言えるでしょう。こんな食事が喜ばれたとか、こうした体験イベントが人気だとか、お互いに得た知識やノウハウなど情報交換をすることで、地域で農泊を運営する農家同士の交流も生まれています。

何より、農山漁村での農泊体験や地元の人とのコミュニケーションは、ほかの観光地と差別化でき、過疎化に悩まされる地域に旅行者を呼び込める貴重な観光資源です。農泊を目当てに多くの旅行者が訪れ、安定した収入が得られるようになれば、農業から離職し地方を離れる人を抑止する効果も期待でき、過疎化問題の解決のための糸口になるかもしれません。農泊をきっかけに移住し、地域の働き手を増やすのに役立ったという話もあるようです。

「Japan. Farm Stay」ブランドで来日旅行者にPR

あるコンサルティング会社が2017年に行った調査では、農泊の今後の課題に関する項目もあります。
団体旅行と個人旅行の形態別に集計されており、個人旅行では「PR・情報発信」が83.3%と最も高くなっています。また、今後の取り組みについて「SNSやWebサイトを用いたPR」が60.9%と高い数字であることからも、修学旅行や体験学習といった団体旅行に比べて、個人の一般旅行者を集客するには、その窓口となる情報サイトなどがまだまだ不足している現状が見えてきます。

しかしながら、訪日旅行者に向けてのPR活動は少しずつ始まっており、 2015年に農林水産省は観光庁と連携し、「Japan. Farm Stay」のシンボルマークを制定しました。農林漁業体験民宿業の登録者、あるいは1年以内に登録予定の者であれば、ポスターやのぼり、チラシ、ウェブサイトなど様々なツールに、誰もが利用できるシンボルマークです。農林漁業民宿業の登録窓口は、一般財団法人都市農山漁村交流活性化機構(まちむら交流きこう)や一部の民泊会社が行っています。

ある民泊会社のサイトでは、宿泊の予約と合わせて、農家体験や漁業体験の口コミ情報などを発信しており、農泊促進にもメリットのあるサービスとして注目されています。また、ある旅行会社のサイトでも、全国の農家民泊事業者のサポートに乗り出しています。

また、とある旅行会社でも、外国人向けのサイトで、「ファームステイ」の情報を英語で発信しています。農林水産省の「農山漁村振興交付金」を活用したサイトで、行きたい地域や興味のあるアクティビティを選択すると、そのエリアの歴史や特徴、体験できる内容などの情報が、写真付きで詳しく紹介されています。地域のおすすめのレストランやマーケットの紹介もあり、農泊の後押しだけでなく、地域経済の活性化のサポート的な役割も果たす情報サイトです。窓口となるFacebookやウェブサイトのURLを掲載し、地域とのスムーズな連携にも役立っています。

2020年に開催される東京オリンピックに向けて、海外から多くの旅行者が訪れることが予想されます。主要な観光地だけではなく、需要の高まる農山漁村地域に滞在する「ファームステイ」は、今後の訪日旅行者の獲得に大きな役割を果たしていくと期待されています。

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