留学生が支えている?外国人に依存する日本の労働力の実態

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日本で働く外国人労働者の内、就労を目的とした在留資格を持っているのは20%未満です。「留学」の在留資格で働きながら学ぶ外国人が増加している背景には、彼らの祖国の事情だけではなく、私たち日本の深刻な労働者不足にも理由がありました。

外国人労働者の約20%が留学生

日本で働く外国人労働者の数は、年々増加の一途をたどっています。現在、約128万人の外国人労働者が日本で働いていますが、前年の同時期と比較すると約18%増加しており、過去最高の増加率を記録しました。出身国の内訳を見ると、中国人が約30%でトップを占め、続いてベトナム人が約19%、フィリピン人が約12%となっています。

注目したいのは2位のベトナム人と5位のネパール人の、前年と比較した増加率です。ベトナム人は約40%、ネパール人は約31%も増加しています。在留資格別では、留学生や技能実習生の増加率が20%を超えている点も、近年の外国人労働者の傾向をうかがわせる数字と言えるでしょう。

産業別の外国人労働者数の比率を見てみると、製造業が約30%と最も高く、サービス業の約15%、卸・小売業の約13%、宿泊業・飲食サービス業の約12%と合わせた4つの産業分野で、全体の約7割を占めていることが分かります。製造業では技能実習生の割合が高くなっていますが、卸・小売業では約22%、宿泊業・飲食サービス業では約35%を外国人留学生が占めており、そうした数字から日本における外国人労働者の実情が見えてきます。

特に高い割合で留学生を雇用している宿泊業・飲食サービス業の内、居酒屋など深夜も営業している飲食業では、日付を超える時間帯の労働者の大半が外国人で占められており、留学生の比率も自然と高くなっていると推察できます。

外国人留学生が在留中にアルバイトをすることは、生活費や学費をまかなうことを目的に、週当たり28時間まで認められています。夏季休業などの長い休みの時には、週当たり40時間まで働けますが、実際にはそれを超えて働いている実態があるようです。

同じ外国人留学生でも形態によって、アルバイト事情は異なっています。大学・大学院の留学生は高度な人材として需要は高いものの、アルバイトする留学生は減少傾向にあります。対して日本語学校や専修学校などの留学生は、そのほとんどが飲食やサービス業など何らかのアルバイトに従事しており、中でもコンビニなどの営業・販売分野で増加傾向にあるようです。

深刻化する人手不足と外国人労働者

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外国人留学生のアルバイトが増加している理由には、日本人の労働者不足といった現状が影響しています。特に飲食業やコンビニなどのサービス業では、深刻な人材不足に悩まされている状況です。

その背景には労働者となる人口の減少も挙げられます。日本では、飲食業やコンビニなどでの労働力として期待される、15?24歳の若い層の人口が年々減少傾向にあり、人材の確保も以前に比べて難しくなっています。学校や住宅地から離れた地域はさらに深刻な状況で、外国人留学生はこれをカバーする貴重な人材です。

基本の賃金が上昇していることも、こうした状況に拍車を掛けています。フランチャイズ化の進んでいるコンビニでは、売上に対してロイヤリティが発生するため、経費を如何に節約できるかが利益を生む条件になりますが、人件費を抑えるという側面からも人材の確保が厳しくなっているのです。日本人よりも比較的低い賃金で雇用できる外国人留学生は、今や必要不可欠な労働力になっています。

日本人の人材不足だけが留学生の労働者を増やしている理由ではありません。人材の慢性的な不足を改善するため、企業も様々な努力をしています。

大手の居酒屋チェーンなどで、導入されているタッチパネル式のオーダーシステムは、客が直接画面からオーダーできるため、従業員は料理を運んだり後片づけをしたりといった、ほかの業務に専念する時間を確保でき、少ない人員でも稼働できる環境をつくれます。コンビニやスーパーなどで見掛ける自動釣銭機は、誰でもレジ業務を行えるようになり、釣銭間違いのトラブルなどに時間を割く必要も減少します。

こうした企業努力は同時に、日本語の能力が低かったり、日本の文化にまだ不慣れだったりする留学生でも、アルバイトできる機会を創出する結果につながっています。日本に来たばかりの留学生でも、すぐにアルバイトで働けるのは、こうした日本語をあまり使わなくても良い環境や、個人の能力に左右されないタイプの業務です。宅配便の仕分けやコンビニの惣菜製造といった現場でも、外国人留学生が多くアルバイトに従事しています。

このような現状を踏まえて、企業側も外国人でも読めるようマニュアルを整備したり、労働時間が法定を超えないよう本社でアルバイトの就業時間を管理したりと、積極的に外国人労働者を受け入れる体制を整え、現場の負担を軽くする努力を行っています。

