介護留学生の拡大へ! 施設の奨学金を国が支援する事業とは

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在留資格に「介護」が創設され、日本へ留学中に介護福祉士の資格を取得すると、在留資格を得られるようになりました。
そうした介護福祉士を目指す外国人留学生のための受け入れ環境の整備として、奨学金を支給する介護施設に対して経費を支援する、「地域医療介護総合確保基金」による事業も始まっています。

今回は、これからの介護人材の担い手としても期待される外国人留学生への支援事業について解説します。

地域における医療・介護の支援基金を財源として、外国人介護人材確保策を強化

「地域医療介護総合確保基金」とは、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するために、2014年度から消費税の増収分などを活用して、各都道府県に設置されている財政支援制度です。財源は国が3分の2、都道府県が3分の1という配分で負担し、都道府県及び市町村が策定した基金事業計画に沿って分配・実行される仕組みです。

対象事業としては、地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設、または設備の整備事業、在宅医療の提供事業、地域密着型サービスなど介護施設の整備事業、医療従事者の確保事業、そして、介護従事者の確保事業の5つがあります。地域において高度急性期から在宅医療、介護までのサービスを総合的に行えるよう、医療・介護の一貫した計画策定と、それらを対象とした実施事業を、財政支援によって推進していくというわけです。

今回の奨学金による支援は、厚生労働省による、外国人介護人材の確保策強化への取り組みの一環でもあります。国は2018年度予算において、留学生の日常生活に関する相談や就職後の悩みに対する継続的なフォロー体制を整える目的で、介護福祉士を目指す外国人留学生の相談体制の整備に1.3億円を計上しました。その結果、2018年9月10日には介護福祉士を目指す外国人留学生などのための相談窓口が開設しています。フリーダイヤルやメール、LINE、Facebookを通じて専門家が日本語のほか、英語、中国語、ベトナム語で留学生及び卒業生、養成施設、介護施設からの相談を受け付けています。

就労予定先の介護施設が支給する奨学金の3分の1を助成

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そして、そうした相談体制の整備とともに外国人介護人材の確保策強化の目玉となるのが、奨学金支給事業です。こちらは、2017年度補正予算において14億円が確保されており、その背景には、2017年9月より外国人の在留資格として「介護」が創設されたことがあります。留学中に介護福祉士国家資格を取得して、介護業務に従事することで、日本に長期間滞在することができるようになったのです。

支援のスキームは、外国人留学生が直接、または日本語学校を経由して介護福祉士を養成する機関に入学した際、その留学生の就労予定先の介護施設が奨学金を貸与、または給付して支援するとトータルの費用の3分の1を、都道府県を通じて助成するといったものになります。資格取得後、日本で5年間継続して介護職に従事すれば、奨学金は全額返済免除となります。但し、途中で介護以外の仕事に転職したり、自己都合で退職した場合には、返還することが求められます。

尚、留学生への奨学金貸与・給付の支援例として厚生労働省が示しているものは、次のような内容です。「1年目は日本語学校学費:月額5万円、居住費用:月額3万円」「2年目・3年目は介護福祉士養成機関学費:月額5万円、入学準備金:20万円(初回に限る)、就職準備金:20万円(最終回に限る)、国家試験受験対策費用:年額4万円、居住費用:月額3万円」となっています。

母国より物価の高い日本で学ぶ留学生にとっては、専門の養成機関への修学資金が支援されるのは大きな助けになります。留学の在留資格を持つ間は週28時間までのアルバイトが認められており、この時点で介護施設での仕事を始める留学生が多いようですが、奨学金があれば、介護福祉士資格のための勉強に、より専念しやすくなると思われます。介護福祉士養成機関にとっても、資格取得までしっかり学んでもらうことができ、途中退学なども減らせるでしょう。就業先の介護施設にもメリットは大きく、一旦は奨学金を貸与・給付する必要がありますが、3分の1の額を助成されますし、資格取得の暁には5年間は介護の担い手として現場で活躍してもらえます。多くの関係者にとって、プラスのある施策と言えそうです。

奨学金を盾に就労を強制はできない。明確なルールの整備が必要

ここで気をつけたい点としては、奨学金を受給した留学生に対して、支給側の介護施設が労働契約の締結を強制することは、労働基準法第16条の賠償予定の禁止、及び第17条の前借金相殺の禁止に抵触する可能性があるということです。そのため、労働契約と奨学金の貸与契約は明確に切り分けておく必要があります。

人口に占める団塊世代の割合が全国でも高い水準にある大阪府では、介護人材確保が喫緊の課題となっています。その分、外国人介護人材への期待も大きく、他県に先駆けて2018年3月に、介護人材確保戦略として悪質事例の発生防止や、円滑な受け入れにつなげるための「在留資格『介護』による外国人留学生受け入れガイドライン」を策定しました。その中で、奨学金貸与契約ルールについても仔細に検討され、労働契約と奨学金貸与契約の問題についても記載がされています。

求められているのは、介護施設から奨学金を受けた留学生が、その介護施設に就労する場合には一定期間の勤務を条件とした奨学金返還免除制度を整備することや、当該の介護施設に勤めない場合の合理的な奨学金返済ルールを整備しておくといったことです。また、引き続き就労してもらえるよう一定のインセンティブを付与していくなどの仕組みづくりも、介護施設側に要請されています。

今後、ますます高齢化社会が加速するであろう日本において、外国人留学生には長く日本で介護の仕事に従事してもらえるよう、支援事業が正しく運用されることが望まれます。

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