留学生労働者を生み出す日本語学校というシステム

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日本への留学生が増加しているネパールは、アジアの中でも経済水準が低いとされる国です。
主要な産業は農業やヒマラヤの観光だけで、多くの国民が1日当たり200円前後で生活しています。ヒンドゥ教のカースト制の影響が根強く残っていることも、人々が貧しい状況からなかなか脱出できない原因のひとつです。法律ではカースト制の撤廃を掲げてはいますが、現在でも決められた以外の仕事を選ぶことが難しく、多くの国民は貧困から抜け出せないままでいます。

彼らが日本で働こうとする背景には、こうした国内の事情が大きく影響しています。ネパールから出る以外に、ほかの職業に就いて稼ぐ選択肢がなく、自然と国外へ目が向きます。日本が特に人気なのは、留学費用が欧米に比べて約50%も安いことと、留学ビザ取得のための試験の点数が、米国と比べて日本の基準が低いことが大きな理由です。

学生が留学ビザを取得できると、提携する日本の語学学校から斡旋料が入るなど、日本への留学斡旋はネパールで一大ビジネスになっています。乱立する日本語学校の中には、まともな日本語を教える体制も持たずに、単に留学生だけを送り込んで斡旋料をせしめる悪質な業者も増えています。

これと同じような状況が、過去に日本でも起こっています。1980年代中国で私費留学が解禁になり、「留学生10万人計画」を打ち出す日本に、多くの中国人留学生が入国しました。増え続ける悪質な日本語学校を取り締まるため、「日本語教育振興協会」が設立され、日本語学校の審査認定業務を行っていましたが、2010年の事業仕分けで廃止されてしまいます。この廃止の時期は、ベトナムやネパールからの留学生が増加した時期と、ほぼ重なっており過去の事例を考えると、留学ビジネスと全く無関係とは断言できないかもしれません。

売り手市場へと変化しつつある外国人労働者

外国人留学生が働く環境も、徐々に変化しつつあります。これまでは、深夜の時間帯の宅配便の仕分けやコンビニ惣菜の製造などといった厳しい条件の仕事でも、ほかのアルバイト先を見つけることが、なかなか難しいため働かざるを得ませんでした。

しかし、新しい技術やシステムの導入によって労働環境が変化することで、日本語の能力にやや難のある留学生でも、より条件の良いアルバイトを見つけられるようになりました。深夜にクーラーのない倉庫などで作業をしなくても、涼しいコンビニのお店で働くことで収入が得られます。ある程度の選択肢が広がる状況が生まれ、外国人留学生の労働力は、今や売り手市場に変化しつつあるのです。

留学生という在留資格は、人手不足に悩む企業にとっては労働力を得るための手段、一方で外国人にとっては日本で働くための手段になっているとも言えます。留学生が労働力として期待されるのは、日本は「就労ビザ」の取得が非常に困難だからです。一部の限られた職種以外、日本では就労目的のビザの取得条件が厳しいものとなっています。こうした点を改めて見直し、必要な場所へ適切な労働力を送れるような体制を構築することが、今後の課題とされるでしょう。

ともに生きる。隣の外国人も日本を支える大切な仲間

留学生をはじめ外国人が増えていることは、私たち日本人の生活環境にも影響しています。いつの間にか増えている外国人は、私たちが知らない習慣を持っています。そうした習慣の違いが、周辺の住民とトラブル等を引き起こすことが増えています。

習慣の違いが生むトラブルだけではなく、私たちの勘違いや思い込みによるトラブルも、同時に増えている現状も見逃せません。自分の駐車スペースに停まっている車が、同じマンションに住む外国人の仕業と思って抗議すると、実は同じマンションの日本人がしたことだったといったトラブルは、「マナーが悪いのは外国人」という思い込みによる誤解が原因だったりします。

外国人の労働者を積極的に受け入れる自治体では、こうした習慣の違いや偏見によるトラブル等を減らすために、交流の機会を設けてお互いの文化の違いを認め合うようにしたり、日本の文化や習慣を学ぶ機会を設けたりと、外国人も日本人も仲良く暮らせる環境づくりに乗り出したところもあります。

住人が減少した古い団地などでは、留学生などの若い外国人が、高齢を迎えた住人たちと交流することで、孤独死などを防ぐ役割を期待されている例もあります。外国人のための食料品店で店番をするようになり、新たな生きがいや楽しみを見つけるお年寄りもいるようです。

これからの日本にとって、不足する働き手の穴を埋めるには、留学生をはじめとした外国人労働者に頼らざるを得ないのが現状です。隣に住む外国人も、日本を支える大切な仲間だということを、私たちも認識する必要があるのではないでしょうか。

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